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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~いろいろな小話~
48/1003

~第47夜~「ハシゴ男(その2)」「とらわれの少女」

 老人の家の蔵から取ってきた「魔法のハシゴ」を使って、ハシゴ登りに再挑戦した男。

 今度も、スイスイと登っていって、アッという間に先ほどの最高記録である20メートルを超えちゃった。それどころか、50メートル登っても、100メートル登っても、まだ登る。

 ハシゴの方も、魔法のハシゴなもんだから、どこまで伸びてもまだ伸びていく。決して倒れることもない。


 こうなったら、男とハシゴの対決ね。

 スイスイとどこまでも登っていく男。それに合わせてグングンとどこまでも伸びてゆくハシゴ。ついに、ハシゴのテッペンも男も、空の彼方へ見えなくなってしまった。


 あわてたのは街の人たち。もちろん、アタシもね。

 1時間待っても2時間待っても男は帰ってきやしない。半日待っても、2日待っても戻ってこない。


 ず~っと、ず~っと待って、10日ほどしたある日。

 ハシゴを下から眺めていたアタシは、あるコトに気がついた。グングンとハシゴのテッペンが短くなって迫ってくるの。

 しばらく待っていると、ついにハシゴは縮みきって、元に長さにまで戻った。ただし、男の姿はどこにもありゃしない。魔法みたいに、どこかに消えちゃってたの。


 街の人たちは、こうウワサしたわ。

「アイツは、神様の住む天の国まで到達したんだ。そこに幸せに暮らしてるから、落ちてくることもなければ、2度と戻ってくることもないんだ」って。

 そうして、アタシは不幸になった。だって、愛する人をひとり失ってしまったんだもの…


         *


「ママ。それ、たった今適当に作ったろう?」と、バーのカウンターで話を聞いていた男はポツリとつぶやきます。


「え?なんで、そう思うの?」と、ラオリェンママは返しました。


「だって、話が適当過ぎるもん。そもそも、空の上に神様の国があって、そこで人が暮らせるってだけでおかしいだろう?」


「アンタがそう思うんなら、そうかもね。信じる信じないわ、その人しだいよ」


「まあ、いいや。他にはないの?」と、男は次の話を要求します。


「そうねぇ。じゃあ、こういうのはどうかしら?」


 そう言って、ラオリェンママは次の物語を語り始めました。


         *


「とらわれの少女」


 昔、ある国に、ひとりの少年がいた。少年は、同年代の子たちと同じように冒険好きだった。けれども、ちょっとばかし危険な冒険に手を出し過ぎたの。


 ある時、少年は、いつものように近くの洞窟に探検に出かけた。地元の一体からすれば慣れた洞窟でも、フラリと立ち寄った観光客なんかにとっては、命を落としかねないような危険な場所だった。もちろん、少年からすれば庭みたいなモノだったけど。


 洞窟を奥まで抜けると、そこは開けた場所になっていて、巨大な岩や高い岩壁はいくつもあったけれど、それでも、はるか上空から日に光が差し込んでいて、たいまつなしでも歩けるようになっていたの。

 それはそれは幻想的な空間だったわ。そこら中から自然の水が噴き出していて、足下まで流れ出していて。「『妖精の国』があれば、きっとこういう場所なんだろうな」って思えたくらい。


 妖精の国の奥には、ひとりの少女が鎖でつながれているのを少年は発見した。少女は裸で全身を鎖で巻かれていたわ。

 ちなみに、この少女ってのが、若い頃のアタシね。


「うっそだろ!?そんな展開ありかよ!」と、天から声がする。


 いえいえ、嘘なんかじゃないわ。アタシにも若い頃があったのよ~

 で、少年は鎖を解き、少女を助け出すと、一緒に地上を目指した。少女は、全裸で裸足だったけど、少年が上着を貸してくれたので、恥ずかしかくてもどうにか我慢して歩き続けた。


「全裸に上着だけとか、余計にそそるシチュエーションだな…」と、再び天の声。


 うるさい!黙って聞きなさい!


「へいへ~い」と答えて、天からの声は聞こえなくなった。


 少年は実にやさしかったわ。この時はね。

 たとえば、街までの帰り道。洞窟の手前の水場は、妖精でも住んでそうなくらい幻想的な風景だったって言ったでしょ?

 けど、実際に住んでいたのは妖精なんかじゃなく、人間よりも大きな生き物だった。巨大なカエルよ。

 そいつは、「ウシクイガエル」って呼ばれていて、名前の通り「牛を食べるほど大きいカエル」だったわ。


 少年は少女に向けて、こう言った。

「大丈夫。コイツは、出産中だから安全だ」って。

 少女が巨大なウシクイガエルの方に目をやると、確かに卵を産んでる途中だった。卵のひとつひとつが、3歳児が体育座りしたくらいの大きさはあったわ。


 危険地帯を抜け、洞窟を通り、街までたどり着いたふたり。

 そこで、少女はようやく安心した。

「あ~、助かった!もう大丈夫なんだ!」って。


         *


「で、どうなったの?」と、客は尋ねます。


「どうもならないわよ」と、ラオリェンママ。


「へ?」


「少女は街で保護され、少年は大人になり、それっきり」


「『ふたりは幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし♪』ってのは?」


「ないない、そんなのないわよ。あったら、こんなとこでバーのママなんてやってないもの」と、ラオリェンママは、手をひらひらと振りながら答えます。


「じゃあ、その少年はどうしたんだ?」


「どうもしないわよ。大人になって、別の女と結婚して幸せに暮らしたわ。それこそ『めでたしめでたし♪』ってね。おかげでアタシはやさぐれて、男をとっかえひっかえの人生。だからでしょうね。こんな性格になったのは」


「現実の世界に『美しきボーイ・ミーツ・ガールの物語』なんてものは、そうそうないもんなんだなぁ…」とつぶやきながら、うらぶれたバーの片隅で、客はグラスに残った酒をグイッと一気にあおるのでした。


 さて、ちょうどお時間となりました。

 次の物語は、また明日の夜に…

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