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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~いろいろな小話~
95/1003

~第94夜~「悪魔の卵(その2)」「閉鎖国家ルビアルス連邦での生活」

「で、結局、その悪魔は幸せに暮らしたの?」と、ラオリェンママは語り手である旅の男にたずねました。

「さて、どうだろうね?幸せに暮らせたといえば、幸せだったろうし。そうでなかったといえば、そうでもないし。まだ、3つ目の願いはかなえている途中といったところかな?」と、旅の男。

「幸せなんてのは人それぞれですからね。どんな大金持ちでも、いかなる能力者であろうと、不幸な者は不幸だ」と、吟遊詩人も言います。

「本人に聞いてみないとわかんないってコトか…」と、近所の刑務所で働いている看守もつぶやきます。

 ところが、そのつぶやきに対して、旅の男はこう答えました。

「いや、本人が言ってるんだから間違いない。わからないものはわからない。3つ目の願いはかなえてる途中さ」

『え?』と、その場にいた一堂が声を合わせて驚きます。


 しばらくの間があってから、バーの常連客であるさえない男が、おそるおそるたずねてみました。

「それって、まさか?」

 旅の男はザッと立ち上がって答えます。

「そう!その悪魔ってのが、このオレよ」

 その瞬間、これまで語り手を務めていた旅の男はバッ!とマントをひるがえすがごとく、背中に真っ黒なコウモリのような翼を広げると、そのまま店の天井を突き破って、ビュンッ!と、どこへやら飛んで行ってしまいました。


 あとには、天井に大きな穴が空いていて、そこからきれいな星空が見えるのみ。

 ポカ~ンとその様子を眺めていた一堂でしたが、真っ先に気づいたラオリェンママが、天井に空いた穴から夜空に向かって叫びます。

「コラ~!店に損害を出すな~!修理代、置いてけ~!」

 すると、夜空から何かが落ちてきて、コツ~ンという音を立てて、床に転がりました。

「こ、これは…」と、さえない常連客がその何かを拾い上げます。

 ラオリェンママも顔を近づけてみて驚きました。

「ダイヤだわ!それもこんな大粒の!これが本物だとしたら、天井の修理代どころか、お店丸ごと立て直せるわ!」

「なるほど。これが『悪魔の契約』か。ちゃんとそれ相応の望みをかなえていったわけだ。まったく義理堅いな」

 常連客の言葉を聞きながら、その場に立ち尽くす一堂でありました。


         *


「閉鎖国家ルビアルス連邦での生活」


 ルビアルス連邦は、実質的には魔王を名乗るトマレットが支配する国でしたが…

 それとは別に、政治上の代表者が存在しています。

 また「連邦」の名の通り、1つの強固な国家というよりかは、いくつもの国が寄せ集まって1つの国を形成しているといった方が近いでしょう。


 この時代、ルビアルス連邦に暮らす人々は圧政の(もと)、苦しい生活をしていたと考えられがちですが、意外とそうとばかりも言えませんでした。

 以前に紹介したように「赤ちゃんをたくさん生んだ女性には報奨金を与えられる制度」もありましたし、それ以外にも国に従順な市民に対してはいろいろと優遇してもらえる仕組みもあります。


 人々は質素倹約な生活をしいられていましたが、それさえも考えようによっては「理想の人生」とさえ言えます。

 現代人は、とたく贅沢をしがちです。必要もない食料を買い込み、余らせたり、食べ過ぎで肥満になったりする。あるいは、頻繁に旅行に出かけ、資源やエネルギーを浪費し、排気ガスを吐き出す。


 たとえば、自動車1台を動かすのにどのくらいのエネルギーが必要か知っていますか?

 人ひとりや、ちょっとした荷物を運ぶためだけに、何百キロもある鉄の塊を動かさなければならないのです。そんなコトのために、膨大な量のガソリンや電気や魔力が使われてしまっているのです。

 資源は、どんどん失われ、地球は傷ついていきます。

 人によっては「人間こそが諸悪の根源である!」と訴え続けているくらい。

 さすがに、それは大げさとしても、現代人は無駄づかいが多過ぎます。資源もお金も環境も、ムダが多過ぎるのです。


 そういう観点から見れば、ルビアルス連邦のやり方というのは、実に理にかなっていました。

「質素倹約!質実剛健!」「人間とは、最低限の生活を維持し、身体を鍛え、能力を上げ続けていれば、幸せに生きられる生き物である」というのが、ルビアルス連邦に共通する考え方でした。


 こちらは、ルビアルス連邦に所属するある指導官の言葉です。

「他国の人間どもを見てみろ!贅沢にうつつを抜かし、堕落し、挙げ句の果ては『(うつ)』だとか、なんだとか。生物として完全に落ちぶれてしまっておるではないか!」

 地球の引きこもりたちを強制的に異世界へと連行し、心と身体を鍛え上げる「引きこもり強制更生団」という組織がありますが、あそこで働いている人たちとは意見が合うでしょうね。


 そんなわけでしたから、物質的・文明的には他国に劣るものの、国民ひとりひとりを見た時には、決して引けを取りません。むしろ、精神的には他国の国民を圧倒していたくらいです。


 それでは、ルビアルス連邦に暮らす人々の実際の生活を見ていきましょう。

 …と、ちょうどお時間になったようです。この続きは明日にいたしますか。

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