表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~いろいろな小話~
94/1003

~第93夜~「都会のカジノで出会った貴族(その2)」「悪魔の卵」

「それで、ついに地図に書かれた宝の場所を発見したってわけ」と、ラオリェンママは言いました。

「え?終わり?」と、さえない顔の常連客。他のみんなも唖然としています。

「いや、実は終わりじゃないんだけど。そこから、まだ一悶着(ひともんちゃく)二悶着(ふたもんちゃく)もあって。長くなるので、その話は、また今度ね。結果的には、結構な額のお金が入ってきて、このお店を始めることができたってわけ」

「ふ~ん、なるほどね」

「最後はあっけなかったけど、それなりにおもしろくはあったかな」

「若い女性の心理がわかったし」と、みんなそこそこ納得しています。


「じゃあ、最後はオレの番かな?」と、謎の男が声をあげました。

「トリなんだから、とっておきのを話してくれよ」とさえない顔の常連客。

「期待してるわよ!」と、ラオリェンママも応援します。

「よしよし、わかった。では、始めようか」と、男は話し始めました。


         *


「悪魔の卵」


 ある時、ある国で、1人の女が卵を手に入れた。それはそれは禍々(まがまが)しい卵だった。

 実のところ、女は自分の身体を男に売りながら生きている身で、今夜の客が「持ち合わせがない」というので、仕方なく代金代わりに気味の悪い卵を受け取ったのだ。

「客を警察に突き出してもいいのだが、それでは一銭にもならない。だったら、こんなモノでも手に入れておいた方がいいだろう。古道具屋にでも売れば、いくらかの金になるだろうから」と、考えたからだ。


 女が手に入れた卵は、自分の手のひらくらいの大きさで。ちょうど、指の先から手首の辺りまでの長さが、卵の高さであった。

 最初、女はそんなモノ、サッサと()(ぱら)う気でいた。

 ところが、どういう心境の変化か、自分で育ててみたくなってしまった。あるいは、それこそが「悪魔の卵」の魔力だったのかも知れん。

 そう!まさに悪魔の卵だったのさ。


 卵は母親を求めていた。女は母親となった。

 悪魔の卵は、何を(かて)に成長すると思う?

 「欲望」さ。人々の欲望を喰って成長するのさ。そういう意味では、女の職業はうってつけだった。なにしろ、欲望まみれの男どもがわんさか集まってきてたからな。

 そうして、卵は性欲にまみれた大人の男どもの欲望を喰って育っていった。


 何週間、何ヶ月が過ぎたろうか?

 ついに、卵は欲望を吸収し尽くし、ピキピキと音を立てながら殻を割り、悪魔が誕生した。悪魔といっても、赤ん坊さ。人間であれば、お乳が欲しい時期。

 そこで、悪魔の赤ん坊は、さらなるエサを要求した。今度は、単なる欲望ではなかった。能力を上げるためのエネルギーを必要としたのだ。「氷」「炎」といった属性ごとのエネルギーをな。

 母親代わりの女は、悪魔の指示に従って、1つ、また1つと条件を満たしていく。時に大きな火事を起こした屋敷を訪れ、時に吹雪うずまく極寒の地まで旅をして。


 全ての条件を満たした時、赤ん坊だった悪魔は大人に成長していた。そうして、恩返しを始めたのさ。

 悪魔ってのは意外と義理堅い生き物でな。自らの目的を果たす代わりに、人間と取り引きとして願いをかなえてやったりする。「契約」さ。

 契約は絶対だからな。今回の場合は、先に悪魔の望みをかなえてもらった。あとから、人間の願いの方。だから、恩返しというわけ。


「お母さん。今まで育ててくれてありがとう。僕は、もう、ひとりで生きていけます。これまで育ててくれた恩返しとして、願いを3つかなえてあげましょう。さあ、なんでも言ってください」

 悪魔の言葉に、女は迷った。母親としての時間を過ごせたコトに満足していたし、願いなどどうでもよい気もしたが、せっかく自分の息子がこう言ってくれているのだ。何か願わなくては…

 そう考えて、適当な願いを口にした。

「とりあえず、お金持ちにしてちょうだい。近所の人たちみんながうらやむような大金持ちに」

「ホイ、きた!」 

 そう答えると、悪魔はどこかから山のような金塊や宝石を手に入れてきて、女の前に山と積んだ。

「まあ、これだけあれば、一生食うに困らないわ!」

 感動している母親を前に、悪魔は笑いながら言った。

「食うに困らないどころか、どんなお屋敷だって手に入るし、召使いだって雇い放題さ」


 女は、2つめの願いとして「伴侶」を望んだ。生涯自分を裏切らない素敵な男性を。

「ホイ、きた!」

 悪魔は答えると、どこから男を連れて帰ってきた。どっからどう見たって申し分のない素敵な男性だった。

「どうか、わたくしめと結婚してください」

 男は、そう言って、悪魔の母親に求婚した。

 こうして、何不自由なく幸せに暮らした女は、最後の願いを自分のためには使わなかった。


「最後の願いは、あなたのために使うわ。あなたは悪魔。人間じゃあないわ。きっと、世間の人々からさげすまれ、冷たい仕打ちにあって過ごすことでしょう。だから、私の願いは『あなたが幸せになること』さあ、行きなさい!自由になって、自分の人生を生きるのです。そうして、誰よりも幸せな一生を過ごしなさい」

「やれやれ、最後の願いが一番難しいな。けど、契約は契約だ。その願い、かなえられるようにがんばってみるさ」

 そう言って、悪魔は背中から羽を生やすと、ビュンッとどこへやら飛んで行った。


         *


「さて、ちょうどお時間となったようです。それでは、この続きは、明日の夜に…」

 そう言って、天使である僕は今夜の話を終わらせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ