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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第五章 亜人共和国ルゼリア編
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第一話 憧れはつらいよ⑤

 リラが村長の元へ着いたのは、

 村長クロウズがちょうど指示を出すところだった。


「村の守りに備えよ。

 現場には獣人たちに向かってもらう。各々気を抜くな!」


 そこで息を整えながら、

 リラが寅二郎たちの状況を説明した。


「何、セイラが?水車小屋か。獣人たちよ頼めるな?」

 村長クロウズの言葉に頷く獣人たちにリラが言った。


「私、治癒魔法が出来ます!一緒に連れて行って」

 ありがたい、と獣人に礼を言われ、

 リラも一緒に走り出した。

 

「帝国め、まだ諦めていないとみえる……」

 一人となったクロウズは呟いた。


 門を抜け、森へと入ったリラと獣人たちだったが、


「くそ、匂い消しか」

「それにほのかに残るこの匂いは幻覚剤か」

 鼻の利く獣人対策なのだろう罠に手間取っていた。


 リラたちが手間取る一方で、

 寅二郎たちが水車小屋へと辿り着いた。


「やはり、か」シドが呟く。


 小さな湖へと流れ込む川沿いに水車小屋が見える。その奥に幌がついた馬車が一台停まっている。小屋の前に二人見張りが見えた。


「だが、まだ連れ去られたわけでは無い様だ」

「どうする?」寅二郎の隣ではハヤトが震えている。


「回り込んで馬車へ連れ込もうとするところを狙う」

 息を殺し、馬車のある裏手へと回り込んでいる途中、争う声が聞こえた。


「いや、やめて」

「いいから、来い」


 首領格らしい男に引きずられるセイラが見えた。その後ろに二人。見張りと合わせて5人組の様だ。みな短剣を持っている。見張りの一人は御者役なのか何も持っていない。


「姉ち……」叫ぼうとするハヤトの口を押え、寅二郎が言った。


「坊主はここで待ってろ。いいな」

 寅二郎とシドが視線を合わせ走り出した。


しかし、


「姉ちゃん!」


 ハヤトも木刀を手に走り出していた。


「坊主!」

「構うな!今は制圧に集中しろ」

 シドが一人二人と薙ぎ倒したが、


「ぎゃ」ハヤトが蹴られた。


 水車小屋の中からもう一人。

 6人目が剣を持って現れたのだ。


「小屋の中に何かねえかと物色してたらこりゃ何だ?」


 男がハヤトを見下ろす。


「まぁいい」と言いながら男が剣を振りかぶる。


「!?」その瞬間を思いハヤトが目を瞑る。


 しかし、その瞬間は来なかった。


「悪かったな坊主」


 開いた目に見えたのは寅二郎だった。


 ハヤトをかばい剣を背に受け、

 肩に血がにじんでいるのが見えた。


「うわああああ」ハヤトは泣きだした。


 寅二郎はそのまま振り返りざまの裏拳で男を倒した。

 シドも制圧を終え、セイラも無事なようだ。


「すまない、見込みが甘かった」謝るシドに、

「いや、セイラちゃんは無事。作戦成功。だろ」

 肩の傷を押さえながら寅二郎が笑う。


 セイラとハヤトが抱き合い泣きじゃくっていると、

 リラと獣人たちがようやく水車小屋へと辿り着いた。


「いやぁ効く効く。

 リラちゅわんの治癒魔法は最高だね」


 胡坐をかいた寅二郎が言い、


「馬鹿、こんなの使わない方がいいに決まってるでしょ!」

 リラに叱られ、

「いや、今回は俺の観察不足だ。悪かった」

 シドは反省しきりだった。


 そんな三人のところへ、ハヤトとセイラがやって来た。


「ありがとうございました。みなさん」セイラが頭を下げ、

「トラジロウ、ごめんおいら……」ハヤトも泣き顔で頭を下げる。


「いや、いいって。

 それに“姉ちゃんのため”に立ち向かったんだろ?

 今はそれで十分じゃねえの?」寅二郎は手を振り、笑った。


 村へと戻り、人さらいたちを突き出し、村長クロウズへと報告した。


「ありがとう。村を代表して礼を言う」村人一同は頭を下げた。


 そして乗合馬車へと乗り込もうとした寅二郎たちの背に、

 再びクロウズが言った。


「おそらくあ奴らは帝国の手の者。

 あまり帝国を信用しすぎないことだ」


「ああ、分かっているつもりだ。ありがとう」

 とシドが言い馬車へ乗り込む。


 リラも乗り込み、

 寅二郎が乗り込もうとするところにハヤトが言った。


「トラジロウ、ありがとう。

 おいら、まだ弱いけど絶対姉ちゃんは守ってみせるよ」


「ああ、その意気だ」寅二郎が乗り込み乗合馬車は走り出す。


「結局、セイラちゃんとはお近づきになれなかったなぁ」

 寅二郎がボヤキ、

「ああ、はいはい。残念だったね」

 リラは聞き流し、

「次は大体あのあたりかな」

 シドは聞いてすらいなかった。


 乗合馬車を見送りながらハヤトは考えていた。あの時笑いかけてくれた寅二郎。傷を癒されていた時のその背中。自分の無謀も笑って許してくれた。


(あれが“勇者”、なのかな……)


乗合馬車が見えなくなるまでハヤトはずっと考えていたのだった。



閑話:欲ばりと四人のとなり人



むかしむかし、

はじめに女神さまは“人族”をつくりました。


「ふう、生きるってたいへんだね」

人族はそう言って、空を見上げました。


それを見た女神さまは、

かよわい人族のそばに“耳長族”をつくりました。


長く生き、たくさんのことを知っている耳長族に、

人族は言いました。


「ありがとう。きみたちのおかげで、いろんなことがわかったよ。

おれいに、言葉と文字をつくろう。みんなでお話ししよう」


次に女神さまは“獣人族”をつくりました。

力が強く、歌うことが大すきな人たちです。


「ありがとう。きみたちがいると心づよいよ。

おれいに、歌と踊りをつくろう。みんなで楽しもう」


次に女神さまは“小人族”をつくりました。

ものづくりがとても上手な人たちです。


「ありがとう。きみたちのおかげで、雨の日もこわくない。

おれいに、おうちをつくろう。みんなで休めるように」


最後に女神さまは“竜人族”をつくりました。

マナという、世界のたいせつな力を知っている人たちでした。


「ありがとう。きみたちが教えてくれたおかげで、

世界はもっとふしぎで、もっと楽しくなったよ」


みんなは仲よく暮らしていました。



でもある日、

人族はもっと知りたくなってしまいました。


「ねえ、もっと教えて。

ぼくたち、もっと上手に生きたいんだ」


夢中になりすぎたそのとき、

竜人族は深くつかれて、長い眠りについてしまいました。


人族はとても悲しくなりました。


「ごめんね。

でも、きみのおかげで世界はこんなに広がったんだ」


みんなで竜人族を土にかえし、

その場所を大切にしました。


女神さまは空からそれを見て、

とてもかなしくなりました。


ぽつり、ぽつりと涙が落ち、

やがて雨になりました。


その雨の中で、

竜人族が眠る場所から、小さな芽が出ました。


芽はやがて大きな樹になり、

みんなはそれを“世界樹”と呼びました。


「わすれないために」

「ありがとうを、忘れないために」


それが、世界樹のおはなしです。

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