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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~箱の中の世界~
719/1003

~第718夜~「貧しき国のミラーグレ(その3)」

 “大きな国”と“小さな国”との間で戦争がありました。

 最初、誰もが大きな国が勝つと信じて疑いませんでした。それ程に戦力の絶対的な差があったからです。


 ところが、無限に武器や兵器を生み出すことのできる能力者ルイナの登場により、戦局は一変します。

 これまで防戦一方だった小さな国は、次から次へと強力な兵器を投入し、大きな国を圧倒していきます。

 ついに、立場は逆転し、小さな国が大きな国を併合してしまいました。


 戦争が終わり、平和が訪れ、しばらくの時が過ぎました。

 少年ルイナも自分の役割から解放され、ホッと一息ついています。同時に、頭の中をアレやコレやと様々な考えが駆け巡りるのでした。


「ほんとにこれでよかったのだろうか?」と、ルイナは1人部屋の中で悩みます。


 今や小さな国は、大きな国を属国として、元の住民たちを奴隷同然に扱うようになってしまったからです。


「でも、こうしなければ、やられていたのは僕らの方だった。」


 加えて、両国は大勢の死傷者を出しました。

 そのコトも、ルイナの心を痛める一因となっていました。


「僕は、この世界に存在してはいけない人間なのかもしれない。戦争が終わった今、身をひそめひっそりと暮らすべきなのだろう…」


 ところが、世界はそれを許してはくれませんでした。

 無限に武器や兵器を生み出せる能力は、それだけ便利な力だったからです。多くの国や組織がルイナを欲しがりました。それゆえに命を狙われることも数多くありました。


「あんな奴、いなくなってしまえばいいんだ!」


「人を傷つける物をいくらでも生み出せるなんて、気持ち悪い~!」


「最悪だな。戦争の元凶。悪魔の化身。この世から排除すべし!」

 そんな風にウワサする人があとを絶ちません。


 一方で、ルイナの能力を活用しようと、大金を払って身を守ってくれる援助者も大勢いました。

 よくも悪くも、今やルイナは世界の命運を握る存在となったのです。


         *


 一方、ミラーグレの方はというと…

 相変わらず、人々のために料理や食材を生み出し続けていました。


「ああ~あ…アタシ、なんでこんなコトやってるんだろう?もう疲れちゃった…」


 戦争が終わり、ルイナとは違って平和利用できるミラーグレの能力は、みんなからありがたがれ、彼女は尊敬され愛される存在となっています。

 代わりにミラーグレ自身は、朝から晩まで働きづめ。なにしろ国中の人たちのため、食材を生み出し続けなければならないのですから。


 大きなトラックが何百台何千台と、ひっきりなしにミラーグレの家を訪れては、食料品を積み込み走り去っていきます。

 トラックの吐き出す排気ガスのせいで、ミラーグレは気持ちが悪くなってしまうくらいに。


 食べ物は毎日必要になります。人はいくらでもいるのです。

 ミラーグレの能力は“望みの料理や食材をいくらでも生み出す”というものであって、瞬間移動で好きな場所に運べるわけではありません。

 目の前に生み出すだけ。ある程度保存のきく食べ物もありますが、食糧はいずれ腐ってしまうので、どんどん作り出さなければなりません。


「ああ~あ…この作業、一体いつになったら終わるのかしら?もしかしたら、アタシの残りの人生ずっとこんなかもしれないわ」

 ミラーグレは、そっとつぶやきました。


 人々のために働くこと自体、彼女は嫌いではありませんでした。むしろ、好きなくらい。けれども、限度というものがあります。

 ミラーグレの家族は彼女のおかげで大金持ちになって、世界中好きな国を観光して回っているというのに、当の本人は同じ場所に縛りつけられ、身動きもできずに同じ作業の繰り返し。


「きっと、巨人アトラスって、こんな気持ちだったのね…」


 ギリシャ神話に登場する巨人アトラスは、天を支えるため、永遠にたった1人で苦労し続けなければならないのです。

 今のミラーグレは、アトラスと同じでした。


         *


 そんな日々にも、ある日、終わりがやって来ます。


「もう~ダメ!もう我慢の限界だわ!」

 そう叫ぶと、ミラーグレは自分に与えられた役割を放り出してしまいました。

 そうして、荷物をまとめると旅に出ようとします。


 当然、周りの人たちや政府から派遣された役人たちは、その行為を止めようとしますが、ミラーグレはどうにも言うことを聞きません。

 そこで「旅は許可するけれども、仕事自体は続けて欲しい」という妥協案が提示されました。


「いいわ。それで手を打ちましょう」


 こうして、ミラーグレは自由に旅することができるようになり、代わりにお供の者たちがついて回り、1日に何度か仕事として食糧を生み出すことになりました。


 すると、配送用のトラックが常に旅先について回るようになります。

 ミラーグレの行く先々に、毎日毎日何百台何千台ものトラックがやって来て、大量の食料品を積んでは去っていくのです。


 もちろんこの行為により、道路が混雑したり、迷惑する人たちが大勢出てきました。同時に、ミラーグレの旅先では物が売れ、経済が活性化します。

 何ごともメリットとデメリットは表裏一体。悪いコトがあれば、よいコトもあり。よいコトが起れば悪いコトも起るのです。


 さて、この続きは、また明日の夜に語るといたしましょう。

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