第五話 絡む糸がつらいよ
帝国の陰謀、大魔王の顕現、その中でレオン、ベルゼが死亡。
その衝撃は世界を駆け巡った。例えばそれはリ・エスティーネ王国に――
エルザからの急報を読み終えた国王レオニス四世は目を瞑る。
「やはり帝国は、いやレギウス三世は動いているのじゃな」
同じく報を読んだ聖母マリアは、
「それでも、アンナたち《暁の翼》はよくやってくれました」
そう言い、遠くを見つめ祈りを捧げた。
例えば商業都市国家群ヴァルニスで――
「やはり、マナの歪みは帝国からであったか。
アンナよ、マナの流れを見続けよ。その成長した眼で」
老師トンペティが帝国の“号外”を手に呟いた。
そして、その衝撃は亜人共和国ルゼリアへも――
“世界樹”と呼ばれるとてつもない大きな樹の下で、
「マナが絡み合い、うねり出しておる。“魔王”のためか、それとも“勇者”か」
足元まで垂れる白い髭を撫でる老エルフの呟きとなって届いていた。
そんな中、寅二郎たちの乗る乗合馬車は最後の“ベルンの壁”を抜けた。
「何か、一気に空気が変わったね」リラが背を伸ばす。
「ああ、帝国は空気が重かったしな」シドが応える。
「いやぁエルフかぁ。楽しみだなぁおい」寅二郎が微笑む。
「トラジロウ、あんたねぇ」
「お前はいつでも平常運転だな」
リラとシドは呆れ顔だったが、寅二郎の右手は開閉を繰り返していたのだった。




