~第97夜~「異世界における若者の言葉の流行(その2)」「オニ祭り」
異世界で流行している若者言葉。それは「ing」でした。
それも、形容詞や名詞など、フツーは使わない単語に現在進行形のingをつけるのです。
たとえば、「love」という単語がありますよね?
これは動詞ですが、loveはフツー現在進行形で使いません。それが、あるハンバーガー屋さんのCMで「I'm lovin' it」というフレーズが使われて大流行したことがありました。
これをもっとムチャな使い方をして「nice」にingをつけて「You're nicing!」と言ったり。「You're gooding!」と言ったり。どちらも、スポーツやゲームで素晴らしいプレーをした時などに使用され、「凄い!」の強調の意味合いです。
名詞で使う場合は、「Mountain(山)」にingをつけて「Mountaining」として、「私は今、山に登ってるとこですよ~」みたいに使ってみたり。
「~ナウ!」なんてフレーズが流行ったことがありますが、あの使い方に近いかも知れませんね。
あるいは、「Michael」という名前の男の子にingをつけて「Michaeling」としたり、「Emma」にingをつけて「Emming」としたり。どちらも、かわいらしいイメージを付加する意味合いになっています。
こんなコトを英語圏の国でやったら、怒られてしまうでしょうが、異世界に言語が持ち込まれることで、かなりムチャクチャな使い方が許されてしまったのです。
たとえば、日本にも「和製英語」というのがありますよね?
日本人からすると当たり前に使っている単語が、実は本場英語圏の国々からしたら、トンデモ使用法だったりする。
アレと同じ原理です。
もちろん、通常は「スマホの同時通訳アプリ」や「翻訳魔法」が使われるので、あまり意識することがありませんが、どの世界にもマニアというのは存在するもので。「相手の国をもっと知りたい!」と、言語を勉強する人たちがいるのです。
最初は、そういった人たちが冗談で使い始めたものが、一般的な言葉となって普及していったというお話。
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「オニ祭り」
さて、前回(第94夜)自分の経営するバーの天井をブチ破られてしまったラオリェンママ。代わりにドデカいダイヤモンドを手に入れて、お店の修理代にあてることにしました。ついでに、あちこちガタが来ている建物を大幅改修することに。
やって来たのは「無手勝建設」の社員です。
「いやいや、ママ。こりゃ、相当酷いねぇ。よくこんなに放っておいたなぁ。いっそのこと建て直した方がいいんじゃないの?」
「そんなコト言って!アタシのお金をむしり取ろうって気でしょ?」と、ママも負けてはいません。
「いやいやいや、我が無手勝建設は『良心!安全!お手軽価格!』をモットーにやってるんですよ。貧しい一般市民から、なけなしの金をむしり取ろうだなんて、そんなわけないじゃないですか」
「はてさて、どうだか…」
「ま、建て替えが無理なら、リフォームしましょう!リフォーム!全面リフォームでも、ゼロから建て直すよりかは、よっぽどお安くできますから」
…というわけで、無手勝建設社員の口車に乗って、お店を全面改装することになったラオリェンママでありました。
当然、その間、バーはお休み。ひさびさの長期休暇に、ラオリェンママもノンビリ暮らしております。
「そうだわ!せっかくの機会だから、この機に『オニの村』を訪れることにしましょう。ちょうど、そろそろ『オニ祭り』の時期だし」
思い立ったが吉日。ラオリェンママは、さっそく旅の準備をすると、ビュ~ンと飛び立って、オニの村へと到着しました。
「いや~、ひさしぶりね!やっぱオニはオニの村に限るわ!」
そう!何を隠そうラオリェンママは、オニの娘として生まれたのです。もっとも、年齢的には「娘」という時期はとうの昔に過ぎ去ってますけどね。
おっと。「うるさい!年齢のコトは黙ってなさい!」と、ママに怒られてしまいそうなので、その年の話はこの辺にしておきましょう。
それよりも、オニ祭りですよ!オニ祭り!
ここで1つ説明が必要でしょう。「オニ祭り」とは、年に1度、世界中のオニたちが集まって地元の酒に豪華な料理にと舌づづみを打ちつつ、盛り上がる楽しい楽しいお祭りなのであ~る!
もちろん、興が乗ってくれば、ピンクや紫色の怪しい雰囲気になってきて、男女入り乱れて、組んずほぐれつの大人の相撲大会が始まるのです!
ま、長ったらしい説明よりも、実際の様子を見ていただいた方が早いでしょう。
「お?ラオリェンじゃないか。珍しいな」と、祭りが始まる前から、さっそくオスのオニが話しかけてきます。
「ええ、そうなのよ。ほんとはアタシも毎年楽しみにしてるんだけど。お店の方が忙しくてねぇ。今年はひっさびさの参加になるわ」
ほんとは、お店は忙しくもなんともないのですが、年中開けておかないと赤字で潰れてしまうので、仕方なく1円でも多く稼ぐため、1年中バーを開けているのです。
「フ~ン…そうか。確か、都会でバーをやってるんだったな」
「やっだぁ~!都会だなんて。田舎よ!田舎!片田舎!へんぴな街なんだから~」と、ラオリェンママはオスオニの背中をバンバン叩きます。
「ゲッ、ゲホゲホッ…」と、オスオニは思わずむせて咳をしました。
「アア~ラ、大丈夫?」と、全然心配してなさそうにラオリェンママが言います。
「あ、ああ。大丈夫、大丈夫。しかし、相変わらずのバカヂカラだな。メスにしとくのはもったいないぜ。オスに生まれてりゃ、今頃、我が村の英雄だったろうに」
「そうねぇ。たくましいオスのオニにもあ・こ・が・れ・ちゃう♪」
「ま、まあ、今夜は1つよろしく頼むぜ」
と、こんな風にして祭りの始まる時間を待ちます。
さて、こちらの方もちょうどお時間となったようです。
実際のオニ祭りの様子は、また明日の夜にお届けしましょう。




