第二話 勇者PT帝国へ行く⑤
黒ローブが煙を上らせながら、一歩一歩アンナたちへと迫る。
レギウス三世の周りに別のローブ軍団が現れ、詠唱を始めた。
「安心せよ。ただ壁を張るだけのことよ」
レギウス三世の言葉が終わると、
うっすら輝く膜が広がりアンナたちと黒ローブを包んだ。
膜の外側となったエルザが幕を叩く。
「アンナさん!みんな」
「大丈夫!エルザさんは使節団の人たちを守って!」
アンナは叫びながらも、油断無く黒ローブをみやる。
黒ローブが立ち止まり、ローブを投げ捨てた。
その姿は魔鉱石で出来た人形のようだった。
全身黒光りしており所々脈打つように光が走っている。
目の部分には丸い光が灯り、
口は横一文字に裂けておりカパカパと開閉していた。
「紹介しよう。
帝国が捕獲した魔族。タイプはゴーレム。
名づけて“GG00”だ!」
レギウス三世の名乗りに答えるように、
黒い煙を立ち上らせ叫びをあげた。
「オオオオオオオオオオオオオオ!」
GG00が口を開くとそこへ光が収束。
――瞬間光線を発射してきた。
「みんな、老師の修行を思い出して!」
アンナの声に皆の心が一つになる。
『マナの流れを見極める!』
アリアは大楯で光線を弾く!(流れに逆らわない!)
横から飛び出したヤスコが短剣を投げる!(流れた隙間に入り込め!)
リルルとユキナが詠唱を開始、(流れを集めて練り上げる!)
そして、アンナがGG00へ切りかかる。
(勇者の仕事は“無謀”じゃない!)
左手に金属音が響くがGG00には刃が通らず弾き飛ばされる!
飛ばされながらも、アンナは踏みとどまった。
GG00が短剣に気を取られたのを確認する。
(今か!)
――だが瞬間、嫌な流れを感じ、一歩下がる。
ビイーーーッ!
アンナの元いた位置に光線が!
GG00は右手の指先からも光線が出ていた。
(危なかった!)
アンナは冷や汗をかきながらも仕切りなおす。
そこへ光の幕が下りてくる。
(ユキナの《サンクチュアリ・シールド》!)
「ユキナ!助かる!」アンナは叫び、ヤスコと共にGG00へ切りかかる。
痺れを切らしたGG00が、両手と口から光線を乱打し始めた。
無茶苦茶な攻撃に、アンナも容易に近づけない。
しかし、
ここまで丁寧に光線を受け流していたアリアが、
いつの間にかGG00の前に立っていた。
「《シールドバッシュ》!」大楯の一撃にGG00が浮き上がる。
そこへ上からヤスコが蹴りを叩きこみ、
「ここだぁ!」アンナが一点GG00の胸を突いた。
刺さった剣もそのままに飛びさがると、
「《ライトニングボルト》!」リルルの雷魔法が剣を伝って穴を開けた。
プシューと音を立て、光が明滅し、消えるとGG00は動かなくなった。
「やった、……やったぁ!」《暁の翼》の面々が叫び、アンナも、
「ぅわああああああああ!」と叫ぶと、剣を取り上げ天へ掲げた!
「うおおおおおおおおおお!」
結界の外では帝国の兵士たちや重臣たちまで歓声を上げた。
(これがアンナの、勇者の“力”!
ただ前を行くだけじゃない。皆と“共に”歩んでくれる!)
結界の外で、エルザは涙を流すと歓声に交じり叫んでいた。
この大歓声の中に交じっていない者が“二人”いた。
(勇者の力、侮れんな。今は“使う”方向で要調整よな)
レギウス三世は立ち上がると叫んだ。
「そこまで!勇者の力、認めよう。
“魔弾銃”計画は白紙、朕らも共に手を取り魔王を打ち倒そうぞ!」
その瞬間、再び大広間は歓声に包まれた。
一方大広間を抜け、“諜報部長官室”へと入っていく影が一つ。
(やはり、ゴーレム一体程度では勇者には届かんか)
長官の椅子に座るとローブを脱いだ。
その顔はひどく痩せこけているが、瞳には力が感じられる。
(わざわざ力を削いでまで帝国へと潜り込んだのだ。
まだまだ遊ばせてもらわんとな……)
男は黒い息を吐き出す。
男は魔族だった。
ベルゼが死に、二人となった三魔将、
その一人、《調律者》ハルモニア。
帝国へと潜り込み更なる混乱へと調律すべく、
ハルモニアは思考の海へと潜るのだった――




