第三話 腹ペコはつらいよ
「乗合馬車は楽ちんでいいな。おいシドもちっと詰めろ」
「足元が暗いんだ。ちょっと待て」
「コルンハーグともこれでお別れね」
「ああ、あっという間だったがいろいろあったな」
「ああ腹減った」
「おい、トラジロウ!」
「だってよぉ、何だかんだ昼飯食いはぐったろ」
「そうね」
「ああ、確かに」
「あ、コルンハーグならアレ美味しかったね。
“フィッシュアンドチップス”!」
「ああ揚げたてのやつか!」
「確かに帝国中央部のはずなのに、
魚料理が食べられるとは思わなかったな」
「それに“ベーコン”が旨かったな。酒によく合う」
「あれぇ?塩辛いだけだったろう」
「でも葉野菜とパンで挟んだ“サンドイッチ”って言うの?アレは美味しかった」
「葉野菜の水気とベーコンの塩気が上手く交じってよかったな」
「あれを箱に詰めて持ち帰る者もいたな。
軍の携行食として発展したのかもしれん」
「お腹すいたね」
「そだ!リラちゅわんは、
リ・エスティーネ王国に行ったら何が食いたい?
俺が案内してやるよ」
「ええ?行ったことないからなぁ」
「なら俺が案内してやろう。トラジロウよりはいい物食べているはずだ」
「何おぅ!あ、あれがいいなアレ“漫画肉”!」
「“漫画肉”?何それ」
「ああ大きな骨付き肉なんだが、何の肉なのかは謎なんだ」
「謎の肉って!怪しすぎじゃない?」
「うめぇんだって!骨が貫いていてな。
両端持ってこう、肉にかぶりつくんだ!
肉汁が口の中にこう、ぱぁっと広がって、ああ、たまらん!」
「何だか美味しそうだって言うのは伝わったわ」
「おい、トラジロウ。涎が垂れているぞ。汚いな。これで拭け」
「ああ、悪い」
「あはは、何だかシドはトラジロウの“お母さん”みたいね」
「な、なにを言いだすんだ!」
「そうだぞ。シドは男だ。言うなら口うるさいお父さん、“オトン”だ」
「何だ?それは」
「口うるさい男の人は“オトン”なんだって。じゃぁシドは“オトン”だね」
「違、いやそもそもトラジロウがだらしないのが悪いのであってだな」
「分かったわよシド。そういうことにしときましょ、ウフフ」
「ははは、シドは“オトン”で決定な」
「全くトラジロウ、お前はもう……しかし」
「随分陽が落ちてきたな」
「リラちゅわん、
リ・エスティーネ王国に行くことになったら俺が案内するからね」
「行くことになったら、ね。……お願い」
「どうした、リラちゅわん。元気ないな」
「ううん、何でもないの」
「俺たちはもう仲間だぞ。どこへでも連れて行ってやる」
「そうね、ありがとう。……でも!」
「おっと!馬車が停まったな」
「ああ、着いたようだ。悪いリラ、話の途中だったな」
「ううん、いいの。行きましょう。この先も。三人で」
「ああ、まずは大聖堂、マーリンのところへ、だな」




