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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~いろいろな小話~
58/1003

~第57夜~「異世界ライトノベラー(その2)」「金持ちのいなくなった世界で」

 さて、アイデアの枯渇してしまったライトノベル作家、どうしたか?

 なんと、ゴーストライターを雇い始めます。いや、厳密に言えばゴーストライターとは少し違っていましたが、まあ、似たようなモノです。

 現実に異世界で冒険者となった人に話を聞いて、その体験談をファンタジー小説として発表し始めたのでした(無論、いくらかの取材費と口止め料を渡して)


 ところが、これが大ヒット!

「あいつ、急におもしろい話を書き始めたぞ!」「あの落ちぶれ作家、もうダメだと思ってたが、なんと!なんと!あの年齢で化けやがった!」「ムチャクチャおもしろいです!鬼気迫るリアリティがあって、まるで実際に異世界を旅してきたみたい!」「早く!早く続編を書いて!」などと、ファンから熱いメッセージが届きまくります。


 いきなり大ヒット作家になった男は「こいつはしてやったり!」と得意満面になると同時に「いや~、まいったな…」とも思っていました。

 なにしろ、もうネタがないのです。以前に体験談を提供してくれた冒険者は、今回のヒットをネタに「協力費を吊り上げろ!」と迫ってきます。「さもなければ、お前の正体をバラすぞ!」とも。これでは、脅迫です。


「そこそこ金も稼いだし、もう引退しちまおうかな?残りの人生、無駄遣いをせずに細々と生きていけば、働かなくてもどうにかなりそうだし…」と弱気になったりもしました。


 そこでめげないのが、この作家のよいところ!仕方がないので、この前とは別の冒険者を捕まえて、いくばくかの金を握らせては、体験談を聞き出します。そうやって書いた作品が、またヒット!しかも、以前よりも評判になり、映画化・アニメ化も決まりました。

 こうなってはあとに引けないのが男というモノ!同じ手口で、何度も何度も作品を発表し、そのたびに売り上げは増えていきます。


 ところが、その成功も長くは続きません。ついに、男の手口はバレてしまい、男に協力した冒険者たちが一致団結してインターネット上に証拠を公開し、暴露本まで出します。悪いコトはするものじゃありませんね~(ちなみに、この暴露本も相当な数売れました)


 ここでフツーの人間なら「ゴメンナサイ」するところなのですが…

 このライトノベル作家、肝がすわっているというか、なんというか、ここに来て完全に開き直ります。


「人の体験談を元に小説を書いて何が悪い?こりゃ、体験談を元にした完全フィクション!冒険者がなんぼのもんじゃ~!」と叫ぶと、その様子を動画で撮影して、インターネット動画投稿サイト「They Tube」に投稿し、一躍人気チューバーとなってしまいました。

 まったく商魂たくましい人です。でも、このくらいふてぶてしい性格の方が、世の中生き残っていけるのかも知れませんね♪


         *


「金持ちのいなくなった世界で」


 昔、ある世界にある国がありました。

 その国では非常に不公平な法律がまかり通っており、金持ちと貧乏人がハッキリとわかれておりました。


 貧しき人々は世の不公平さに声を上げます。

「なぜ、金持ちはより金持ちになり、貧乏人はより貧乏になってゆくのだ!あまりにも理不尽過ぎるではないか!」と。

 それに対する金持ちの言い分は、こうでした。

「我々がシステムを構築し、民衆に仕事を与えている。だからこそ、皆、効率よく生産し給料ももらえているのではないか」


 貧しき人々は、さらに反論します。

「その方法では弱者は救えない!ケガをしたり、病気になったり、生まれながらにして働けない者たちはどうすればよいのだ?」と。

 金持ちは答えます。

「だから、我々が大金を稼ぎ、その金を再分配しているではないか?それによって、体が動かず働けぬ者も救われている」と。


 けれども、貧しき人々は納得できません。

 そこで、革命を起こすコトに決めました。幸い、この時期のこの国には「革命の女神」がやって来ていました。

 革命の女神は、完全に「革命中毒」になっており、自らの力を発揮できるならどこでも構いませんでした。自分の存在意義を求めて、世界中をさまよい歩き、戦いが起りそうな地域を鋭い嗅覚で嗅ぎ取り、身を置いていたのです。

 今回もそうでした。戦いの女神を味方につけた民衆は、見事、金持ちの築き上げたシステムを破壊します。そうして、一部の特権階級にいる人間たちを断頭台へと上げ、処刑してしまいました。

 満足した革命の女神は、新たな戦乱を求めて、いずこかへと姿を消します。


 さて、問題が起こったのはここからです。

 民衆は「金持ちどもを倒せば、公平になり、国は救われる」と考えていました。けれども、それは大きな勘違いでした。

 戦いで国は疲弊し、巨大な工場がいくつも破壊され、立て直すには時間がかかりそうです。内戦中、弱者は(しいた)げられ、体の動かない者たちはみんな死んでしまいました。

 革命によって大勢の負傷者が出ましたが、彼らもまともに働けそうもありません。かつて、そういった人々を救っていたのは誰だったのでしょう?

 そう!誰あろう、目の(かたき)とされていた金持ちたちだったのです!

 お金を出す人たちがいなくなって、弱者や負傷者たちは困りました。でも、誰も助けてはくれません。


 外の国に救いの手を求めましたが、みんなそっぽを向いてしまいます。

「勝手に自国の人同士で争ったおまえらが悪い!」というわけです。

 それどころか、ライバル企業を有する国々は「この時だ!」とばかりに自国の産業を伸ばしていきます。

 結局、金持ちを失った国はボロボロになり、世界との競争から脱落し、国民全員が貧しい生活を強いられるようになりましたとさ。


 めでたくなし、めでたくなし。


 ちょうどお時間となりましたので、次のお話は、また明日の夜といたしましょう。

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