~第717夜~「貧しき国のミラーグレ(その2)」
貧乏な家に生まれたミラーグレは、神様のごとき存在であるプリオとポステリから、不思議な力をさずかりました。
それは“無限に食べ物を生み出す能力”
プリオとポステリが去ったあと、さっそくミラーグレは能力を使ってみます。
すると、何もない空中からコロンとパンが1つ転がり落ちてきました。
試しにパンの端をかじってみるミラーグレ。
「おいしい!」
次から次へとパンを出しては、ミラーグレは現われたパンをほおばっていきます。
お腹がいっぱいになると、階下へと降りていき、家族に報告をしました。
「見て!見て!アタシ、こんな力を手に入れたの!」
父親や母親、祖父や祖母、兄弟たちの前で特殊な能力を披露するミラーグレ。
家族はみんなボロボロの服を着ています。
空中から現われたパンに手を伸ばし、おそるおそる口にする母親。
「おいしい!」
母親はミラーグレと同じ反応をします。
兄弟たちも我先にと争って、パンを取りました。
「ほんとだ!おねーちゃん、これおいしいよ!」
「すげえぞ、ミラーグレ!お前は救世主になったんだ!」
その後、ミラーグレが試してみると、空中から出せるのはパンだけではないとわかりました。
大きな鍋に具いっぱいのスープを生み出すこともできますし、ジャガイモやニンジンなど料理する前の食材を出してみせることもできます。
およそ“食べ物”に分類される物ならば、ミルクだろうがチーズだろうがソーセージだろうが、なんだって出せるのです。
もちろん、完成したパスタ料理や七面鳥の丸焼き、ウェディングケーキでも!
おかげで一家は、食べる物に困ることはなくなりました。
*
空中から食べ物を生み出すミラーグレのウワサは、瞬く間に街中へと広がっていきました。
みんな、充分な食糧をわけてもらうと、ホクホク顔で帰っていきます。
ミラーグレは誰1人として差別することなく、いくらでも食べる物を出してやったからです。
代わりに、衣服や日用品などをお礼代わりに置いていく人もいます。
おかげでミラーグレの家族は、アッという間に物に困らなくなり、やがてお金持ちになっていきました。
人々はミラーグレのことを“聖女”とあがめ、大切に扱います。
隣の大きな国が攻めてきている戦時中です。聖女を守ろうと、人々が立ち上がり、警備隊が組織されました。
ミラーグレ一家は、街でも一番のお屋敷に住まわされ、周りを屈強な兵士たちが24時間体制で守っています。
街だけではありません。
国中がミラーグレを聖女とあがめ、大切に扱い、資金援助するようになりました。
パンでもジャガイモでも完成した料理でも、いくらでも生み出せてしまうのですから。
「もはや、農作物を育てたり、ウシやブタを飼う必要もないんじゃないか?」
「魚を捕りに行く必要もないしな」
「それどころか、料理人だっていらなくなる!」
などといった声を上げる人たちまで現われる始末。
もちろん、そんなミラーグレの話は、国内にとどまるはずもありません。
隣の大きな国にもウワサは広がっていき、「あの聖女とやらをなんとしても捕らえるのだ!これで戦争が変わるぞ!」と、隣国の攻撃はさらに激化しました。
*
「さて、と。じゃあ、作戦の第2段階といきますか」
別の世界から様子を眺めていた少年プリオが言いました。
「そうね。そろそろ頃合いでしょう。いよいよ、ここからが本番よ」
少女ポステリも言いました。
2人はミラーグレの住む世界へと降りていき、同じ国に住む別のターゲットを選び出します。
今度は、孤児院に暮らす1人の少年でした。
少年の名は“ルイナ”
ルイナに与えられたのは“無限に武器や兵器を生み出す能力”でした。
「君は選ばれた」と、プリオ。
「この国を守る力は与えたわ。あとは自由に使いなさい」と、ポステリ。
「国や世界を守るため、敵と戦うために使うも自由」
「黙って指をくわえたまま何もしないのも自由」
「あとは自分で選択するがいい」
そう言って、プリオとポステリは元いた世界へと帰っていきました。
ポツ~ンと、あとに1人残されたルイナ少年。
試しに与えられた力を使ってみます。すると、何もない空中から拳銃が一丁現われました。
誰もいない森の中で撃ってみると、それは本物の拳銃でした。
試しに手榴弾を生み出してみます。やはり本物でした。
サーベルも、機関銃も、高射砲も、みんなみんな本物でした。
隣の大きな国は戦力を増強し、今にもルイナの住んでいる街へと迫ってこようとしています。
彼は勇気を振りしぼり、決心しました。
「この力のコト。みんなに伝えよう!」
初めは孤児院に住む他の子たちに。次に周囲の大人たちに。
警察に、機動隊に、みんなルイナの能力について知ります。そうして、望むだけの武器や兵器を出してもらいました。
人を傷つける道具はいくらでも空中から湧いてきます。
けれども、実際に闘うのは生身の人間。戦場に出るのを迷う人も大勢いましたが、最後にはその多くが武器を手に戦争に参加しました。
自分たちの国を守るために!
さて、この続きは、また明日の夜に語るといたしましょう。




