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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~いろいろな小話~
81/1003

~第80夜~「読書家、無手勝流児」「神様、自分の星を競い合う」

「読書家、無手勝流児」


 無手勝流児(むてかつりゅうじ)は、読書家でした。

 休みの日はもちろんのこと、紙の本を片手に、暇さえあれば読書に没頭しています。テレビでくだらない番組を見たりはしません。そんな時間があるならば、1ページでもページをめくっていた方がマシ!

 そんな性格でした。


 15年ほど前、流児は地球から異世界へとやって来て、小さな建設会社を経営していましたが、時代の流れに乗って大成功!「無手勝建設」は、今や従業員数1000人を超える大企業へと成長を遂げています。

 こちらの世界でお嫁さんも見つけ、子供もできました。苦労したかいあってか、建物だけでなく「理想の家庭」を築き上げることにも成功したわけです。


 流児がひとり、部屋で読書に没頭していると、階下からふたりの子供たちがドタバタと走り回る音が聞こえてきます。けれども、本の世界に入り込んでいる流児には全く気になりません。

 一体、どんな本を読んでいるんでしょうか?ちょっと、のぞいてみましょう。


         *


「神様、自分の星を競い合う」


 世界には、様々な人や生命体が存在しています。

 緑あふれる星の外には、広大な宇宙が広がっており、宇宙の外にはさらに別の宇宙が。その宇宙の外にも、別の宇宙が…といった具合に、どこまでいってもきりがありません。

 そんな広い広い世界でしたから、神様なんてモノも、1人や2人ではありません。それこそ数え切れないほどの神様が宇宙のあちらこちらに生息していて、みんな「自分の星」を持っていました。


 ある時、1人の神様が自分の星を自慢し始めました。この神様は「炎の神」と呼ばれていて、当然ながら自分で作った星も「炎の星」でした。

 炎の星とはいっても、ちゃんと生命体が住んでいます。人型の二足歩行の生物もいて、文明だって持っています。

 それとは別に「氷の神」というのもいました。当然ながら、持っている星は「氷の星」です。氷の星にも二足歩行の生物がいて文明を持っています。


 炎の星では、ストーブや暖炉(だんろ)が流行っており、皆、「鍋焼きうどん」や「バーベキュー」など、アツアツの料理ばかり食べて暮らしています。

 逆に、氷の星では冷房や冷凍庫が主流で、食事も「冷やし中華」や「冷しゃぶ」デザートには決まって「かき氷」を食べるという徹底ぶり。

 そんなでしたから、2人の神様が自慢し合った星は、ケンカばかり。歴史上、仲のよい時期なんて一度もありませんでした。


 ある時、「どちらの星が強いか?」で、神様同士がケンカになります。ついに「実際に戦わせて強さを確認してみよう」というコトになりました。

 星の住民たちからしたら、まったくもって迷惑な話ですが、仕方がありません。神様同士が決めた契約です。チッポケな生物たちが逆らえるはずもありません。


 炎の星の代表選手は「火炎放射器」や「熱光線銃」で攻撃をし、氷の星のメンバーは「アイスシールド」で攻撃を防ぎながら「冷凍光線」で反撃します。

 そうこうしている内に、国民全員を巻き込みながら戦争へと発展していきました。


 そんな時、世界の片隅で、こっそりと駆け落ちする2人組がいました。

 炎の星の男性「フランマ」と氷の星の女性「ニファス」です。2人は、真逆の性質の星に住みながら、愛し合っていました。フランマは炎の星出身でありながら、かき氷や冷やし中華が大好きでしたし、ニファスの方も氷の星生まれながらバーベキューやステーキが大好物だったのです。


「昔は、こんなではなかったのにね」とニファスは言います。

「確かに、お互いの星がいがみ合ってはいたけれど、本気で殺し合いをするほどではなかった。お互いに切磋琢磨しながら、いい意味でライバル関係が築けていたのに…」と、フランマも同意します。

 お互いの星が科学力を発展させ、軍事力を拡大するにつれ、死傷者の数もうなぎ登りで増えていきました。

 仕方がなく、フランマとニファスは、2つの星の間にある衛星へと移住します。


 それから、何百年の時が過ぎたでしょうか?

 不毛な争いが続き、炎の星も氷の星も誰も住めない死の星へと変わってしまっていました。当然、どちらの星にも住民は住んでいません。

 2人の神様は、その結末を見て「やれやれ、今回は決着がつかんかったか」「次こそは!次こそは圧倒的な力で勝利してみせる!」と、どこかへ飛んでいってしまい、新しい星の創造に興味が移ってしまいます。


 残されたフランマとニファスの一族は、2つの星の間にある衛星で細々と暮らし続け、それなりの数の子孫を残して、今も生き続けているということです。


         *


「やれやれ。話を聞いていると、いつも悪事の原因は神様みたいに聞こえるわね」と、シェヘラザート。

「あくまで、これは無手勝流児が読んでいる本の中のお話ですからね。今回ばかりは風評被害かも知れませんよ」と、僕は答える。

「でも、それだって実話かも知れないんでしょ?」

「さて、どうでしょうね。その辺りは、ご想像におまかせします。おっと、今夜もそろそろお時間になったようですね。では、次のお話は、また明日の晩に」

 そう言って、僕は今夜の物語を終わらせた。

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