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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~いろいろな小話~
59/1003

~第58夜~「企業家アルケロシオンの苦悩」「ギルドマスター多山石山」

「企業家アルケロシオンの苦悩」


 あるところにアルケロシオンという名の経営者がいました。

 異世界と地球の間に道ができ、2つの世界の交流が始まってから、アルケロシオンは必死になって地球の経営学について学び始めます。そのかいあって、2つの世界でも名の知れた企業家へと成長しました。

 ところが、ここにきて、人々は不満をもらし始めます。

 充分な報酬と仕事を与えてやっているはずなのに、なぜだか文句を言われてばかり。

「もっと!もっと報酬額を増やしてくれ!」

「労働時間が長過ぎる!休日を増やしてくれ!1日の労働時間を減らしてくれ!」

 …といった声が、あちこちで上がります。


 仕方なく、アルケロシオンは労働時間を減らし、給料を増やしてやりました。

 すると、しばらくの間はおとなしく働いていた労働者たちでしたが、今度は「福利厚生がなっていない!」「ボーナスが欲しい!」と訴えてくるようになります。

 人の欲望というのはキリがありません。


 ここでフツーの経営者ならば、腹を立ててしまい、ヤケになって全てを取り上げてしまうものです。給料を減らし、労働時間を増やし、以前よりも過酷な労働環境に変えてしまうもの。

 けれども、アルケロシオンは賢い経営者であったので、辛抱強く人々の声に耳を傾けます。

 そうして、労働者たちの要求を飲む代わりに、会社の成長を求めました。

「企業というのが、どんな風に成り立っているのか?」「いかに経営者が心血を注ぎながら皆を守っているのか?」「どうすれば、会社の売り上げや利益が増えるのか?」を懇切丁寧に説明し、少しずつ皆の理解を得ていったのです。

 おかげで、アルケロシオンの経営する会社は売り上げを伸ばし、利益を増やし、異世界でもさらに有数の企業へと成長していきました。


 2つの世界に大恐慌が起きた時にも、アルケロシオンの会社だけは、どうにか持ちこたえることができました。

 もちろん、一時的にボーナスをカットしたり、給与を減らしたりはしましたが、普段から会社の成り立ちを説明しておいたおかげで、労働者たちからも一定の理解を得ることができたのです。

 この時代、世界は失業の嵐、一度職を失えば次の働き先はないも同然でした。よって、自ら命を絶つ者も大勢出ました。それも、一家まとめて。

 それに比べればアルケロシオン社の労働者は、誰ひとりとしてクビを切られるコトもなかったので、随分とマシだったと言えるでしょう。


 後年、アルケロシオンは語っています。

「経営者とは一番損な役回りである。いかなる状況下においても辛抱強く耐え、人々の声に耳を傾け、望みをかなえてやる必要がある」と。


         *


「ギルドマスター多山石山」


 多山石山(たざんいしやま)は退屈していました。

 毎日毎日、同じ日々の繰り返しで、生きるコトに飽きてしまっていました。

 そんなある日、異世界の間に道が開かれ、地球から異世界へ行くことができるようになったと耳にします。


「地球でこのまま暮らしていても先が見えている。こんなだったら死んでいるのと同じだ。いっちょ、異世界とやらに出かけて一花咲かせてやるか!」

 そう決心した多山石山は、最低限の装備だけ整えて、冒険の旅へと出かけます。持ってきたのは、何着かの下着とセッケンくらいのものでした。あとは、少々の現金だけ。


 さっそく異世界の大地を踏みしめた多山石山は、日本円を異世界の通貨に両替してもらうと、近くの街で暮らし始めます。

 …とはいっても、冒険者になるわけではありません。


(自分には、あんな風に剣を振るったり、魔法を覚えたりして、危険な魔物と戦うような才能はない。ならば、道は…)


 多山石山は、己を知る人間でした。なので、自分が戦闘向きでないというコトはわかっていました。そこで、最初は「商人」を目指すつもりだったのです。

 ところが、実際に異世界の地に降り立ってみて、興味の対象が別に移ってしまいます。


(なるほど。確かに冒険者というのは、おもしろそうだ。けれども、あんな危険な地におもむいていては、命がいくつあっても足りない。となれば…)


 そう考え、ギルドの運営に関わることに決めました。

 最初は大きなギルドに所属し、基本的な運営能力を身につけていきます。やがて、自分でも小さなギルドを設立し、近隣の冒険者を雇っては、マージンを取って生活するようになっていきます。


(こいつは、おもしろい!いわば、経営者と同じか。人を雇い、仕事を与え、上手く任務を達成できれば報酬を払う。依頼主と冒険者の間に立って、いくばくかの手数料をいただく。そのためには絶妙なバランス感覚が必要)

 そんな風にも考えます。


 かつて地球においても、「ゴールドラッシュ」と呼ばれる時代が存在していました。アメリカやオーストラリアなどで発見された金工脈を目指し、荒くれどもが一攫千金を夢見て旅立っていったのです。

 実際に金を掘るのは危険が伴います。それに、うまく金塊を発掘するなど、宝くじに当たるようなもの。そうそう上手くはいきません。


 おっと。残念ながら、今夜もそろそろお時間となったようです。

 では、この続きは、また明日の夜に…

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