第四話 兄妹はつらいよ①
夕闇に染まる帝都レギオンブルク。
街の至る所に掲げられた黒い旗、黒い腕章を巻き、俯き加減で歩く街の人々の様子を眺めながら寅二郎たちが大通りを歩いていく。
「レオンの国葬が行われたみたいだな」
通りに捨てられた号外に目をやり、シドが手に取った。
「みんな打ちひしがれているように見えるね」
リラが自らの肩を抱くように体を竦めた。
「あれだけのことが起こったからな……」
寅二郎は自然と、手を握りしめ開くを繰り返していた。
「帝国はいろいろと“動いた”ようだな」
シドは号外を読み終えたのか、折りたたんで後ろ手にしまった。
「それでも俺たちは魔王を探さなくちゃな」
寅二郎は前を向く。
「そのためにも、まずは手の治療、でしょ。行こ、トラジロウ」
リラは寅二郎に微笑みかけると、その建物を見上げた。
三人は戻って来ていた。
大聖堂に。
リラが扉を開き、中へと足を踏み入れる。蠟燭の灯がほのかに堂内を照らす。誰もいないそこでリラが声を上げる。
「すいませーん」
「はーい、今行きます」
と声が返り、走ってくる足音が聞こえる。
姿を見せたのは、聖ローマン教の大司祭、マーリンだった。
肩で息をし、リラを見つめると立ち止まる。瞳は潤んでいた。
そのマーリンの表情を見て、シドは直感した。
(やはり、リラはマーリンの生き別れた妹。間違いなさそうだ)
そもそもリラと出会ったアウグスブルクでの事件。
娼婦であったリラが帝国と教会との暗闘に巻き込まれた理由。その理由がすとんと腑に落ちた気がした。
「リラ、……無事に、……戻って来たんだな。よく……生きて……」
マーリンは一歩、
また一歩と近づくと、
リラに涙ながらに抱き着いた。
「ちょ、ちょっと」リラが戸惑い、
「おい!何するんだ。それは俺の仕事だろ」
マーリンへと近づこうとする寅二郎の肩を掴み、シドが言った。
「しばらくはそのままにしてやろう」
シドの表情に不満気な寅二郎だったが、
リラを抱きしめ涙を流すマーリンを見るのだった。




