~第77夜~「異世界映画撮影」
「異世界映画撮影」
地球と異世界の間に道が通じるようになると、地球から映画やドラマの撮影部隊が送られるようになりました。もちろん、その逆に異世界から地球に撮影にやって来る人たちもいます。
最初の頃は、2つの世界の間に文明レベルの差がありましたが、時が経つに従って、その差は徐々に埋まっていき、最後にはほとんどなくなってしまいました。まるで、東ドイツと西ドイツの間にあった「ベルリンの壁」が取っ払われて、文化が融合していったように。
ただし、地域によって文化レベルに差はあります。地球においても同じ現象が起きていますよね?アフリカやアジアの一部地域では、いまだに昔ながらの農作業に頼っていたり、井戸もまともに掘ることができず、飲み水にも困っている国があったり。
なぜだか、そういう現象は何年経っても解消されません。地球異世界間に道が通じ、10年が過ぎ、20年が過ぎた今でもかわりません。
むしろ、地球に比べても地域格差は激しいくらい(逆を言えば、国や地域によってハッキリとした個性が表れているとも言えますが…)
そんな異世界でしたから、映画の撮影にはもっていこいでした。
ここで、新キャラを紹介しましょう!
映画監督の「幹陽炎」です。
幹陽炎監督は、暴力的な映画を撮るコトで有名でした。それに加えて、可能な限り細部にもこだわります。よって、いつも予算オーバーの嵐!
「ダメだ!ダメだ!そんな演技じゃ、なっちゃいねぇ!才能もやる気もないなら、やめちまえ!今すぐ冒険者にでも転向して、俳優家業は今日限りにしちまえ!」
ホラ、こんな感じです。
演技指導に熱が入るのはいいのですが、熱が入り過ぎて、役者の心がボロボロになり、精神的に追い詰められて鬱になってしまった者が数知れず。
その代わり、幹陽炎監督の作品には「名作」と呼ばれるモノも多いのでした。
「ム~、ちょっとそこの木が邪魔だな!誰か、電ノコでも持ってきて切り倒してくれんか」
「監督!ムチャ言わないでください。こんな大木。いや、たとえ大木でなくとも、勝手に自然の木を切り倒したりしたら、どんなバチが当たるかわかりゃしませんよ」
「けどなぁ。邪魔なんだよなぁ。この木。どうにかならんか?」
「じゃあ、魔法で消してしまったらどうですか?」
「お?そんなコトできんの?」
「はい。なんか『透明化の魔法』とかいうのがあって、人だけじゃなくて物でも動物でも見えなくしちゃえるらしいんです」
「おお~!いいね!いいね~!さすが異世界!地球よりも進んでるねぇ~」
「じゃ、さっそく透明化の魔法が使える魔法使いを呼んできます」
…と、こんな調子。魔法文明の導入によって、CGを使わずとも、映像業界もいろいろと便利になってきているのです。
「ハイ、そこ!そのドラゴン、もっとド派手に動いて!それじゃ、大根役者だよ。代わりのドラゴンなんていくらでもいるんだから、なんだったら今すぐ交代するか?」
「監督…代わりのドラゴンなんて、そうそう見つかりませんって。このドラゴンさんだって、わざわざ人間と友好的な種族の、その中でもさらにエンタメ業界に寛容な人…あ、いや龍を連れてきたんですから。どうも、すんませんねぇ。ドラゴンさん」と、間を取りなす助監督も大変です。
「あ、いえいえ。こういうの慣れてるんで」と、ドラゴンさんの方も腰が低い方様子。
「でもなぁ。役者なんてのは演技力が命だよ?友好的とか寛容とか、そういうのはどうでもいいから、いい演技してもらわなくちゃ。むしろ、少々気性が激しい方が役者としては一流とも言えるんだから」と、監督も食い下がります。
演技指導も画作りも非常に厳しい幹陽炎監督がどうにかこうにかやっていけているのも、仲介役の助監督がいるおかげでした。そうでなければ、幹陽炎組なんてとっくの昔に空中分解しています。
「縁の下の力持ち」と申しましょうか。こういった目立った活躍はせずとも地味に組織を支えている人が映画作りには必須なのです。いえ、映画だけでなく、どこの業界どこの企業でも同じコトが言えるでしょう。
とにもかくにも映画撮影は進んでいきます。とても順調は言えませんでしたが、それでも四苦八苦しながら前に進んでいき、作品としては非常にクオリティの高いモノになりそうです。
魔法の導入によって得られた最大の利点は、やはり「本物の魔法を使った迫力ある映像」に尽きるでしょう。
もちろん、時にはCGを使った方が迫力が増す場合もあるのですが。「リアリティーのあるウソ」というヤツですね。小説でも映像でもなんでも同じなのですが、「空想が現実を凌駕する」というコトはあり得るものです。
それでも、マニアに言わせれば「本物の魔法はやっぱりひと味違う!」というコトです。炎や雷の魔法もそうですが、特に「空中をビュンビュン飛び交うようなシーン」は、ワイヤーアクションやCGよりも、空中浮遊の魔法を使った方が自然な感じが出るそう。
…と、ここでそろそろお時間になったようです。
それでは、この続きは、また明日の夜に♪




