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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~いろいろな小話~
47/1003

~第46夜~「ルチルガさん、子供を助ける(その4)」「異世界場末バーの女鬼ママ」「ハシゴ男」

 ルチルガさんと子供たちが外へと出た瞬間、ウトピアベリー伯爵のお屋敷はガラガラと音を立てて、崩れ落ちてしまいました。

 よって、暖炉の向こう側に開いていた異世界への道がどこへ通じていたのかは謎のまま。


 屋敷の外では、背中の曲がった小男グラベートが待っており、助け出した子供たちの中から「貴族の息子だけ」を連れて帰ろうとします。


「オイ!ちょっと待て!」と、ルチルガさんを引き留めます。


「は?何か?」とすっとぼけるグラベート。


「いやいや、この子らも連れてけよ」


「いえいえ、私が依頼されたのはこの子だけでございますよ」


「残りはどうすんだよ?」


「どうぞ、ご自由に。報酬は後日、私の事務所にてお渡しいたしますので。では」


 そう言って、グランベールは貴族の息子を連れて、そそくさと去って行ってしまいました。


 残されたルチルガさんと20人近くの子供たちの前を、マンガみたいにヒュルル~ンと寂しげに風が吹き抜けていくのでした…


         *


「で、ルチルガさんと残された子供たちは、その後どうなったの?」と、シェヘラザードは不思議そうに尋ねてくる。


「さて、どうなったんでしょうね。機会があれば、またお話しすることもあるでしょう」


「なにそれ…」と、あきれ顔のシェヘラザード。


「それよりも次の物語とまいりましょうか」と、天使である僕は再び語り始めた。


         *


「異世界場末バーの女鬼ママ」


 どこの世界にも、どの時代にも、いい加減な人間というのはいるもので。

 今回は、そんなひとりの女の物語でございます。


 女は生前、(主に男をたぶらかしたりして)ふしだらな人生を送っておりましたので、死後は生まれ変わって鬼になりました。

 生前の記憶を保持していた女は「今度こそまっとうな人生(鬼生?)を歩んでみせる!」と意気込んだものの、人というのは(鬼ですが)愚かなもので、結局は同じような生き方を繰り返してしまいます。


 女鬼(「にょき」もしくは「おんなおに」と読む)の名は「ラオリェン」

 ラオリェンは、異世界の場末のバーでママをやっています。


「ママも若い頃は、恋のひとつやふたつあったんでしょ?」と、バーのカウンターでおとなしく酒をなめている男が言います。


「まあね。恋のひとつやふたつや10や100、そりゃあったわね。っていうか、今でもあるわよ」


「そうなの!?じゃあ、今晩ひとつオレとどう?」


 ウ~ン…と、値踏みするように上から下まで男を眺め回し、あきれかえるようにラオリェンママは答えました。

()えない男ね。気を悪くするかも知れないけど、アタシの趣味じゃないわ」


「あっそ。じゃあ、仕方ないね」と、男は素直に引き下がります。が、続けてこう尋ねます。

「じゃ、代わりと言っちゃなんだけど。ママの恋バナ、ひとつ聞かせてよ」


「そうねぇ。お店も暇だし、たまにはそういうのもいいかもね」

 そう答えながらママはグルリと店内を見回しますが、ふたりの他には誰もいません。


 もっとも、おてんと様がカンカンと大地を照らしているこんな時間から、こんな辺境の地で酒を飲む客なんて、そうはいません。人間国宝…いや、天然記念物と言ってもいいでしょう。


「じゃ、さっそく始めるわよ」

 そう言って、ラオリェンママは自分の昔ばなしを語り始めました。


         *


「ハシゴ男」


 これは、アタシが人間だった頃の話ね。

 アタシが恋をしたのは、見た目はガリガリのやせっぽち。


「どうして、そんな奴を好きになったんだ?」と、天から声が。


 そりゃ、アタシも若かったからね。そういうのが好きになる時期もあったんだよ。


「へ~、そりゃ意外だな」


 いいから黙って聞きなさい!


「へいへい」と、天からの声は返事をして、それっきり黙りこくってしまった。


 で、ガリガリにやせてたというのはアタシの勘違いで、服の上からはそう見えただけだったの。

 脱いだら、凄かったんだから。そりゃ、もうガチガチの筋肉の塊!筋肉ダルマ!

 けど、服を着ると、またガリガリに見えちゃう。そういう男だったの。


 その男、ちょっと変わった趣味をしててね。「ハシゴ」が好きだったの。屋根に登ったりする時に使う、あのハシゴね。

 ハシゴを見たり作ったりするのが好きなわけじゃなくて、登るのが趣味だったの。


 それで、ある時、「どれくらいの高さまで登れるんだろう?」って挑戦してみたくなったらしいの。で、街の人たちの力を借りて、挑戦してみた。


 最初は、2メートルくらいから始めて、5メートル、8メートル、10メートル。まだまだ登れる。下からハシゴを手渡してやって、継ぎ足していって、どんどん登っていく。けど、20メートルくらいの高さに達したところで限界が来てしまった。

 男の限界じゃないわよ。ハシゴの限界。20メートルもの高さ、支えきれなくなっちゃったの。


 ところが、その様子をひとりの老人が見ていて、ついに我慢しきれなくなって声をかけてきた。

「そういえば、うちの蔵には『魔法のハシゴ』があるぞい」って。


 で、みんなで、老人の家に行って、魔法のハシゴを取ってきた。

 広場の真ん中に移動して、今度は魔法のハシゴを使って挑戦することにした。


         *


 おっと。そろそろ夜が明ける時間ですね。

 いいところではあるのですが、この続きはまた明日にしましょう。

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