第二話 勇者PT帝国へ行く⑨
ガルディア帝国からリ・エスティーネ王国へと帰る使節団。
その馬車の車内では《暁の翼》たちの普段通りの賑やかさが戻って来ていた。
「何だか大変だったね」
リルルが珍しくため息をつく。
「ねぇ。どこも重苦しい雰囲気で」
ユキナも眉を顰める。
「皇帝陛下とは一触即発!って空気になったしな?」
アリアがアンナの方を向く。
「あれはしょうがなくない?喧嘩を売られたって感じだし……」
ムキになったことが恥ずかしくなったのか、アンナが下を向いて返した。
「でも、GG00との対決はよかったんじゃない?
私たち、力がついてきたって思えたし!」
と、ヤスコが言うと、
「うん!」
「そうですよ」
「ああ、そうだな」
みんな嬉しそうな声を上げた。
「それに五大国はあと二か国。
いろいろな国での経験が私たちの力になるはず」
とはアリアの言葉。
その言葉にアンナは頷く。
「うん、皆に“希望”を与えるそれが勇者の、私たちの仕事だもんね」
(今はまだ、はっきりとは道が見えない。だけど私にはみんながいる。
こんなに心強い仲間がいるんだ。まっすぐ立って歩き続けるんだ)
そうして、アンナは笑いあう仲間たちに笑顔を向けるのだった。
――レオン・クラムハルトの国葬を終えたマーリンは大聖堂へと戻っていた。
執務室で一人座り、国葬の様子を思い出していた。
(勇者はまっすぐ成長している。
話す機会はなかったが一目見ただけでそれは感じた)
しかし、とため息を一つつく。
(皇帝陛下は侮れん。底をまだ見せてはくれない)
そして、机の上の“号外”を見た。
(コルダ丘陵では“何か”があったはず、そこも見せてはくれない)
マーリンは立ち上がると、机の周りを歩き始めた。
(リラ、私の妹。彼女が私のそばで共に立ってくれれば――)
帝国内部で戦い続ける大司祭の顔に不安の色が浮かぶが、
「いかん、いかん。妹の前で情けない顔は見せられないな」
と、立ち止まり、大きく息を吐き出した。
「もうすぐ帰ってくるはずだ。
まずは彼女があそこで何をみたのか。それを聞いてから、だな」
そう気持ちを切り替えて、マーリンは部屋を出た。
ちょうどその頃、帝都レギオンブルクへ向かう乗合馬車があった。
中には寅二郎たちが乗っている。
今だ“戦場”に立っていない勇者と、“戦場”から帰ってきた勇者。
両者の道は今回交わらなかった。
しかし、いずれ交わるその時、物語は大きく動き出す。




