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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~いろいろな小話~
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~第90夜~「時の子フリージア(第2幕)(その2)」

 ある時、フリージアは怪しい年配の男から声をかけられた。

「お嬢さん、お嬢さん、きれいなお嬢さん。アンタなら、きれいな服を着て、美味しい物を食べて、愉快に暮らせる方法があるよ。さぁさ、こんな場所から抜け出して、ついていおいで」

 フリージアは、一瞬迷った。

(もしかしたら、これはチャンスかも知れない。私にも別の人生を歩む権利がある。元の世界になど帰るのはやめて、この世界でおもしろおかしく暮らした方がいいのかも。このおじさんについていってしまおうかしら?)と。


 けれども、すぐに頭をブンブンと横に振って、その考えを振り払ったのじゃ。

(ダメ!ダメ!たとえ、別の人生を歩むとしても、こんな怪しい人についていってはダメ!)

 そうして、年配の男の誘いを断った。


 次にチャンスが訪れたのは、旅芸人の一座で火事が起きた時じゃった。

 フリージアも、今度は好機を見逃さんかった。これまで兄弟姉妹のように育ってきた猛獣たちを連れて、脱出した。

 ボウボウと燃えさかる一座のテントを尻目に森の中へと駆けていくフリージアと猛獣たち。


 仲間として連れてきたのは、ライオンが1頭と、トラが1頭、それにクマとゾウとウマが1頭ずつじゃ。

 とりあえず、上手く逃げおおせたのはよいが、食料が必要なのには困ったモノじゃ。なにしろゾウやらトラやらクマやらおったから、肉の確保だけでも重労働。

 フリージアは、猛獣たちと協力し、森の中で獲物を狩る生活を続ける。

 じゃが、そんな生活も長くは続かんかった。結局、猛獣を連れての逃亡生活など無理があったんじゃなぁ。


 そこで、フリージアは王宮の戦闘員に志願した。

 ちょうど森に狩りにやって来た王様の一団がおったので、それを上手く利用したんじゃ。

「なんだ。この怪しい奴らは?」と、王様の警護にあたっておった兵士たちも最初はいぶかしがっておった。けれども、すぐに打ち解けて、願い通り王宮の戦闘員として働くことができた。

 なにしろ、ライオンにトラにクマにゾウにウマじゃからな。敵国と戦うにはうってつけじゃ。

 しかも、フリージアは見た目も美しかったので、すぐに皆の人気者となった。 しかも、フリージアは見た目も美しかったので、すぐに皆の人気者となった。あちこちから「うちに嫁に来ないか?」と誘われたが、そっちは全部断った。心のどこかで、まだ「自分の世界に帰りたい」という思いがあったんじゃなぁ。


 それからしばらくは幸せな時間が続いた。

 平和な時期には、王様の近くに住まわされ、衣食住には困らんかったし、王宮で開かれる「モンスター将棋」のお相手をさせられるコトも多かった。

 モンスター将棋というのは、どこぞの魔王軍が考え出した日本の「将棋」に似たゲームじゃ。ただし、駒に使うのは、ゴブリンだとかワイバーンだとかドラゴンだとかで、新しく駒を追加することもできる。このルールにより、次々と新戦略が生み出され、長く遊ぶことができたんじゃな。

 ま、それはそれとして。隣国と戦争になれば、当然、戦場に駆り出される。それ以外にも近隣の魔物が攻めてきた時なども、戦わねばならん。代わりに、猛獣たちのエサ代は国家予算から捻出してもらえたし、新しい猛獣も与えられた。

 猛獣だけじゃあらせん。ドラゴンだとかスフィンクスだとか、珍しい魔物も与えられた。まさに、モンスター将棋のごとくな。


 数年の時が過ぎ、フリージアは再び思った。

(今度こそ、元の世界に帰る必要はなくなったかも。ここで一生を終えてもいいかも知れない。きっと、この国で役に立つコトが私に与えられた使命だったんだわ。うん!そうね!そうしましょう!)


 しかし、運命というのは、なんと過酷なモノじゃろうな…

 天は、フリージアにいつまでも平穏無事に生きていくコトを許さんかった。

 この時代、世界は再編が続いており、どこの地域でも「大きな国が小さな国を吸収して、さらに巨大な国に成長しておった」んじゃ。

 フリージアが身を寄せておった国も例外ではなかった。やがて、最新の兵器や魔法で武装した巨大国家が押し寄せてきて、簡単に支配されてしもうた。いかに、魔物や魔獣を飼っていようと、時代の流れには逆らえはせん。


 最後に王様は、こう言ったのじゃ。

「フリージア。お前は逃げなさい。ワシはこの国で随分といい目にもあい、幸せだった。素晴らしい民にも恵まれたしな。だが、お前は元々この国の国民ではない。ここで逃げ出したとしても恥ではない」

「いやいや、嫌です!私も最後まで戦います!」と、フリージアは抵抗したが、王様は聞き入れてくれんかった。

「ワシにはわかる。お前にはお前の役割がある。夢があるのだろう?長いコトこの国に引き止めて悪いコトをした。だが、それももう終わりだ。本来の目的を果たしなさい。それに、若者には若者の未来がある。お前は可能性を受け継ぎ、種をまき、新たな芽を生むべきなのだ」と。


 こうして、フリージアは火の手の上がる王宮を逃げ出し、何匹かの魔物を連れて、再び旅の日々へと戻っていったというコトじゃ…


         *


 さて、ちょうどお時間となりました。

 この続きは、また明日の晩にいたしましょう。

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