第二話 勇者PT帝国へ行く①
激闘を終えた寅二郎たち。
彼らは一度、マーリン大司祭の待つ大聖堂へと帰ることにした。
「ごめんね、トラジロウ。力が足りなくて」
リラの声が沈んでいる。
「リラちゅわんのせいじゃない。気にすんなよ」
寅二郎が笑い、手を振る。
その手はズタズタに切り裂かれた跡が残っていた。
指を動かすたび、鈍い痛みが遅れて返ってくる。
「そうだぞ。
こいつが治療途中でベルゼとやりあったりするからだ」
シドがため息を付く。
魔弾銃暴発のダメージが残ったままベルゼと切りあい、寅二郎の手は力が入らなくなってしまっていた。リラの治癒魔法では完治に至らずマーリンに診てもらうことにしたのだ。
「行こうか、帝都レギオンブルク、大聖堂へ」
シドの声に頷き、寅二郎たちは歩き出したのだった。
一方、その帝都レギウス城に到着した一団があった――。
「ここがレギオンブルク」
物々しさに目を見開き、アンナたち使節団は馬車を降りた。
馬車を降りた瞬間、空気が変わった。
城壁は想像以上に高く、黒く、
外側には無数の矢倉と見張り台が突き出している。
門前には二重三重の検問線。
武装した兵が無言で立ち並び、その視線は一様に鋭かった。
通りに入っても、人影は少ない。
開いている店はほとんどなく、窓という窓は閉ざされ、
建物の壁面には防護刻印が刻まれている。
歩くごとに、甲冑が擦れる音が反響した。
それは護衛の足音ではなく――街そのものが武装している音のようだった。
「皇帝陛下がお待ちだ。来い」
見張りの兵士の後を歩く。
「何だか、……ねぇ」
ヤスコが眉を顰める。
「ああ、余りに雰囲気が重いな」
アリアも不審顔だ。
「ヴァルニスとは全然違うね」
リルルですら落ち着かない様子。
「ええ、何だか怖いくらい」
ユキナは自然と胸の前で手を組んでいた。
「まさに帝国は対魔王軍との最前線、それは分かるのですが……」
(厳戒態勢は魔王軍へのもの?それとも……)エルザも見回し警戒する。
先頭を歩くアンナもずっと前方を見据える。
(私が見極めなくちゃ、皇帝陛下の真意を……勇者として)
我知らずアンナの手は剣の鞘を触っていたのだった。




