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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~いろいろな小話~
82/1003

~第81夜~「獣世界のコーンドッグ屋」

「獣世界のコーンドッグ屋」


 さて。第65夜にて、地球は新たに6つの世界との間に道が開かれたと申し上げましたが…

 今回は、そのお話の続きとまいりましょう。


 それまで開かれていた異世界都の道は、日本の鳥取砂丘にある1つだけでした。

 もちろん、出入り口が日本にあるからといって、異世界との交流を日本が独占していたわけではありません。

 それでも、パスポートを使って1度日本に入国し、それから異世界へ移動するとなると、2(ふた)手間かかってしまいます。必然的に、異世界への移動者は日本人が一番多くなってしまっていたのでした。

 よって、「武力によって日本を制圧して異世界利権を独占してしま方か?」などという危険な考えを持った国もあったくらいです。


 最初の異世界への道が開かれてから、15年近くの時が流れ、新たに6つの世界との交流が始まります。

 具体的には、「アメリカ」「中国」「オーストラリア」「アフリカ」「イタリア」「シンガポール」の6つ。それぞれ「獣の世界」「トカゲの世界」「植物の世界」「虫の世界」「鳥の世界」「魚の世界」とつながっております。


 今回お話するのは、アメリカと道がつながった「獣の世界」

 冒険心あふれるアメリカ人は、大挙して獣の世界を訪れます。その中には、冒険家や地質学者だけでなく、一般人も大勢含まれていました。

 たとえば、マイケル・サンダースというコーンドッグ屋の男もその1人。

 「コーンドッグ」というのは、アメリカではメジャーな食べ物。棒に差した大きなソーセージや魚肉ソーセージを、トウモロコシ粉の衣で包み込み、油で揚げたもの。これに、ケチャップやマスタードをつけて食べると最高に美味(うま)いんです!

 日本では「アメリカンドッグ」という名で親しまれており、コンビニなどで手軽に食すことが可能!

 値段も安く、100円程度で買えることから、オヤツ代わりにも利用されています。


 さて、獣の世界へと移住し、コーンドッグ屋を開店したマイケル・サンダースですが…

 最初はうまくいきませんでした。なにしろ、ガタイもよく、大食いで知られる獣の世界の住人たち。ちなみに、獣の世界の住人は「人型」に進化しており、2足歩行で歩き回り、もちろん服だってちゃんと着て生活しています。

 そこで、マイケルは、現地で採れる魔物の肉を使って、ジャンボサイズのコーンドッグを発明します。その大きさたるや、並のコーンドッグの軽く5倍以上!

 これが、バカうけの大ヒット商品に!途端に、マイケルの店の前に長蛇の列ができるようになります。

 なにしろ、魔物なんていくらでもいます。狩り放題の大漁旗!そこら辺の冒険者が、次から次へと売りに来るのです。むしろ、余ってしょうがないくらい。仕方がないので、そのほとんどは食べずに破棄されていたのでした。もったいないお話ですね~


 地球から運ばせた冷蔵庫や冷凍庫も大活躍。この時代には、すでに「魔法石」を使った家法具(家庭用魔法器具)も普及していたので、さしあたってエネルギーの心配もありません。

 しばらくしたら、獣の世界にも発電所が建設され、電力の心配もなくなるでしょう。あるいは、小型の太陽光発電設備を輸入するという手もあります。


 調子の乗ったマイケルは「マイケル・サンダース・ダイナー」というお店を開き、コーンドッグのみならず、食事全般を提供するようになりました。

 たとえば、地球からつれてきたニワトリに卵を産ませ、ハムエッグを作ったり。魔物の肉を利用した極厚のステーキを提供したり。

 それまで生食が主体であった獣の世界に「火を通した料理」を流行らせ、大人気となります。

 さらに調子に乗ったマイケル。2号店・3号店と手を広げていき、獣世界でも有数のレストランチェーンのオーナーへと成長してゆくのでした。


 さて、マイケル・サンダース・ダイナー1号店の常連客にライオネル・ウォーリーという男がおりまして。この男、ライオン系の血を引いており、体はプロレスラーか相撲取りかという立派な体格で、顔はもちろん獅子のごとき彫りの深いつくりをしております。

 最初はただの客に過ぎず、ブ厚いステーキをムシャムシャとほおばるばかりでありましたが、あまりの食いっぷりのよさからマイケルに見いだされ、店の看板タレントへと抜擢されます。


 ライオネル・ウォーリーがブ厚いステーキや巨大コーンドッグにかぶりつく写真が撮られ、街中、国中、世界中にポスターが張られます。

 おかげで、獣の世界のみならず、地球にも熱狂的なファンが生まれ、特に若い女性たちからは憧れの的となりました。

 やがて、ライオネルは、地球でプロレスラーとしてデビューし、興行のかたわら映画の撮影にも参加するようになり、役者としても華々しい活躍をするようになりましたとさ。


         *


「ふ~ん。地球の人たちは、獣の世界でもうまく立ち回ったのね。まったくタフというかなんというか…」と、シェヘラザード。

「古来、人間というのはそういう生き物にございます。新天地を求め旅に出かけ、フロンティアを開拓し、ビジネスの手を広げていく。そうやって、自分の子孫を増やし、繁栄を謳歌していったのです」と、天使である僕は答える。

「もしかしたら、細菌よりもウイルスよりも人間がこの世で一番しぶとくて繁殖力のある生物なのかもね」

「おそらく、その説は正解でしょう。やがては、宇宙へと手を広げ進出していく時代もやって来るのですから。おっと、そろそろ今夜もお時間となったようです。それでは、次の物語は、また明日の晩に」

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