第一話 憧れはつらいよ③
その夜、寅二郎たちはハヤトとセイラの家で旅の話をせがまれていた。リ・エスティーネ王国や砂漠の王国カルナードでの旅の話にいちいち頷き、すげぇを連呼するハヤト。
帝国へと話が進んでいく中、
セイラの料理を口に頬張りながらハヤトが言った。
「レオン大将軍が悪魔を倒したんだろ?すげえなぁ」
目を輝かせ英雄を讃えるハヤトに、
真実を言うのも憚られ黙る三人。
「もぉ、ハヤトやめなさい。戦争の話なんて」
「なんでだよ。英雄だぞ!」
二人の口げんかにシドが口をはさんだ。
「しかし、ハヤトはなぜそこまで英雄にこだわるんだ?」
「違うよ、英雄じゃなくて“勇者”!俺は勇者になるんだ」
「もうこの子ったら、
実はこの村は“勇者の末裔の村”と言われていて……」
「勇者の末裔?」
寅二郎の問いにセイラが答える。
ここは大昔、女神の英雄召喚により呼び出された勇者PTの一人が開いた村だという。召喚が行われるたび、一人また一人と集まっていくことで今に至るらしい。
「その上、私たちのお父さんも冒険者だったりで……」
「だった?」リラが眉を寄せ、
「ええ、討伐依頼に失敗しそのまま……」
セイラが小さく呟いた。
「それは……」リラはまた口を噤む。
「それにお母さんも病気で亡くなり今は私たち二人だけ。
だから、この子にはそんな危険なことは辞めて欲しいんですが……」
セイラの言葉にハヤトが嚙みついた。
「ちがわい!父ちゃんは立派に戦ったんだ!
だから俺は勇者になって父ちゃんみたいに戦うんだ!」
そう言うとハヤトは自分の部屋へと走って行ってしまった。
「ホントごめんなさい。お見苦しいところをお見せして」
セイラが謝り、
「いや、そんな事情があったんですね」
「うん、ハヤトも何だかかわいそう」
シドとリラが寄り添い、
「勇者、か」
寅二郎はハヤトの部屋の方を見つめ呟いていた。




