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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第四章 帝国激震編
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第一話 突撃はつらいよ⑨


 レオンが空へと還った。


 それでも戦場は止まらない。

 あちこちで爆音が轟き、

 剣と剣がぶつかり、

 金属音が鳴り響いていた。


 が、


 ここだけは静かだった。


 シドに抱えられ、

 リラに治癒魔法をかけられていた、

 寅二郎に声がかかった。


「やってくれたな」


 ベルゼだった。

 レオンごと光の柱に貫かれ右肩は無くなり煙を上げていた。

 右腕も皮一枚でぶら下がっているような状態で、

 それでも眼光鋭く、寅二郎を睨んでいる。


「“守る力”は堪能したが、お前はここで殺さねばならん」


 ベルゼが右腕を引きちぎると、左手に持ったそれが漆黒の刃へと変化した。


 それを見た寅二郎は剣を取り、立ち上がった。


「まだ、治っていないのに!」

 リラが叫ぶがシドが止めた。


「無理だ。“私”たちじゃ止められない」

 なおも叫ぶリラを引きずりシドたちは下がった。


 まだ傷の癒えていない両手、血を滴らせながらも寅二郎は剣を構える。


「決着を着けよう。――行くぞ、ベルゼ!」


 両者の視線が交錯する。

 次の瞬間雄たけびを上げお互い走り出し、


「「ウオオオオオオッ!」」


一閃。


 寅二郎の影が膝をつく。


「トラジロウ!」リラが叫び、


「なるほど」とベルゼの影は初めて本気の笑みを浮かべた。


 しかし、ベルゼの影は胴で切り離され二つになっている。


「この力、生かしておけば魔王様の脅威に……」


 そう呟くと、ベルゼも灰になって消えた。


 シドとリラが駆け寄り再度治療を開始する。

 寅二郎は胡坐をかき空を見上げて言った。

「終わったな」「ああ!」「うん」戦場であることも忘れ三人で笑いあった。


――しかし戦場は、嘘のように静まり返っていた。


 突然キィンと空が鳴り、そして上から押さえられたような圧迫感を感じた。


「面白い見世物だった」暗く淀んだ声色だった。


「見世物の礼に我が名を伝えよう。

 我が名はノクス・リヴェルタ。

 貴様ら“正”を滅ぼす者の名よ」


 戦場中に響いているのだろう、全ての者が聞き入っている。


「しばらくの“生”を謳歌するがよい。

 じきに全てに終わりをくれてやろう」


 そう言うと圧迫感が消えた。そして魔物たちが引いていった。


(魔物たちが撤退した?

 この統率力、あれが大魔王ノクス・リヴェルタ!)


 シドは敵の巨大さに唾を飲んだ。その横では、

「リラちゅわん、もっと近くでちょうだい」

「馬鹿、集中が途切れるじゃない!」

(この馬鹿はこの期に及んでまだそれか……)


 危険を顧みずレオン、ベルゼを退けた寅二郎。

 その姿に頼もしさを感じる一方、危うげな物を感じていたシド。

 しかし普段通りに戻った様子に、安堵のため息を付くのであった。

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