第一話 憧れはつらいよ②
そうして乗合馬車が停まったのは小さな村だった。
馬車から降りた寅二郎たちが見たのは、門番らしい二人組。
全身毛に覆われ犬の様な顔をした、獣人たちだった。
「ようこそ旅人よ、ゆるりとして参られよ」
乗合馬車の身分証を確認した獣人たちに通され、
寅二郎たちは村へと入った。
「おお、早速会えたな。獣人」寅二郎が声を上げるが、
「そうね、でも何だか……」リラがあたりを見回す。
確かに周りに見えるのは、人族ばかりだった。
「単にそういう村だということでは?」
シドが応えた背中から声が聞こえた。
「それはこの村が勇者の末裔の村、だからですじゃ」
三人が振り向くと、そこには白髪で黒い肌、横に伸びた耳が特徴的なダークエルフの老人が眉を寄せ、困ったような顔をして立っていた。
「失礼、旅の人。私はこの村の長を務める、
ダークエルフのクロウズと申す者、よろしくの」
「これはご丁寧にどうも」
寅二郎は頭を下げ、
「馬車の補給の間、しばらくお世話になります」
リラが笑顔を返す。
「しかし、村長。浮かぬ顔にお見受けするが?」
シドが村長の顔を見て言った。
「ああ、それはな……」
村長の話の途中で割り込む者がいた。
「ねぇねぇ旅の人!勇者様の話聞かせてくれよ!」
三人が振り返ると、
小さな少年が木刀片手に立っていた。
「帝国から来たんでしょ?勇者様のお話聞かせてよ!」
元気いっぱい、満面の笑みで少年が言った。
「なんだぁこのガキ。あっち行ってろ!しっしっ」
寅二郎が追い払おうと手を振ると、
「俺の名前はハヤトだ!この野郎」
と叫び、ハヤトが寅二郎の脛を蹴る!
「痛ぇ!何しやがる」「この」二人は取っ組み合いのけんかを始めた。
「村長、あの子は?」
二人の様子を見ながらシドが尋ねた。
「あの子はハヤト。
この村の子なのですが、旅人を見るとあの様子での。
悪気はないので許してやってもらえませんか」
と、苦笑いを浮かべた。
「ええ、こちらの連れこそ、あの調子ですみません」
「ホント、トラジロウって子供なんだから」
シドやリラと村長が謝りあう中、二人はまだつかみ合っていたが、
「こら!ハヤト。この子はまた人様に迷惑かけて!」
「げ!セイラ姉ぇちゃん!」金髪美女に叱られハヤトが硬直した。
「!、もっこり美女、もしかしてお前の?」
寅二郎がハヤトを見る。
「そうだ!セイラ姉ぇちゃんだ!」
ハヤトが震える声で言う。
「おお、もっこりお姉さん。子供のしたことですから」
はっはっはと寅二郎はハヤトの頭を撫で始めた。
「何だ!いきなり」
と寅二郎の脛を蹴り続けるハヤトに、
「やめなさい!」セイラの雷が落ちた。
何故だか寅二郎も含めて、
しゅんとした二人を横目に見ながらセイラが言った。
「ごめんなさいね、ご迷惑をおかけして。せめて今晩はうちにお泊り下さい。
小さな村です。よろしければ旅のお話をお聞かせください。あの子も喜びます」
「そうしてやってください」
と村長にも勧められ、
「大したおもてなしは出来ませんが」
と言うセイラの後に、寅二郎たちは続くのだった。




