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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第五章 亜人共和国ルゼリア編
122/129

第一話 憧れはつらいよ④

 翌朝、

 寅二郎たちが家を出るとハヤトが木刀を振っていた。


「なんだよ、もう行くの?」

「ああ、乗合馬車の様子を見に、な」


「じゃぁ俺も行く」

 ハヤトと歩き出す背中に声がかかる。


「ハヤト!お姉ちゃんは出かけるから皆さんのことよろしくね」


 とセイラがこちらに手を振り見送ってくれた。

 その後も、まだまだ旅の話をせがまれおしゃべりを続ける4人の目に、荷物を積み込む乗合馬車と村長たちの姿が見えた。


 村長も交え馬車の荷物の状況やこの先の日程を話し合う。

 そこでハヤトが言った。


「そういや、みんな世界樹へ向かうんだろ?

 なら“樹のおはなし”って知ってるか?」


「“樹のおはなし”?」

 寅二郎やリラだけでなく、

 博識なシドも知らないお話らしく首を捻る。


「樹の下には竜人族って人が寝てるって話」


「こらハヤト、お前はまだ大事なことを学んどらんな」

 そう言い、村長のクロウズがハヤトの頭を小突く。

「イテッ!なんだよ村長。間違ってないだろ?」


「村長、“樹のおはなし”とは?」シドが尋ねた。


「ああ、この国に伝わるお伽噺ですじゃ。

 女神が人を作りそれぞれ力を合わせて生きておったが、

 事故で竜人族が亡くなりそこから世界樹が生まれた。

 ――世界樹の元で皆、

 助け合いありがとうの心を忘れず生きていこう。というな」


「竜人族?」「知らねぇな」「俺も分からないな」三人が首を捻る。


 すると、一瞬表情を曇らせたが村長が言った。


「まぁ古いお伽噺ですからの。それより旅の準備は……」


 その村長の言葉をかき消すように、


ピィーーー


 と、呼子笛の音が村中に響いた。


「何だ?」「侵入者か!」「どっちの方角だ!」


 村が一斉に騒ぎ出した。

 同時に昨日見た門番の獣人が一人駆け込んでくる。


「長!北西で反応。どうやら一つじゃない!

 獣でなく人、奴隷狩りだ!」


「何と!お前は皆に触れてまわり人も集めよ!作戦会議じゃ」


 長の決定に獣人が走り出し、長の目に力がこもる。


「すまん。緊急事態じゃ。

 お主ら冒険者じゃろ。力を貸してほしい」


「ああ分かった」「おう」「任せて」

 寅二郎たちの声にも力が入る。


 しかし、


「姉ちゃんは外へ行くって!大丈夫かな?」

 とハヤトが家へと走り出した。


「悪い、俺たちはハヤトに付いていく」

 と寅二郎たちも走り出した。

「ああ、セイラのこと頼みますぞ」

 そう言うと村長は村人たちと話し始めた。


 4人は家に着いたが、やはりセイラの姿が見えない。


「おい坊主!お姉ちゃんはどこ行くって?」


「姉ちゃんはいつも近くの水車小屋で穀物の粉砕を、

 あっちの方だ!」


 と、ハヤトの指さす方向は、

「まずいな、北西の方角だ」シドが言う。

 続けて、

「リラ、このことを村長に。俺たちは先行する」と言い、


「坊主!案内頼めるか!」

 と叫ぶ寅二郎たちと共に走り出した。


「姉ちゃん」


ハヤトは歯を食いしばりながら走るのだった。

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