第二話 勇者PT帝国へ行く⑥
その夜は急遽、歓迎式典が執り行われることになった。
GG00との戦闘の跡が残る大広間で、ヴァルニス同様五大国の一員として魔王軍との戦いに結束を強めることを宣言し、レギウス三世が書状に署名捺印した。
その後、歓迎の宴となり別室へと移動すると体育館の様な作りの大広間だった。
奥の舞台へ向かうように机が並び、白いテーブルクロスの上で金の燭台が静かに揺れていた。最前列に皇帝レギウス三世と共に、アンナたち使節団が陣取り食事や歓談を楽しんだ。
舞台では帝国兵による演武や楽団による演奏が行われ、
その秩序ある音色には特にアリアが感心し、
「自然と背筋が伸びるな」
と食事の手を止め、聞きほれていた。
「さて、どうかな?帝国の料理の味は」レギウスが尋ねた。
「美味しい!」と《暁の翼》一行が褒め、
「さすが帝都ともなると、
山海のものがこれだけそろうのですね」
とアンナが言った。
「そうであろう。物流は国の要。
隅々まで行渡らせることで人、物、そして軍隊が動く」
そのレギウス三世のセリフにアンナたちは沈黙を返した。
しかし、レギウス三世は続けた。
「レオン大将軍のことだがな、
国葬として大々的に執り行うことにした。
ついては、お主たちにも参列してもらいたい。頼めるな」
有無を言わせぬ物言いではあったが、アンナは言った。
「ええ、帝国の英雄、その国葬に謹んで参列させて頂きます」
「よくぞ言ってくれた。朕の国民たちに声をかけてやってくれ。
それでは朕はこれで行こう。あとは帝国の味、存分に楽しんでいくがよい」
と言い残し、レギウス三世は席を立った。
(直接面識は無いけれど、帝国の英雄、その遺志を私が継がなくちゃ)
アンナは自然とナイフを握る手に力がこもるのだった。
その後、レギウス三世は城の地下部分にあるとある施設へやって来ていた。
「ハルモニア、どうだ進捗の方は」
「おお、皇帝陛下自らここへ来られるとは珍しい」
億劫そうではあったが、ハルモニアが近寄り跪いた。
部屋には大きな筒状の水槽が幾つも並び、
中にはGG00のような物体が入っていた。
「経過は順調と言いたいところですが、
対勇者戦のデータを教えなおしている段階。
まだしばらく実用化は先になるかと」
「構わん。今しばらくは“勇者”を用い、
兵たちの意気を上げることとする」
「して、皇帝陛下から見て“勇者”はいかがでしたかな?」
「あれは“使える”な。兵たち、皆に効果が及ぶのが良い」
「“魔王を倒すまで”は、せいぜい役に立ってもらうとしよう」
去っていくレギウス三世の背を見送りながら、
ハルモニアが口元を綻ばせる。
(ほほほ、これだから“人”は面白い。
勝手に混乱の種を蒔いて回るわ。
力のある者は特に。見えているようで見えていない。
いや、
自分の信じるものしか見ようとしない、か)
帝国の混乱の種は、皇帝自ら蒔き直されていくのだった。




