~第61夜~「夜回りじいさん(その2)」「モンスター将棋」「ルチルガさんと保育園」
さて、あんまりにも腹が立ったものだから、ついついおじいさんを殴ってしまった若者。大いに反省します。
そうして、罪滅ぼし代わりに、おじいさんに弟子入りすることにしました。
「なになに、ワシに弟子入りしたいじゃと?それはやめといた方がええんじゃないか」と、口では断るおじいさんですが、内心ホクホク顔です。
「そこをなんとか!オレも、じいさんになにかしてやりたくて。いや、じいさんじゃなく師匠!師匠、お願いします!」
そう言われて悪い気はしません。おじいさんは、熱心に頼み込む若者に剣術の指南をしてやることにしました。
すると、最初はへっぴり腰だった若者も、おじいさんの指導のもと、メキメキと剣の腕が上がっていきます。元々、いい資質を持ち合わせていたんですね。
やがて、若者も欲が出てきます。いい意味での欲です。「広い世界に出て、自分の実力を試したい!」と思うようになったのです。
そこで、おじいさんに頭を下げ、武者修行の旅に出させてもらうことに決めました。
「師匠。これまで長い間、お世話になりました。オレも…いや、拙者も己の力を試してみとうなりました。どうか、お許しを」
おじいさんは、ウ~ンの腕組みをしながらうなってから、こう答えました。
「そうか。ワシも若い頃は、ムチャをやったもんじゃ。誰しも一度は自分の腕試しをしとうなってしまうのもわかるわい。けどな、これだけは忘れるな『己を慢心した時、人は既に敗れておる』」
「『己を慢心した時、人は既に敗れておる』ですね」と、若者は復唱します。
「そうじゃ。ゆめゆめ忘れる出ないぞ!」
「ハッ!肝に銘じておきます!」
そう答えると、若者はサッサと武者修行の旅へと出かけてしまいました。
のちに、この若者が世界を救う英雄豪傑になったとか、ならないとか。
*
「モンスター将棋」
ある時、ある世界で、魔王軍に属する将軍ふたりが「モンスター将棋」に熱中していました。
「ウ~ン…これがこう来て、こっちがああだから…」
「ウワハッハ!そのドラゴンは、既に詰んでおるわ!もうあきらめろ!」
「なにクソ!ドラゴンは切って、スライムをもらう!」
「ほうほう、それでそれで??」
「それで、ケンタウロスを打てば、王手バハムート取り!どうじゃ!両取りじゃ!」
「ムムム…まさか、そのような手が。いや、ちょっと考えさせてくれ」
「いいぞいいぞ。いくらでも考えるがいい。異世界のことわざにこういうのがあるがな。『ヘタな考え、休むに似たり』ってな。アッハッハ!」
「グ~」
負けてる将軍は、頭が真っ赤にゆであがって、まるでタコみたいです。今にも頭のテッペンから火山が爆発しそう。
この「モンスター将棋」という遊び。最近、魔王軍で大流行!人間界への進撃などそっちのけで、将軍から雑兵まで、みんながみんな熱中しているのです。「ゴブリン」「ワイバーン」「ハーピー」などの駒を動かし、相手の王様を取れば勝利!
壁には番付けが貼られ、級位・段位まで発表されている始末。このゲーム、奥が深いのは「新しい駒」を作ることができるところ。次々と新ルールが導入されていくので、飽きることがありません。
そこに魔王様がやって来て、大激怒!
「おまえら、なにやってるんだ!」
「いやいや、魔王様。これが大変おもしろいゲームでして」「どうですかな?1つ、魔王様もプレイしていかれては?」
最初は渋っていた魔王様ですが、すぐにモンスター将棋にハマってしまいます。「ミイラ取りがミイラになる」とはこのコトですね。
結局、魔王様以下全員がモンスター将棋に熱中してしまい、戦争どころではなくなってしまいました。
ところが、お話はここで終わりません。
ある頭の切れる魔物がモンスター将棋を商品化し、人間界に売りだしたもこだから、さあ大変!
これが、空前の大ヒット!人間たちもハマってしまい、平和な世の中になりましたとさ。
ちゃん♪ちゃん♪
*
「ルチルガさんと保育園」
1人の女性が、小さな子供たちを大勢連れて保育園にやって来ています。
彼女の名前はルチール・ルガール。みんなからは「ルチルガさん」と呼ばれています。
ズラズラと列になってルチルガさんのあとをついてくる子供たち。人数は15人くらいでしょうか?どの子も、まだ未成熟で小学校に上がる前の年齢。
「じゃあ、よろしくお願いするわね」
ルチルガさんが、子供たちを別の女性に託しながら言いました。
「はい!アタシ、がんばりますッ!」
そう答えたのは、アヴィール。この保育園の園長さん。保育園はできたてのホヤホヤ。ピカピカの建物です。
ちなみに、建築を担当したのは「無手勝建設」という建築会社。社長は、無手勝流児という人物。地球から一旗あげようと、異世界へとやって来たのです。
「それにしても、無事に保育園が開園できてよかったですね」と、アヴィール。
「ほんと。一時はどうなるかと思ったけど。計画がトントン拍子で進んで、お金を出してくれる人も現れて」
ルチルガさんも、ホッと安堵のため息をつきます。
「メルキデウスさん、いい人ですよね。孤児院にも保育園にもお金を寄付してくれて」
「そうそう、そのコトなんだけどね。なんか、突然、大金が転がり込んできたらしいの。それで『不当な利益は、ワシの流儀に合わん。商売とは商人とお客のバランスが大切」とかなんとか言って、全額寄付してくれたってわけ」
おっと。そろそろ夜が明ける時間ですね。
それでは、この続きは、また明日の夜に♪




