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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~いろいろな小話~
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~第89夜~「ワガママな王様」「時の子フリージア(第2幕)」

「ワガママな王様」


「じゃあ、まずはオレから行かせてもらおうか」と、常連客のさえない男が手を上げました。

「こういうのは、あとになるほどハードルが上がるもんだ。トップバッターなら、みんな、そんなに期待しとらんだろう」

 それに対してラオリェンママから厳しいツッコミが入ります。

「いきなりツマンナイ話したら承知しないからね!今夜の代金、全員分払ってもらうわよ!」

「ま、まあ、手加減してくれよ。とりあえず始めるな」


         *


 むかしむかしの話だぜ。

 ある国に王様が住んでいた。たいそうワガママな王様だった。


 その頃は、まだ今みたいに便利な時代じゃなくて、食べる物なんかも豊富じゃあなかった。料理の種類も限られてたんだな。

 ところが、王様はワガママなものだから、毎日違う料理を食べたがる。2日と続けて同じ料理を出すコトを許さなかった。もし、昨日と同じメニューでも出してみろ。途端に、料理人はクビチョンパよ。

 そんなだったから、王宮の料理人は皆、戦々恐々としながら王様に料理を提供していた。当然、危険な勝負ができないもんだから、味の方も無難にまとまりがちになっちまう。

「なんだ、なんだ!この料理は?完全にマンネリ化してるではないか!こんなんだと、全員クビをはねるぞ!」と、王様はお冠。

 かといって、突拍子もない味つけにすると「こんな珍妙な料理、食えたもんじゃない!」と、怒られるのだった。


 そんなある日、王宮に旅の行商人がやって来て言った。

「王様、王様。ここに魔法の粉があります。これさえあれば、どのような料理も美味に変わりますぞ。しかも、味の種類も豊富にあり、飽きることがありませぬ」

「フ~ム、魔法の粉とな?では、1つ試してみるとするか」

 行商人にすすめられて、魔法の粉を料理に振りかけると…

 アア~ラ不思議!確かに、料理がうまくなるのだった。

「ホホ~、コイツは凄い!これはなんという魔法の粉じゃ?」と王様が尋ねると、行商人は自慢げに答えました。

「これぞ!我が社が開発したマル秘の『フリカケ』にございます!」


         *


「なんだ、単なるフリカケのCMじゃないの」と、ラオリェンママ。

「え?ダメか?」と、常連客のさえない男。

「まあ、いいわ。つかみとしては、まあまあね。次!誰が行く?」

「では、次はワシが話そうか」と、声をあげたのは近所の刑務所で働く看守でした。

「これは、ワシがある死刑囚から聞いた話なんじゃが…」と、看守は前置きをして話し始めました。

 そうして、第23夜で死刑囚が語った通りのお話をします。

「実は、この物語には続きがあって。残念ながら死刑囚の方はすでに刑が執行されちまったんじゃが、このワシがしっかと続きを聞き届けておいたから、今から話して進ぜよう」


         *


「時の子フリージア(第2幕)」


 少女フリージアは自分の正確な年齢を知らんかったが、14~15歳の頃になると、育ててくれた老夫婦に別れを告げて、旅に出たのじゃった。


 フリージアには、昔の記憶があった。この世界に来る前の記憶じゃ。そこでは、別の人間として暮らし、大人としての経験もしておった。

 ところが、ある時、「時の狭間(はざま)」に落ちてしまい、今いる世界へとやって来たのじゃ。その際、大人であった姿は赤ん坊に逆戻り。ただし、記憶だけは以前のモノを維持し続けておる。

 そんなじゃったから、誰に教わることもなく、料理だとか裁縫だとか、一通りの仕事はできたんじゃ。なので、とりあえず食うには困らんかった。

 育ててくれた親代わりの老夫婦のもとを去ると、都会へと出て働き始める。この地で情報を集め、どうにか自分が元いた世界へと帰ろうと考えたんじゃな。


 ところが、そう上手くはいかんもんじゃて。

 働くには働けたし、さしあたっての生活費にも困りはせん。けれども、毎日毎日、労働の日々で、元の世界へと帰る方法などサッパリわからんままじゃ。

 仕方がなくフリージアは都会で働くのはあきらめて、旅人になることにした。そうして、旅芸人の一座に入れてもらうことになったのじゃ。


 確かに、旅することで新しい情報は入るようになった。じゃが、旅芸人としての日々はつらいもんじゃった。

 フリージアの役割は「猛獣使い」じゃ。新しく入ってきたトラやらライオンやらの獣にエサをやることから始め、やがては「火の輪くぐり」やら「玉乗り」やらを教え込むようになっておった。

 時には、エサの代わりに人間が食われてしまうこともある危険な仕事じゃった。


 そうこうする内に時は過ぎてゆく。5年が経ち、10年が経った。

 猛獣使いとしての腕は上がっていったが、元の世界へと帰るキッカケすらつかめぬまま。フリージアは半分あきらめかけておった。


(ああ~あ。私、何やってるんだろ?こんなコトなら、元の世界に帰るだなんて思わずに、こっちの世界での人生を楽しめばよかった。もう10年も無駄にしてしまったわ…)


 そんな風にすら思ったものじゃ。


         *


 さて、今夜もそろそろ夜が明ける時間となったようです。

 それでは、フリージアの旅の続きは、また明日の晩にいたしましょう。

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