~第60夜~「神様と悪魔の気まぐれ(その2)」「夜回りじいさん」
宇宙には、神様に忘れ去られた星がいくつもありました。
ここにも、そんな星の1つがあります。神様の手を離れて独自の進化を遂げた星が…
それはまるで、元々人の手によって管理されていた観葉植物が、主を失って勝手に育っていき、数万年の時を経てジャングルへと成長したようなものでした。
いくつもの世界を渡り歩いていた「伝説の悪魔」が、偶然、その惑星を発見します。人の住まぬその星を。
高度な文明を持つ人類こそ存在していませんでしたが、生き物は多数生息しています。多種多様な生き物が。
そこで、悪魔は、その星を自分の住みかとし、新生物を生み出すための実験場としました。
その惑星は「魔界」と名づけられます。
伝説の悪魔は、宇宙各地にこのような「魔界」をいくつも持ち合わせています。そうやって、魔術や魔物の研究をしては、自らの能力を上げているのです。
元々は戦闘用に用意した魔法やモンスターたちでしたが、悪魔はそれにも飽きてしまい、別の用途に使用し始めます。
道の文明を、人間たちの住む星へと持ち込んで、人を楽しませたり困らせたりするのです。悪魔はそれを見て、手を叩いて喜びました。やってるコトは、神様と同じですね。
神様も悪魔も退屈していたのです。退屈していたからこそ、人間にちょっかいを出す。誰も相手にしてくれなくなったら、寂しいですからね。そうやって、誰にも相手にされなくなって、自ら消滅していった神様や悪魔も歴史上にはたくさんいます。
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さて、新しい魔界を手に入れた伝説の悪魔は、さっそくニューモンスターを生み出す実験を始めました。
今回使用するのは、別の世界で手に入れた「エアシビレクラゲ」という魔物(実は、ルネバンドール博士の発明)
フツーのクラゲは海の中に住んでいますが、このクラゲは空中をふわふわと漂うのです。しかも、マヒ系の特殊攻撃を持っていて、触手に触れられた生き物は電気が走ったような痛みと共に体がマヒしてしまいます。厚い毛皮やヨロイを持っていなければ、イチコロ!
悪魔は、エアシビレクラゲを培養し大量に増やすと、遺伝子操作で様々なタイプのクラゲを生み出しました。マヒの代わりに、毒や幻覚を見せる物質を発するタイプ。自身を透明化し、周囲の風景に溶け込むタイプ。巨大化し、無数の子供を産むタイプなどなど。
特に巨大化したモノは、東京ドームほどの大きさがあり、太陽の光をエネルギー源として、子クラゲを大量に産みます。悪魔は、この生き物に「アマテラスオオクラゲ」と名づけ、大切に飼いました。
いずれ、アマテラスオオクラゲは、別の世界へと召喚され、大迷惑をかけるのですが…
それは、また別のお話♪
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「夜回りじいさん」
ある時、ある世界に、ひとりのおじいさんが住んでいました。
おじいさんは、若い時から近所を守って歩くのが趣味のような人で、毎夜毎夜「拍子木」を手に、街に魔物がやってこないように夜回りをして回っていました。
昔はそれでもよかったのでしょう。おじいさんも、まだおじいさんではなく、立派な若者の戦士でしたし。
けれども、時代は移り変わり、街は近代化し、魔物はどこか遠くの自然あふれる土地へと移り住んでしまっています。この辺りでは、夜回りなど必要なくなってしまっていたのです。
そのコトに気づかないおじいさんは、手にした拍子木をカコ~ンと鳴らしながら、今夜も街を練り歩くのです。
そのカコ~ンという高い音が、耳障り極まりありません。実のところ、街の人たちはみんな迷惑していました。
「じいさん、早く引退してくれないかな」
「あの木と木をぶつけ合う音が耳の奥にキ~ンと残るんだよな」
「本人は英雄気取りかも知れないが、こっちはうるさくて眠れやしないよ」
などと、街の人たちはウワサします。気づいていないのは本人ばかり。
事実、おじいさんも若い頃は英雄としてあがめられた存在でした。魔王軍率いる並み居る強敵たちをバッタバッタと斬り倒し、街の危機を何度も救ったことがあります。
でも、それも遠い昔の出来事。時代は常に変化しているのです。
そんなある日のコト。ついに、おじいさんは街の若者からぶん殴られてしまいました。
「うっせえんだよ!じじい!テメー、みんなに迷惑かけてるって全然気づいてね~のかよ!」
殴られたおじいさんは、そのまま勢いで3メートルは吹っ飛んでいきます。
あわてたのは殴った若者の方。
「大丈夫かよ」と、駆け寄って声をかけ、手を差し伸べます。
ところが、おじいさんはショックで立ち上がれません。殴られて吹っ飛んで痛かったこともありますが、それ以上に心の方が痛かったのです。
「ワシは街の人たちのためにと行動しておったのに、それが迷惑行為じゃったなんて…」
若者も困って、マユゲを八の字にして答えました。
「オレも言い過ぎた。殴ったことも謝る。だけど、みんなが迷惑していることだけは、ほんとなんだ」
その言葉を聞いて、おじいさんはますますショックを受けてしまいます。あげくのはてに、熱を出して寝込んでしまいました。
さて、この続きは、また明日の夜といたしましょう。




