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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~箱の中の世界~
720/1003

~第719夜~「貧しき国のミラーグレ(その4)」

 ある程度の自由を得たミラーグレは、国内を旅しながら、毎日人々のために食糧を生み出します。

 ここに来て、みんな気がつきました。


「あの少女のおかげで食糧問題は解決したと思っていたけれども、そうじゃなかったんだ…」


「1人の人に全責任を負わせるのは(こく)だよなぁ」


「そもそも、ミラーグレがいなくなったら、どうするんだ?元の生活に逆戻りだ。結局、肉も野菜も作り続けなければならないし、料理人だって必要なんだ」


 1人の人間が特殊能力を手に入れて、無限に食糧を生み出せるようになったとして…

 それで社会問題が即解決するわけではないと人々は気づいたのです。


 たとえば、世の中に何百人何千人と同じ能力者が現われ、今後も定期的に生まれる続けるのであれば、お話は別です。

 けれども、食糧を無限に生み出せるのはミラーグレ1人きり。あとは、武器や兵器を生み出せるルイナだけ。

 しょせん彼らは“例外”なのです。


 その後も、ポツリポツリと世界各国で特殊な能力者は生まれていきます。

 何もないところから物を生み出したり。大量の物体を瞬間移動させてみたり。触れるだけで人の心や傷を()やす能力者など。

 ただし、みんな1人だけ。例外に過ぎません。


         *


 別の世界から、その様子を見ていたプリオとポステリ。


「これまで創造した世界では、1人に全権を与え過ぎた」と、プリオ。


「今回は、私たちの力をいろんな人間に分散して与えてみたのよね」

 ポステリも言います。


「結構いい線いってるんじゃないかな?」


「これまでのところはね。これからどうなるかしら?」


 1人の人間に神のごとき能力を全てを与えてしまうと、最終的に自然消滅を望むか、戦争を起こすことがわかってきました。

 そこでプリオとポステリは、能力を限定し、別々の人間に分散して与えるコトに決めたのです。

 これはうまくいきました。もちろん、異質な力を与えられた人間が迫害されたり殺害されたりすることもありましたが、大多数の特殊能力者は人間たちからあがめられその力を有効活用しています。


「思ったよりも平和にやってるわね」と、ポステリ。


「確かに。一部の人間だけに特殊な力を与えると、いさかいを起こすかと思っていたけれど…今のところ、そういった事例は少ない」と、プリオも同意します。


「このままじゃツマラナイ?」


「別に。人間たちが選択したなら、それはそれで1つの進化だと思うね。むしろ、興味深く見させてもらっているよ」


「そう。なら、いいんだけど」


「ポステリは不満かい?」


「そうね。もうちょっとドラマチックな方が私(ごの)みかしら」


「なるほど。では、何か新しい要素を加えるかい?世界に災厄を起こすとか」


 プリオの質問にポステリはしばらく考えてから答えました。


「いいえ。このまま、もうしばらく見守ってみましょう」


「オッケー。じゃあ、続きを見てみようか」


 そう言って、2人は再びミラーグレたちの住む世界に目を落としました。


         *


 特殊な能力者が例外であり、彼らが存在していたとしても社会システムそのものを変革できないとわかった人々は、ミラーグレを解放してくれました。


 相変わらずその能力を活用し、行く先々で食料品を大量に生み出すミラーグレでありましたが、以前のように何百台ものトラックがついて回ることはなくなりました。

 外国にも自由に行くことができるようになり、ミラーグレは決心します。


「そうだ!この力を自分の国だけに使うのは不公平だわ!世界には、もっと食べ物に困っている人たちがたくさんいて、そういう国に手助けに行きましょう!」


 さっそくミラーグレは長期の旅の準備を整え、パスポートを取り、貧しき国へと出発しました。


 世界には、その日に食べる物どころか、飲み水にさえ困っている人たちもいるのです。

 この時代、経済格差は広がり、いくらでもお金を持っている人がいたかと思えば、国全体が貧困にあえいでいる地域もあります。

 そういった国々を訪れ、空中から食べきれないほどの料理や食材を生み出すミラーグレ。

 みんな、大変に感謝してくれました。


「おねえちゃん、ありがとう!」


「僕ら、もうちょっとで飢え死にするところだったんだ。これで、しばらくの間は食いつなげるよ!」


「おいしい…食べ物に困らないって、ほんとに幸せ」

 などと言ってくれました。最初は…


 ところが、食べ物が充分にある生活に慣れてしまうと、誰もが以前の生活に逆戻りするのを嫌がるようになります。


「もう、どこにも行かないで、ずっと私たちのためにご飯を出してよ」


「ズルイよ!他の国の人たちは、食べるのに困っていないのに。僕らだけ、こんな風な生活で!」


「私たちにも、その能力をちょうだい!」

 などと言うようになるのです。


 世界には困っている人がいくらでもいます。

 みんな、別の地域に住んでいます。

 それらの人たちを全員救うだなんて、土台不可能なお話でした。


「困ったわ…アタシ1人の力じゃ、これ以上はどうしようもない。神様は、どうしてアタシ1人にこんな力をお与えになったのだろう?」

 ミラーグレはそんな風に考え、迷い、悩むようになっていきました。


 この続きは、また明日の夜に語るといたしましょう。

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