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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~いろいろな小話~
79/1003

~第78夜~「透明化(インビジブル)の魔法を使った犯罪」

透明化インビジブルの魔法を使った犯罪」


 さて、「(みき)陽炎(かげろう)組」による撮影は順調に進み、残りは編集作業のみ。あとは、完成・公開を待つばかり。


 地球に帰ってきた撮影班ですが…

 悪い奴というのは、どこの世界にもいるものです。撮影の際に使った透明化(インビジブル)の魔法を使い、悪用しようとする者が現れます。

 異世界の魔法使いに弟子入りし、透明化の魔法を覚えたある男が、デパートや宝石店で万引きをし始めたのです。

 なにしろ完全に姿を消してしまえる魔法です。防犯カメラにも影1つ映ることがなく、どんな高級商品でも盗み放題!

 困ったのはお店側。いつやって来るかさえわからず、全く対策が講じられないでいました。


「まったく。魔法ってのも困ったものですね。防犯レベルを上げようにも、姿が見えないんじゃ、どう対策すればいいのか見当もつきませんよ。これじゃあ、便利になったのか不便になったのかサッパリです」

 デパートにやって来た警備会社の人が、そんな風にグチをこぼしています。

「まあまあ、それが君らの仕事じゃないか。どうにか工夫して、これ以上商品を盗まれないようにしてくれたまえ」

 こちらは、デパートの店長さん。

 デパートの方は保険をかけているので、損をするのは保険会社ばかりですが。このままだと、保険料も値上がりしてしまうし、お店の評判も落ちていくので、どうにか万引き犯を逮捕したいところです。

 そこで導入したのが戦場でも使われている技術でした。

「今度のはバッチリですよ!少々、値は張りますが、透明化ごときでは防げない技術が使われております。なにしろ赤外線探知ですからね」

 警備会社の人も自信満々です。

 そう!赤外線センサーにより体温を察知し、映像とリンクさせて、画面に表示されていない体温のある人物を自動で感知するシステム!いちいち人が目視で確認せずとも、AIが自動判定してくれ、怪しい人物を導き出してくれます。

 あとは、警備員がその場におもむき、映像の指示に従って見えない犯罪者を逮捕するだけ。

 万引き犯は、物の見事に逮捕されました。

「クッソ~!なんで、わかったんだ?」と、犯人も悔し顔です。


 お話は、ここで終わりません。

 透明な万引き犯の余罪が暴かれ、宝石やら着物やら高級食材やら、盗んだ商品の総額は軽く数億円にのぼることがわかりました。

 犯人は、元「幹陽炎組」のスタッフで、幹陽炎監督も被害をこうむります。

「幹監督が低賃金でオレらをこきつかったからだ!だから、鬱憤晴らしをかねて、透明化の魔法を覚えて商品を盗みまくってやったんだ!」と証言したからです。

 おかげで、せっかく撮影の終わった映画は、公開延期。観客の目に触れるコトができるのは、いつになるやらわかりません。


 さらにお話は続きます。

 今回の事件で有名になった透明化の魔法は、日本中…いや、世界中に普及していき、やがては戦場でも使用されるようになります。

 たとえば、携帯型のロケットランチャーを携えた一般兵士が姿を消したまま敵基地に近づき、いきなりブッ放すといった具合。

 この戦法で、戦車やらヘリコプターやらが、突然爆発炎上する自体が多発。

 もちろん、戦場にも赤外線センサーは導入されていますが、全ての場所を常に見張り続けているだなんて不可能ですからね。それに、予算も莫大な金額が必要になります。

 こうして、戦場での常識は引っくり返され、戦争は新たなステージへと進んでいくのでした。


         *


「なるほどねぇ。魔法も便利なコトばかりじゃないのね。世の中が便利になればなるほど、困ったコトも増えるもの」と、シェヘラザード。

「その通り。『便利と危険、安全と不便は表裏一体』と申しますから。けれども、それによって新たな需要も生まれます。事実、セキュリティ会社や武器職人は、今回のコトで大儲け。悪いコトばかりではございません」と、僕はこたえる。


「それはそうと、最近、私の出番少なくない?全然顔を出さなくなっちゃったんだけど」

「え?そうでしたっけ?」

「そうよ。もう何十夜も登場してない気がするわ」

「そうですか。では、もうちょっと出番を増やしますか」

「そうしてちょうだい。私もお話を聞いてばかりじゃなくて、少しはしゃべりたいもの」

「わかりました」


「それともう1つ」と言って、シェヘラザードは、さらに注文をつけてきます。

「なんでしょう?」

「どんどん新しい登場人物ばっかり出てくるけど。前のお話はどうなったのかしら?中途半端なところで終わっている物語が随分とたまってきているようだけど」

「ああ~!そのコトですね。大丈夫!大丈夫です。いつかつながってくる時が来ますから。全ての物語とまでは申しませんが、重要なエピソードはいずれ必ず再び語られる時がやって来ます。それも、モノによって意外な形で」

「ほんとでしょうね?」

「ほんとうです。ほんとうですとも」と、僕は太鼓判を押す。

「ま、いいわ。じゃ、次のお話をしてちょうだい」

「わかりました。おっと、ここでちょうど夜明けの時間となったようです。では、次の物語は、また明日の晩とまいりましょう」

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