第一話 憧れはつらいよ①
帝国を抜け、寅二郎たちの乗る乗合馬車は険しい山道へと入った。山道を抜け崖沿いの中継所へと辿り着くと荷物の積み替えなどで休憩することになった。
「山を一つ越えるとまた雰囲気が変わったな」
「ええ、何だか空気が澄んでいるみたいね」
寅二郎とリラは、眼前に広がる光景を堪能していた。
今越えた山から北の方へと山々が連なる様子が見える。足元の谷から向こうは大きな森がその山々まで続いている。所々に切り開かれた街や村、湖等が見え、時折鳥たちが飛び立ちどこかへと向かうのが見えた。しかし、二人の目を引いたのは森の奥に見える巨大な樹だった。
「何だあれ!城みたいにでかい樹が見えるぞ」
寅二郎が目を丸くし、
「すごいね!あんなに遠いのにとても雄大で、それに神秘的」
リラも感心する。
「あれが亜人共和国ルゼリアの象徴でもある“世界樹”だ」
シドが後ろから応えた。
亜人共和国ルゼリア、エルフやドワーフ、獣人等、寅二郎たち“人族”と違う人々が多く暮らす国。彼らはマナ自体を信仰し、世界樹をマナの中心と考え守り続けているという。
「その世界樹の周りに見えるのが首都リュゼリオン。俺たちの目的地だ」
「なるほど、ああエルフ早く会ってみてぇな」
「亜人さんたちは帝国でもあまり見かけなかったしね」
「……会えるといいけどな」最後にシドが呟いた。
そして、乗合馬車は動き出した。
馬車の中で寅二郎たちは今までとは違う文化、
人々との出会いに胸躍らせるのだった。




