第二話 勇者PT帝国へ行く③
そして、使節団の一員として、
会談を聞きながらエルザは困惑していた。
(様々な帝国の疑惑、それは確信しているつもりだった。
だけどそれを一切感じさせない。それはいったいなぜ?)
エルザの困惑を置いて、会談は進む。
「して陛下、現在の戦況を伺ってもよろしいでしょうか?」
アンナが切り込んだ。
「よかろう、おい」
レギウス三世が視線を送ると、
全身鎧の兵士が前へ出た。
そして、報告を始めた。
現在の一番の激戦地はコルダ丘陵。
そこには大将軍レオンが着陣していること。
三魔将ベルゼの姿も確認されたこと。
秘密兵器部隊が投入されたこと。
(ベルゼが!)
アンナの脳裏に王国急襲事件が蘇る。
しかし、それよりもとアンナは尋ねた。
「陛下、秘密兵器部隊とは一体?」
「“魔弾銃”部隊よ」
皇帝の言葉に、使節団はおろか居並ぶ帝国兵士たちにも衝撃が走った。大広間に騒めきと困惑の視線が飛び交い、エルザは堪らず立ち上がり叫んだ。
「“魔弾銃”は禁忌の兵器!それを!」
「黙れ!皇帝陛下の御前であるぞ!」
全身鎧が剣に手をかける。
「詳しくご説明いただけますか?」
アンナはエルザを手で制し、
レギウス三世に向き直る。
「なに、魔族の技術を奪い実用化させようとしているまでのこと」
レギウス三世は何事もないかのように言い切る。
「魔族の技術を奪い取る?
ですが、それは危険だからこそ“禁忌”なのでは?」
「“力”を求めて何が悪い?民や国を守る。
力を振るうとはそういうことだ。
力を使わぬ覚悟など、朕には理解できぬ」
「そのために少なくない民や兵士、
弱い者たちの犠牲が出ることになっても?」
「お前の言う“犠牲”の上に立ち皆を導く。責任を背負ってな」
アンナはどこか、かみ合わないものを感じていた。
(魔王を倒す。みんなで平和な世界を作る。
同じ方向を向いているはずなのに……)
アンナの背に、じっとりと冷たい汗が伝った。
「なら、どうする?
神にでも祈ってみるか?
ふん、神なぞ何をしてくれるというのか」
レギウス三世の言葉に、アンナの心に火が付いた。
「少なくとも、私たちはそのためにここにいる!」
アンナが叫び、
レギウス三世が言葉を返そうとした瞬間、
兵士が駆け込んできた。
「失礼ながら、報告!コルダ丘陵にて――」あまりに無礼な横やりが入る。
しかし、この報告で混沌はさらに深みへと入るのだった。




