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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~箱の中の世界~
707/1003

~第706夜~「箱の中の世界(その6)」

 ある時、プリオとポステリは温泉にやって来ました。

 いかな電子の世界といえども、ゆっくりとあたたかいお湯につかると、気持ちがよいものです。


 温泉宿には、他にお客さんはおらず、2人だけの貸し切り状態。

 脱衣所で服を脱ぐ途中で、プリオは気づきます。


「これって、マズいんじゃないの?」


「何が?」と、ポステリ。


「だって、男女が一緒のお風呂に入るだなんて」


「そうかしら?」


 この世界には、もはや男女の区別なんてありません。

 いつでも好きな姿になれる人類ですから、男になったり女になったりも自由自在。もはや、性別という概念さえ失われているとも言えます。

 ただ、自分の好みでずっと男性の姿をやっている人も、女性の姿をやっている人もいるだけで。


「遠い昔に、温泉という文化があった時代。まだ、人々が自分の肉体を持っていて、毎日のようにお風呂に入っていた時代。男女は別々に入っていたらしいよ」と、プリオが言いました。


「けど、“混浴”っていう制度もあったらしいわよ。日本という国の江戸という時代くらいまでは」と、ポステリ。


「それは、僕も聞いたことがある。実際には、“バクフ”と呼ばれる当時の政府は混浴を禁じていたらしいけどね」


「だけど、民衆はそんなルール構わず、男女一緒に入っていたんでしょ?」


「まあね。ルールは絶対じゃない。その時代の文化や民衆の意見によっていくらでも曲げられてしまう。江戸時代には肉を食べることも禁じられていたらしいけど、“サクラ”だとか“ボタン”だとか“モミジ”だとか植物の名前をつけて肉を売って食べられていたらしい」


「“有名無実”ってヤツね。ま、いいわ。じゃ、ここはひとつ、古代の文化にのっとって、同性同士で入りましょう。私が男になる?それとも、あなたが女?」


「じゃ、僕が女で」

 そう答えると、さっきまで少年の姿をしていたプリオは、ポステリと同じくらいの年齢の少女の姿に変わっていました。


「これでよし!っと」


「そうね。じゃ、入りましょう」

 そう言って、2人は服を脱ぐと、温泉に向かいました。


         *


 大自然に囲まれた岩風呂。

 辺りには雪が積もっていて、空からはチラチラと雪が舞い降りてきています。


「ふぅ…あったかくて気持ちいい~」と、肩までお湯につかってポステリが言いました。


「ほんとに。古代人は、毎日こんなコトをやってたんだね」と、並んで岩風呂に入ったままプリオも答えます。


「毎日じゃなかったみたいよ?温泉なんて来るのはたまにで、いつもは家のお風呂に入ってたんだって」


「けど、毎日お湯につかってたんでしょ?」


「それだって毎日だと面倒になっちゃわない?こういうのは、たまにだから気持ちいいのよ」


「かもね。なんだって同じさ。どんなに楽しいコトも、毎日だと飽きてしまう。現代人だって同じだろ?」


「そうね。飽きないように逃げて逃げて、毎日違うコトをやって暮らしている。そうしないと、消えてしまいたくなるから」


「昔の人たちは、消えてしまいたくなったりはしなかったのかな?」


「そんなの昔の人だって同じでしょ。ただ、忙し過ぎて、そんなコト考えているヒマもない人はいただろうけど」


「そうだよね。ヒマになればなるほど、生きていくのがイヤになる。何かに一生懸命でいる間は、そんなコト忘れてしまえるのに…」


 その言葉を聞くと、ポステリはポチャンとお湯の中に頭までつかり、その辺りを平泳ぎの形でスイ~とひと泳ぎしてから答えました。


「“究極の退屈しのぎ”その方法を見つけたら、私たちは永遠に生きられるとは思わない?決して飽きてしまわない究極の遊び」


「そりゃ、そんなモノがあればね。けど、どんな遊びも最後には結局飽きてしまう。今までだって、ずっとそうだったじゃないか?」


「私、調べてみたの。遠い昔に、私たちと同じような目にあって、同じようなコトを考えた人がいなかったか…を」


「で、見つかったの?そんな人」


「ええ、見つかったわ。その解決方法も」


 ポステリの言葉にちょっと驚いてから、プリオはたずねます。


「解決方法?どんな?」


「それはね…戦争を起こすの」


「戦争?」


「そう。それも、私たちがじゃないわ。別の種族を作って、彼らを永遠に戦わせるの。泥沼の戦争よ」


「フム…なるほど。それは、おもしろいかも」と、プリオも賛同します。


「たとえば、世界に“生成AI”というモノが生まれた時、結構な論争になったらしいのね。その頃は、まだルールが厳しかったから」


 生成AIは、この世界でもいまだに利用され続けています。プリオやポステリが自由自在に物を生み出したり姿を変えたりできるのも、いわば生成AIの一種。

 ただ、より高度な技術へと進化し、そういう名前で呼ばれなくなっただけで。


「どんな論争?」と、たずねるプリオ。


「生成AIは、人間が生み出したモノを学習して、新しいモノを生み出す技術。たとえば、文章とか絵とか音楽とか…膨大に学習し、1度データをシャッフルして、作り直す」


「それのどこが問題?」


「学習元の絵や文章を作った人たちが激怒したの。『オレたちの作品を勝手に使うな!』って」


「へ~、昔の人たちは細かいコトを気にしてたんだね」


「その頃は、まだお金が流通してたから。お金は人を狂わせるの」


 さて、この続きは、また明日の夜に語るといたしましょう。

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