~第64夜~「夜脇ケンジと美野先アカリ(その2)」「太古の神々の戦い」「世界には無数の神様がいる」
一方、美野先アカリの方はというと…
夜脇青年を小学生のイジメから救った時に高校生だったアカリも、無事に高校を卒業し、アパレルメーカーに就職していました。仕事の傍ら、平日の夜や休日は劇団で汗を流す日々を送っています。
アカリの夢は「役者になるコト」だったのです。
例の一件で知り合った夜脇青年は、アカリが舞台に上がる演劇の公演には必ず足を運ぶという熱狂ぶり。「恋心冷めやらず」といったところですね。
地球と異世界がつながってから、地球の文化も随分と様変わりしてしまいました。
マンガや映画の内容も一新され、「異世界モノをドキュメンタリータッチで描く」という手法も多用されるようになりました。
ご多分にもれず、アカリが所属する「劇団エキセントリック・クロックワーク」でも、異世界を舞台にした演劇を上演しています。
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「太古の神々の戦い」
ブ~~~ッという開演ベルの音と共に「劇団エキセントリック・クロックワーク」の劇が幕を開けます。
舞台中央には、真っ白な衣装を着た女性がひとり。衣装は古代ギリシャ時代のモノを彷彿とさせます。
ナレーション「遠い昔、地球にも数多くの神様が住んでいました。けれども、現在、地球を見守っているのは1人の神様に過ぎません。なぜ、そうなってしまったのかを見ていきましょう」
神々の王であるゼウスに向かって、パッとスポットライトが当たります。
ゼウス「神々の時代にも飽きてしまったな」
次々と、他の神も登場してきます。
アポロン「この辺で、誰が一番強いのか競ってみるのも一興でありましょう」
ハデス「そういうのを待っていたのだ。結局、世界は力の強い者が支配するに限る」
ポセイドン「フフフ…では、私も負けませんよ」
ヘルメス、アテネ、アルテミス、アフロディテ、ビーナス、ヘパイトスなどなど、続々と舞台に上がってくる神々。
やがて、神同士の決戦が始めります。
ある者は、別の神と組み。ある者は、策謀を巡らせ。たったひとりで孤独に戦い続ける神もいます。
舞台上にゼウスが放った雷が轟音と共に降り注ぎ、ヘルメスが目にも見えぬ速さで空中を飛び回ります。
実は、この舞台で使われているのは本物の魔法なのですが、もちろん威力は落としてあります。たとえば、雷や炎は光と音だけで、攻撃力はありません。役者は空中浮遊の魔法で、実際に空中を移動しています。
2時間ほど劇は続きました。
激しい戦いの後、舞台上に立っているのは1人だけ。
ナレーション「地球上に残った神は、1人だけ。それ以外の神様たちはどうしたかって?みんな、宇宙のどこかへと飛んでいってしまい、散り散りとなってしまいました」
ナレーション「そうして、それぞれの神様が自分の星を持ち、管理しているのです。時々、神様たちは集まって、自分の星を自慢し合います」
客席から拍手が起こり、舞台は幕を閉じました。
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「世界には無数の神様がいる」
実は、これまでお話ししてきた物語は、ひとりの神様が生み出した世界の物語ではなくて、何人もの神様が作った世界の物語だったのです。
動物や人間にもいろいろいるように、神様にもいろんなタイプがいます。そうして、神様の数だけ世界はあるのです。いえ、正確には神様の数と世界の数は同数ではありません。
ひとりの神様がいくつもの世界を持っていることもあれば、全く世界を創らない神様もいるからです。
コミュニケーション能力の高い神様同士の間では「自分の生み出した世界を自慢し合い、競わせる」という遊びが流行っていました。
「ホレ。ワシの作った世界では、もう人類が文明を持ち始めたぞ」
「いやいや、アッシの世界では原子爆弾を発明して、小さな島国に落として戦争を終わらせたんじゃ」
「なんのなんの!我が輩の世界では、核融合炉が開発されて、人類はエネルギーを使いたい放題!今や宇宙にも進出し、植民地を増やし始めたところじゃ!」
「アレアレ、みなさん随分と遅れてらっしゃるのね。私の創った世界では、人類はもう戦争なんてしていませんよ。とっくの昔にお金にも飽きて、貨幣経済なんて廃れちゃってますから」
「なんと!そいつは進化が速い!」
「ク~、悔しいのう!」
「こうなったら、ワシの世界でも人類をさらに進化させたるか!」
…と、こんな具合です。
でもって、ある神様は、1人でいくつもの世界を生み出して、ついには世界同士をつなげて遊び始めたってわけなんですね~
すると、最初は異世界同士でいさかいあっていた住民たちが、やがて仲良くなり、交流を始めるようになりました。この点については、神様も予想外の展開でした。てっきり惑星間の戦争となって、どちらかの世界が支配するとばかり思っていましたから。
味をしめた神様は、いくつもの世界を生み出し、それぞれの世界同士をつなげて遊び始めます。
この遊びは、他の神様たちにも伝染していって、今や「世界構築ゲーム」の基本戦略として確立してしまいました。
さて、そろそろ今夜もお時間が来たようですね。
それでは、次のお話は、また明日にいたしましょう。




