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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第四章 帝国激震編
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第二話 勇者PT帝国へ行く⑤

 黒ローブが煙を上らせながら、一歩一歩アンナたちへと迫る。

 レギウス三世の周りに別のローブ軍団が現れ、詠唱を始めた。


「安心せよ。ただ壁を張るだけのことよ」


 レギウス三世の言葉が終わると、

 うっすら輝く膜が広がりアンナたちと黒ローブを包んだ。


 膜の外側となったエルザが幕を叩く。

「アンナさん!みんな」

「大丈夫!エルザさんは使節団の人たちを守って!」

 アンナは叫びながらも、油断無く黒ローブをみやる。


 黒ローブが立ち止まり、ローブを投げ捨てた。

 その姿は魔鉱石で出来た人形のようだった。

 全身黒光りしており所々脈打つように光が走っている。

 目の部分には丸い光が灯り、

 口は横一文字に裂けておりカパカパと開閉していた。


「紹介しよう。

 帝国が捕獲した魔族。タイプはゴーレム。

 名づけて“GG00(ジージーダブルオー)”だ!」


 レギウス三世の名乗りに答えるように、

 黒い煙を立ち上らせ叫びをあげた。


「オオオオオオオオオオオオオオ!」


 GG00が口を開くとそこへ光が収束。


――瞬間光線を発射してきた。


「みんな、老師の修行を思い出して!」

 アンナの声に皆の心が一つになる。


『マナの流れを見極める!』


 アリアは大楯で光線を弾く!(流れに逆らわない!)


 横から飛び出したヤスコが短剣を投げる!(流れた隙間に入り込め!)


 リルルとユキナが詠唱を開始、(流れを集めて練り上げる!)


 そして、アンナがGG00へ切りかかる。

(勇者の仕事は“無謀”じゃない!)

 左手に金属音が響くがGG00には刃が通らず弾き飛ばされる!


 飛ばされながらも、アンナは踏みとどまった。

 GG00が短剣に気を取られたのを確認する。


(今か!)


――だが瞬間、嫌な流れを感じ、一歩下がる。


ビイーーーッ!


 アンナの元いた位置に光線が!


 GG00は右手の指先からも光線が出ていた。


(危なかった!)


 アンナは冷や汗をかきながらも仕切りなおす。


 そこへ光の幕が下りてくる。


(ユキナの《サンクチュアリ・シールド》!)


「ユキナ!助かる!」アンナは叫び、ヤスコと共にGG00へ切りかかる。


 痺れを切らしたGG00が、両手と口から光線を乱打し始めた。

 無茶苦茶な攻撃に、アンナも容易に近づけない。


 しかし、

 ここまで丁寧に光線を受け流していたアリアが、

 いつの間にかGG00の前に立っていた。


「《シールドバッシュ》!」大楯の一撃にGG00が浮き上がる。

 

 そこへ上からヤスコが蹴りを叩きこみ、


「ここだぁ!」アンナが一点GG00の胸を突いた。


 刺さった剣もそのままに飛びさがると、


「《ライトニングボルト》!」リルルの雷魔法が剣を伝って穴を開けた。


プシューと音を立て、光が明滅し、消えるとGG00は動かなくなった。


「やった、……やったぁ!」《暁の翼》の面々が叫び、アンナも、


「ぅわああああああああ!」と叫ぶと、剣を取り上げ天へ掲げた!


「うおおおおおおおおおお!」

 結界の外では帝国の兵士たちや重臣たちまで歓声を上げた。


(これがアンナの、勇者の“力”!

 ただ前を行くだけじゃない。皆と“共に”歩んでくれる!)

 結界の外で、エルザは涙を流すと歓声に交じり叫んでいた。


 この大歓声の中に交じっていない者が“二人”いた。

(勇者の力、侮れんな。今は“使う”方向で要調整よな)

 レギウス三世は立ち上がると叫んだ。


「そこまで!勇者の力、認めよう。

 “魔弾銃”計画は白紙、朕らも共に手を取り魔王を打ち倒そうぞ!」

 

 その瞬間、再び大広間は歓声に包まれた。


 一方大広間を抜け、“諜報部長官室”へと入っていく影が一つ。


(やはり、ゴーレム一体程度では勇者には届かんか)


 長官の椅子に座るとローブを脱いだ。

 その顔はひどく痩せこけているが、瞳には力が感じられる。


(わざわざ力を削いでまで帝国へと潜り込んだのだ。

 まだまだ遊ばせてもらわんとな……)


 男は黒い息を吐き出す。


 男は魔族だった。


 ベルゼが死に、二人となった三魔将、

 その一人、《調律者》ハルモニア。

 帝国へと潜り込み更なる混乱へと調律すべく、

 ハルモニアは思考の海へと潜るのだった――

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