~第82夜~「イナゴの王 vs ハエの王」
「イナゴの王 vs ハエの王」
ルビアルス連邦を裏から牛耳る魔王トマレットには「72の悪魔を使役するソロモンの指輪」がついていました。
ソロモンの指輪は持ち主が変わるたび、72の悪魔もメンツが入れ替わります。
今回のメンバーには、破壊を司る「アバドン」がいます。
アバドンは、天使の1人として数えられることもあり、別名「イナゴの王」とも呼ばれていました。
その名の通り、無数のイナゴを操り、肥沃な土地を荒野と変えてしまいます。
魔王トマレットは、自分の指示に従わない国に対して、アバドンを差し向け、農地にイナゴの大群を呼び寄せます。どんな作物もアッという間に食いつくされ、あとにはただ何もない大地が残るのみでした。
困ったのは攻撃された国だけではありません。
農作物が採れなくなることにより、世界的に食糧不足となり、穀物価格は急上昇します。もちろん、それによって得をする人もいるわけですが…(たとえば、穀物の先物取引をしているトレーダーとか)
ほとんどの人にとっては、迷惑以外の何ものでもありません。小麦やトウモロコシだけでなく、連鎖的にお肉や卵など他の食料品まで値上がりしてしまうのでした。
世界的に物価が上昇し、困った異世界住人たちは、別の世界へ助けを求めます。
いくつも新しい世界が登場し、ややこしくなってきたので、この辺で異世界にも名前をつけることにいたしましょう。
地球と一番最初に交流を始めた異世界を「アルファリス」と名づけます。
アルファリスの住民たちは、食糧難から地球の人々に助けを求めます。しばらくの間は、地球からの穀物輸入で当座をしのげそうですが、このまま来年も再来年もイナゴの大群を呼び寄せられてはたまりません。
かといって、魔王の軍門にくだるのもしゃくにさわります。
そこで、白羽の矢が立ったのが、「虫の世界」に住んでいるベルゼブブでした。
虫の世界は、最近になって地球と道がつながった6つの世界の内の1つですが、地球に生息している(あるいは生息していない虫も含めて)ありとあらゆるタイプの虫が住んでいます。
虫の世界をおさめているのが、悪魔ベルゼブブです。ベルゼブブは「ハエの王」と呼ばれ、文字通りハエの大群を使役する能力の持ち主。
いわば、「イナゴの王」に「ハエの王」をぶつけようというわけです。
「虫の世界」への入り口は、アフリカの中央にあります。
なので、異世界アルファリスから虫の世界へ出向こうと思ったら、1度地球を通過し(それも鳥取砂丘を通ってアフリカまで飛行機で移動し)さらに異世界間を移動する必要があるのです。
それでも「魔王とマレットに征服されるよりかはマシか!」と、アルファリスからベルゼブブのもとへと使節団が送られました。
使節団のリーダーには「ソイル・テルミヌス」という名の騎士が選ばれました。
実は、この男、「第60夜」「第61夜」で登場した「夜回りじいさんに稽古をつけてもらった若者」でありました。もはや、若者という年齢とは言えないかも知れませんが、あのあと修練を積み、立派な騎士となったのです。
そうして、世界を支配せんとするルビアルス連邦に対抗し、周辺諸国をまとめる騎士団のリーダーとなっていました。
苦難の末、どうにか虫の世界を支配する悪魔ベルゼブブに面会を許されたソイル・テルミヌスでありましたが、緊張でガチガチに固まってしまいます。
「貴様か、我に願いがあるという人間は!」
ベルゼブブは、虫の世界をまとめあげる頭領だけあって、威圧感が半端ありません。
それでも、ソイルはかつて夜回りじいさんに鍛えられた日々を思い起こし、ありったけの勇気を振り絞って交渉に応じました。
「ああ、そうだ!私こそが女王陛下に魂を捧げた騎士ソイル・テルミヌスであるぞ!」
(この悪魔ベルゼブブの面前で恐れることなく胆を発するとは、なかなか見所のある男じゃな)と、ベルゼブブは思いました。
が、ソイルは内心ビビりまくってたんですけどね。
「我に願い事とは見上げた勇気じゃ。だが、まさか、手ぶらで来たとは申すまいな?」と、ベルゼブブは交渉を開始します。イナゴの王アバドンと対決する代わりに、見返りを要求しているのです。
「無論、無料とは言わん。望みの物を言ってくれ。たとえば、一定量の穀物だとかブタ肉だとかチーズだとか。用意できる物は可能な限りそろえたいと思う」と、ソイルは地元の特産物を取り引きの材料に使用とします。
ところがベルゼブブは、満足しません。
「フン。食い物か。確かに人が生きて行くには食料も大切だろう。だが、我が欲しているのは、そのようなモノではない。金だとか食い物だとか、それ以上に高貴なモノを望む」
「それ以上に高貴なモノ?宝石や装飾品の類か?」
「フフフ…何をバカな。物質的なモノではない。どんなに金を積んでも手に入らないモノ。それは『人の魂』じゃ」
さて、そろそろ今夜も夜が明ける時間となりました。
それでは、この続きはまた明日の晩に…




