~第84夜~「目指せ!暗黒大陸」
「目指せ!暗黒大陸」
どの時代、どの世界においても、フロンティアスピリッツ(開拓者精神)を持った人間というのはいるもので。
地球と最初に交流が始まった異世界「アルファリス」においても、そういった人間はおりました。
アルファリスには「暗黒大陸」と呼ばれる未開の土地があり、アルファリスの住民たちでも滅多に近寄ることはありませんでした。
ところが、地球から新しい科学技術がバンバン導入され、科学と魔法が融合するコトにより新魔法が誕生するようになると、暗黒大陸を開拓しようする冒険者も増えていきます。
そんな命知らずの若者が、ここにもひとり。いや、ふたり。
ひとりはラカノン・シーズリー。もうひとりは、ドゥップルという名でした。
ふたりとも孤児院育ちの子で、親にはとっくの昔に見捨てられています。けれども、ふたりとも悲しそうなそぶりは全く見せず、いつも未来に希望を抱きながら生き続けていました。
ドゥップルが15歳、ラカノンが14歳の年、ふたりは孤児院を抜け出します。
「いつまでも、こんなところにはいられないよね」
「どうせ、そろそろ孤児院を追い出される年齢だったんだもの」
そう言って、ふたりは固く手を握り合い、世界へと飛び出していきます。
アルファリスでは、このくらいの年齢で働くのは、そう珍しくありません。地球に比べても、子供たちは幼い年齢で社会へと出て行くのですから。
1年ほど世界を放浪した頃だったでしょうか?
ふたりは、偶然にも孤児院で一緒に暮らしていたグアリーレという少女と再会します。もっとも、この頃には名前が変わっていて「ラ・スースー」という名になっていましたけれど。ラ・スースーは魔女としての名で、みんなからは「死にたがりのラ・スースー」と呼ばれていました。
「グアリーレ!グアリーレじゃないか!」
そう呼ばれても、最初ラ・スースーは自分のコトだと気づきませんでした。それほど、長い年月、その名前で呼ばれたことがなかったからです。
記憶の糸をたぐり寄せ、ようやくそれが自分の名前だと思い出しました。
「あ!アタシ?あなた、誰だっけ?」
「ラカノンだよ。ラカノン・シーズリー。そして、こっちはドゥップル。ほら、孤児院で一緒だった。わずか2年くらいの間だったけど」
「ああ~!」と、ラ・スースーはポンッと手を叩いて答えます。
「思い出した?」
「思い出した!でも、アタシ、グアリーレじゃないの。もう名前が変わっちゃったの」
それから3人は、孤児院時代の思い出話に花を咲かせ、再会を喜び合いました。
「ラ・スースー、君はどこへ向かってるの?」と、ドゥップルがたずねます。
「別に。目的なんてないわ。ただ、お家にはいたくなくなって出てきただけ。特に行きたい場所なんてない。あえて、行きたい場所があるとしたら天国かな?」
「天国!?」と、ラカノンとドゥップルは同時に答えます。
「別に地獄でもいいけどね。この世界に未練はないもの。遠くに行けさえすれば、どこだっていいの…」
「そうか、じゃあ、ある意味で僕らと一緒だね。だったら、一緒に旅しない?」と、ラカノンがラ・スースーを誘います。
「そうだ!それがいい!きっと、これも何かの縁だ。3人一緒なら、どこへだっていけそうな気もするし。それこそ、天国でも地獄でも。あるいは、暗黒大陸にだって」と、ドゥップルも同意します。
「暗黒大陸!?そうね。そういうのもいいかもね。どうせ、もう生きていたってしょうがないと思ってたところだし。人類未到の地を目指してみるのも、おもしろそうかも」
「じゃあ、決まりだ!目指せ暗黒大陸!」
こうして、3人は一緒にパーティーを組み、暗黒大陸を目指して旅を始めたのです。
ホリゾンテくんが「ポックリ探偵社」で、セアラ・ヴァレットから人探しの依頼を受ける(※第74夜)5年ほど前の出来事になります。
*
暗黒大陸は、異世界アルファリスの中でも特に危険地帯とされていました。そんな場所に経験も浅い3人の若者が出向くのですから、フツーならば命はありません。
けれども、ラ・スースーは「光と闇、両方の魔法の使い手」でありましたし、本人は知らないとはいえラカノン・シーズリーはウンディーネの息子でした。なので、水泳はもちろんのこと身体能力は並の人間を凌駕しています。そんなラカノンに負けじと、ドゥップルも幼い頃から自分を鍛え続けていました。
そんな3人でしたから、そこら辺のヘッポコ冒険者なんかよりは、よっぽど生存確率が高かったのです。
それに、暗黒大陸と呼ばれているとはいえ、原住民は住んでいます。地球にあるアフリカだって、かつては同じように「暗黒大陸」呼ばれていた時代がありますし。
どんな理想郷だって、何も知らない外の国の人々から見たら「未知のフロンティア」に思えるものなのです。
…とはいえ、この時代の暗黒大陸が危険なコトには違いがありませんでした。凶悪な魔物が闊歩し、都会の人々が感染したことのないようなウイルスが存在もしていたのですから。
さて、今夜もそろそろお時間となったようです。
それでは、この続きは、また明日の夜に…




