~第49夜~「異世界建設ラッシュ(その2)」「死にたがりの魔女ラ・スースー」
さて、建築ラッシュの続く異世界ですが…
そこは「剣と魔法の世界」のことですから、単に地球と同じような建物ばかりが建てられるわけではありません。
たとえば、魔法都市建設の際には、壁に特殊な物質を混ぜたり塗料を塗ったりして、お互いの魔力が干渉し合わないように工夫しました。建物内で魔法の実験などを行うので、このような処理が必要だったのです。
変わり種としては「電気モンスター発電所」というのがあります。
これは、「電気ヒツジ」「電気ウサギ」「電気ネズミ」など、体から電気を発生させるモンスターばかりを集めて、発電所にしたものです。
もちろん、発電所としての設備も整えられていますが、それと同時に「飼育場」としての役割も兼ねているので大変です。モンスターたちにエサをやったり、フンの処理をしたり。ま、動物園が近いかも知れないですね。
あるいは「動く建築物」
これは、動く石人形である「ゴーレム」の技術の応用でもあるのですが…
住居でありながら同時に移動可能!戦場では、武器や兵器を満載させて「動く弾薬庫」として活躍するようになりますが、それはもう少しあとの時代のこと…
*
「死にたがりの魔女ラ・スースー」
あるところに、ひとりの少女が住んでいました。
少女には親はなく、幼い頃より親戚に預けられて生きていきます。けれども、それにも限界が来て、親戚のおじさんとおばさんは少女を孤児院へと預けてしまいました。
そんなでしたから、少女はいつも絶望していました。
「なんで、私なんかが生まれてきたんだろう?」
子供の頃からずっと、そんな風に考えながら生きていきます。
*
ある日、孤児院に少女の引き取り手がやって来ます。
少女を引き取ってくれたのは、ひとりの魔女でした。魔女とはいっても、よい魔女であり、街の人たちにも親切で大変評判のよい女性でした。
魔女の名は「セアラ・ヴァレット」といい、みんなからは「白き魔女」と呼ばれています。
白き魔女セアラ・ヴァレットは、少女を預かると、自分の家に連れて行き、名前をつけました。生まれた時から持っていたのとは別の「魔女としての名」です。
新しい魔女の名は「ラ・スースー」
この土地の言葉で「メスの馬」を意味します。セアラは少女に、野生を駆け回る馬のように自由に生きてもらいたかったのです。
ところが、ラ・スースーはいつまで経っても暗いまんま。いつも自分の周りにドンヨリとした負のオーラをまとっていて、近づく人たちに嫌な思いをさせます。
「セアラ様は美しく、いつもカラッとした笑顔で人をなごませてくれるのに、ラ・スースーときたら、なんでいつもあんなに暗い雰囲気なんだろうね」と、街の人たちもウワサします。
そんなでしたから、ラ・スースーは、ますます死にたがりになってしまうのです。
自分が暗い雰囲気をまとう → 周りの人たちから暗いと思われる → どんどん暗い性格になっていく…という負の連鎖。
セアラとしても、どうにかしてやりたいと思い、いつもやさしく笑顔で語りかけるのですが、どうにもなりません。それでも、根気よく接し続けるセアラでありました。
ラ・スースーに魔法の基礎から叩き込み、将来、魔女として1本立ちできるように教育します。もちろん、セアラは「白き魔女」でしたから、得意なのは回復魔法や補助魔法。
ただし、ラ・スースーがどのような資質を秘めているのかわからなかったので、炎や氷結など一通りの魔法を伝えておきました。
そんなある日のコトです。
セアラとラ・スースーは、近くの森で回復に使う薬草をつんでいました。悪いコトに、この季節は冬が明けたばかりで、冬眠から目覚めたばかりのマダラグマが出没する時期でした。
冬眠中に出産を終えた母グマと3匹の子グマが辺りをうろついていたのですが、暖かい春の陽気のためかセアラも完全に油断していました。
気づいた時には、ラ・スースーのすぐ背後に母グマが迫ってきていました。
「危ない!」と叫び、ドンッ!とラ・スースーを突き飛ばすセアラ。
あわれ、セアラは凶暴なマダラグマの餌食となってしまいます。背中に鋭い4本のツメあとが…
次の瞬間、セアラの背中から大量の血が噴き出しました。
クルッと振り返り、その様子を目の当たりにしてしまったラ・スースー。この時のコトはクッキリと脳裏に焼きついて生涯忘れることはありませんでした。
同時に、カッと頭に血が上り、ラ・スースーは意識を失い、あとのコトは覚えていません。ただ、体は自動的に動いていました。
ラ・スースーが無意識に放った闇の魔法は、マダラグマの母親の胸に直撃します。そのまま母グマは、軽く4~5メートルは後方に吹っ飛び、動かなくなってしまいました。
その隙を見て、背中に大怪我を負ったセアラは、闇の魔法を放ったばかりの小柄な少女を拾い上げると、可能な限りの力を使って走って逃げます。
逃走しながら、セアラは自らの回復魔法で背中の傷を癒やしました。
そうして「もう安全だろう」と思える場所まで来ると、抱きかかえている少女の顔をジッと見つめます。少女は、相変わらず意識を失ったまま。
「この子、とんでもない才能を秘めてるわ…」
さて、この続きは、また明日の晩といたしましょう。




