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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~いろいろな小話~
69/1003

~第68夜~「トマレット・ロックモンコウの野望(その2)」「赤ちゃん工場」「魔王の杞憂」


 魔王となったトマレットは、周辺諸国に攻め入り、ルビアルス連邦の属国としていきました。素直に属国になればよし。そうでない国に対しては、宇宙から無数の隕石を降らせたり、地獄から業火を呼び出して街や森を焼き尽くしたりしていきます。

「自分の手に入らないものは、全て滅ぼしてしまえ」というわけです。

 そうして、多くの人が難民となり、逃げ遅れた人々は奴隷となります。


 魔王トマレットの進撃は止まりません。

 これまでの鬱憤を晴らすかのごとく、身につけた魔法の限りを尽くし、周辺地域に攻撃をかけます。

 当然、攻められた国の人々も反撃はするのですが、反撃すればするほど、さらに激しい攻撃が返されるのでした。

 よって、素直に降伏した方が被害は少なくて済みます。被害は少なくて済むのですが、そこは人間にもプライドというものがあります。アッサリと白旗をあげ、魔王の軍門にくだるなど人としての心が許しません。

 結果、被害はさらに拡大し、大地は焦土と化していきました。


 敗北した国の住民たちは連れ去られ、奴隷として売り払われてしまいました。そこで暗躍したのが奴隷商人です。

 世の中には、悪い人間というのはいるもので。魔王だろうが、戦争だろうが関係なく、金儲けの臭いがするところに現れては一財産を築いてしまう輩というのが存在するのです。


 え?「そんなコト、人間としての心があれば、できるはずがない!」って?

 いえいえ、それができるのでございますよ。

 そもそも、天界に住んでいる神様自身が、そんな人ですからね。今回の戦争だって、天界から悠長に眺めながら、手を叩いて喜んでいるくらいです。そんな神様が作り出した人間ですよ?

 どんなに進化しようとも、本質の部分では変わりはしません。

 そりゃ、一定数の人間たちは、戦争をやめさせたり、傷ついた人たちの救援に向かったりするでしょうけどね。

 多くの人々は知らん顔を決め込むか、この期に乗じて大儲けしてやろうと企んでいるのです。

 この時代に生まれた奴隷は、数十万人とも数百万人とも言われています。そこからまた数々の物語が生まれたのですが、そのお話はまた別の機会に。


         *


「赤ちゃん工場」


 ルビアルス連邦の率いる軍隊は、容赦なく他国へと攻め入ります。

 反抗した国々から大量の難民が生まれますが、上手く逃げ延びた者はまだいい方でした。

 運悪く捕らえられでもしたら、悲惨な運命が待ち受けています。大勢が奴隷として売り払われましたが、そうでない者たちも存在しています。

 役に立たない老人は、その場で殺され、若い男たちは拷問や洗脳機器にかけられます。そうして、新たな「モノを考えぬ兵士」として軍の一部に吸収されるのでした。


 物心つかぬ小さな子供たちは、エリート兵として育て上げられます。

 たとえば、捕まったその場で親や兄弟を殺させ、優秀な兵士としての第一試験を受けさせられるのでした。

 自分の命助かりたさに、自らの肉親を手にかけることのできた子供は、合格。そうでなければ、他の肉親に殺されて命を落とすだけ。いずれにしろ、地獄が待っているのです。


 また、若い女性は「赤ちゃん工場」へと送られます。

 赤ちゃん工場というのは、女性を無理矢理に妊娠させ、次の世代の赤ん坊を産ませる行為。まさに「産む機械」というわけです。

 4人以上の赤ん坊を産むことのできた妊婦は「エース」として表彰され、豪華な食事や快適な住居などが提供される仕組み。

 魔王トマレットがルビアルス連邦を支配していた時代、2桁の赤ん坊を産んだ女性もいるというウワサまであるくらい。


 逆に、1人も産むことができない者は、過酷な労働が待っています。炊事・洗濯などの家事に従事させられ(それも、数十人とか数百人の面倒を見なければならない)睡眠時間も削られ、まともな食事も与えられない毎日。

 それでも「死ぬよりかはマシか」「いつか勇者様が、この地獄のような場所から巣くってくれるに違いない!」と、人々はがんばって生きるのでした。


         *


「魔王の杞憂」


 魔王となり、周辺諸国を次々と併合していくトマレットでしたが、心の中は常に陰鬱でした。

 「いつ寝首をかかれるかも知れない」と、いつもビクビクして暮らし、夜もまともに眠ることができません。たまにうつらうつらと居眠りをしたかと思うと、バッと飛び起きるという毎日。おそらく1日の睡眠時間は合計しても2~3時間に過ぎなかったでしょう。

 そんなでしたから、目の下にはいつも黒いクマができており、まるで死人のようでした。


 トマレットは回想します。

 魔法総合学校マジック・アカデミーを卒業した後、国家所属の研究所から逃げ出した日のコトを。


(思えば、あの日からずっと眠れなくなった…) 


 それでも、あの頃は、まだマシだった。天才と呼ばれたスズキイチローを凡人であるこの私が超えるには、懸命に努力するしかなかった。禁じられた魔術の数々に手を出し、地球へと渡り「72の悪魔を使役するソロモンの指輪」を手に入れるまでは、まだよかった。

 人間、目的がある内はまだいい。かなえられぬ夢を見、前を見据えて進んでいる内は…

 それが、今はどうだ?強大な力を手に入れて、今度は「世界征服」か?そんなコトが実現可能なのだろうか?

 魔王トマレットは、そんな風に思います。

 

 そろそろ、今夜もお時間になったようです、

 それでは、この続きは、また明日の晩に。

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