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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~いろいろな小話~
72/1003

~第71夜~「動物人間の誕生」「洗脳兵士の集団」

「動物人間の誕生」


 魔王トマレットが旗をあげ、ルビアルス連邦が国土を広げ始めてから10年は過ぎたでしょうか?

 さすがに戦いの勢いも落ちてきて、戦争は膠着(こうちゃく)状態に(おちい)っていました。別の言い方をすれば、「世界の一角に危険な国家が確実に定着した」というコトでもあります。


 連邦国内では、軍備を拡大しようと、様々な研究が成されています。

 この頃には地球から輸入された武器や兵器が、異世界でも当たり前のように使用されるようになっており、魔法と兵器の組み合わせも進んでいます。

 「火炎」や「稲妻」などの特殊能力を付加した魔法弾の普及も進み、魔力で動く戦車や戦闘機も多数投入されている時代。

 そんな中、特に力を入れているのが「遺伝子操作による新生物」の研究でした。


 戦争は大勢の犠牲者を出します。建物や自然を破壊し、貴重な文化が失われ、2度と取り戻せないコトだってあります。

 その一方で、文明レベル・科学レベルが飛躍的に向上するのも、また事実。

「人類の歴史上、戦争が最も科学を発展させた」という言葉もあるくらいですから。


 自ら魔王を名乗るだけあって、トマレットの軍には優秀な研究者が数多く在籍しており、まともな人間では決して手を出すことのできないような魔術・魔物をいくつも誕生させていました。

 後の世から見ると「暗黒の時代」とも思われたこの時期に、実は世界を変える発明・発見が数多く生まれています。その内の1つが「動物人間」

 人間と動物の遺伝子をかけ合わせ、新種族を誕生させるというもの。無論、地球ではこの手の研究は禁止されています。異世界の、それもルール無用の魔王が支配する国だからこそできた研究。

 人類が平和に暮らすためには「ルール」が必要です。ところが、人類が発展していくためには「ルールを排除」した方が良いのです。一切の法を排し、ルール無用の無法地帯で暮らさせた方が、文明レベルは上がりやすいもの。

 たとえば、自動車や飛行機の発明もそうでしたし、インターネット黎明期も完全な自由だったからこそ、素晴らしいモノやおもしろいコンテンツがたくさん生まれたのです。

 特許や法律などにがんじがらめになると、もうダメ!途端におもしろいモノは生まれなくなってしまいます。


 「動物人間」にもいろいろとタイプがいて…

 たとえば、インドの神話に登場するガネーシャのようなゾウ人間。エジプト神話のホルスのごとき鳥人間。それ以外にも、ブタやウシと人間のかけ合わせ。ハエ人間・アリ人間・ムカデ人間・キリン人間・ウマ人間・クマ人間などなど様々な動物人間が作られました。

 もちろん、フツーの人間と違い、身体能力は非常に高く。ウマ人間であれば抜群に足が速く、ゾウ人間は異様な耐久力の持ち主といった感じ。

 この手のハイブリッド生物が、次々と戦場へと投入されていくことになります。


         *


「洗脳兵士の集団」


 支配者に従順な優秀な兵士を作るにはどうすればいいと思いますか?

 大人の凝り固まった思考を変えようとするには無理があります。それよりも、もっといい方法があります。それは「子供の頃から国家に従うように教育する」こと。

 たとえば、決して母親に逆らうことのない「いい子ちゃん」だって、育て方によっては作り出すことが可能。

 それと同じように、物心つく前から(あるいは、生まれてすぐに)洗脳を開始すれば、「それが世界の真実だ」とすり込まれて大人になるはず。


 武力により制圧し、捕虜にした子供たちを。あるいは、「赤ちゃん工場」において若い女性を無理矢理に妊娠させ産ませた赤ん坊を。「ルビアルス連邦こそが絶対の正義であり、他国はただ蹂躙されるためだけに存在する愚かな存在なのだ」と教え込み、育成し続けたら?

 それこそが、何者にも負けない絶対の信念を持った狂信的な国民となるはず。そのような国民は、命を投げ出し、国のために戦ってくれるでしょう。


 事実、このような狂信的な兵士は数多く生み出されました。その一方で、国のやり方に疑問を持ち、国家システムを内部から崩壊させようとする者も誕生します。

 それは、地球の歴史上で「受験戦争時代に生み出された優秀な受験兵士が、結果的に社会システムそのものを変革してしまった」のと同じでした。あまりにも優秀過ぎるからこそ、「国が国民を洗脳するというやり方自体間違っている」と見抜いてしまったのです。

 皮肉な話ではありますが、ルビアルス連邦は、自らが生み出したエリート国民により崩壊し、国家が解体される事態にまで(おちい)ります。

 ただし、そこまで到達するまでには、20年以上の時を待たねばなりません。


 さて、今夜もそろそろお時間となったようですね。

 それでは、この次のお話は、また明日の晩といたしましょう。

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