~第70夜~「風氷将軍ヒュードロス(その2)」「炎雷帝ヴォルケノス」
風氷将軍と呼ばれたヒュードロスは、その名の通り非常に冷たい男でありました。
戦場では容赦なく敵を叩き潰し、逆らう相手には残忍な罰を与えます。最後まで抵抗を試みた敵を捕らえたあと、横一列に並ばせて、端から順番に首をはねていくといったほど。
その一方で、部下に対しては心のあたたかさも見せます。よく働く者には、充分な恩給を取らせ、ゆとりのある時期には休息もたっぷりと与えるのでした。
もちろん、そこは戦争屋でありますから、戦場におもむけば、まともな休息など取れない時期も長く続きます。だからこそ「ゆとりのある時期には、たっぷりと心も体も休ませる必要があるのだ」とヒュードロスは考えるのでした。
ある時、ヒュードロスがまだ若い指揮官であった頃です。魔王トマレットも進軍を開始したばかりであり、国土もまだ広くはありませんでした。
与えられた部下は、皆、経験不足の者たちばかり。初出陣という者も数多くいました。
「ヒュードロス様、戦場が怖くて怖くてたまりません」
そう、部下の1人が言い始めます。
すると、臆病な気持ちが伝染していき「オレも」「オレも」と皆が口にします。
「このまま士気の上がらぬまま戦っても、勝てはしないな…」と、判断したヒュードロス。部下全員に向けて、こう言い放ちました。
「戦場は怖い!特に初陣は!ワシも怖かった!」
皆はざわめきます。
「え?ヒュードロス様でも怖いのか?」「じゃあ、まして我々など…」「こりゃ、生きては帰れないな」などと恐れを口にする部下たち。
「だがな。いや、だからこそというべきか。死を受け入れるべきなのだ」
シ~ン…と静まりかえる一同。
ヒュードロスは続けます。
「戦場では、恐れを抱いた者から順番に死んでいく。逆に死を受け入れ、覚悟を決めた者というのはそうそう死にはせん!」
すると、「なるほど」「確かにな」と皆も納得し始めます。
その後も「自分がいかに臆病であったのか?」「そのたびに勇気を奮い起こし、どうにかこうにかギリギリのところで死をまぬがれた話」などを語って聞かせ、臆病風などどこへやら吹き飛ばし、部隊は勇猛果敢に戦ったということです。
そこかいあってか、この時の戦いは死傷者も少なく、他の部隊と比べても大きな戦果をあげることができたのでした。
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「炎雷帝ヴォルケノス」
風氷将軍ヒュードロスと並び称される者として、「炎雷帝ヴォルケノス」という男がおりました。
ふたりはたいそう仲がよく、同時に反目し合っているという、ちょいと複雑な関係でありました。俗に言う「腐れ縁」と申しましょうか。お互いの地位を狙い切磋琢磨するライバルであり、戦友でもあったのです。
ヴォルケノスは、元々、一国の主でありましたが、魔王トマレットが攻め込んできた時に、あまりの強さに即座に頭を下げ、軍門にくだったという伝説があります。
性格は豪快な男でありましたが、同時に「相手の能力を見抜き、認める」という素直さも持っておりました。その性格でなければ、今頃、トマレットの強大な魔力の前に命はなかったかも知れません。
おかげで、ヴォルケノスは、元々治めていた土地をそのまま任されるコトとなります(「ルビアルス連邦」は多数の国家が集まったような国でしたので、地方ごとに1つの国のようでもありました)
風氷将軍ヒュードロスは、普段は冷静沈着であり、滅多なことでは感情に左右されて判断を誤ったりはしません(無論、戦場においては、攻めるべき時には勇猛果敢に戦います)
対して、炎雷帝ヴォルケノスはというと、常に感情をたかぶらせ、感情に任せてとにかく突っ込む!突撃精神の持ち主!
対照的なふたりが補佐したおかげで、トマレットも長く国家を運営し続けられたのかも知れません。
しかし、それゆえに…感情的な性格ゆえに、ヴォルケノスは敵の計略に引っかかりやすく、何度も敵に捕らえられそうになったり、命を落としそうになったりもします。
「三国志」で言えば、張飛益徳のようなタイプ。なので、大食らいの大酒飲みで女性関係もド派手!これまた、女性でも数々の問題を起こし、ハニートラップにも引っかかりやすいのでした。
攻撃方法においても、ふたりは対照的。名前の通り、ヴォルケノスは雷と炎を操り、ヒュードロスは風と氷の魔法を得意とします。
魔法だけではありません。ふたりとも武力が高く、戦場においてバッタバッタと敵を薙ぎ倒します。
どちらかといえば、ヒュードロスの方は飄々とした感じで、スピードに体重を乗せて剣や槍で攻撃し、ヴォルケノスの方は得意の斧で斬り倒すタイプ。いえ、「斬る」というよりも「割る」といった方が近いかも?重装備の鉄兜の上からでも得物の斧で叩き割り、たとえ防具を破壊できずとも、中身の頭はスイカ割りのようにグシャグシャにシェイクされるのでした。
魔王トマレットの配下には、他にもいろいろとおもしろい人材がいるのですが…
それは、またの機会にいたしましょう。
ちょうどお時間となりましたので、次のお話は、また明日の晩に♪




