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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~いろいろな小話~
39/1003

~第38夜~「あるウンディーネの恋(その2)」「マジックドラッグ」

 若い男と世間知らずのウンディーネが出会い、どうなったと思います?

 当然、恋に落ちますよね。物語の流れからして。


 ふたりは雰囲気のいいホテルなどに泊まり、甘い時を過ごします。

 すっかり男のコトを好きになったウンディーネは、すぐに結婚したくなりました。


「ねえ?いつまでも私の側にいてくれる?」

「ウ~ン…そうだなぁ。そういうのもいいかもしれないけど、もうちょっとこのままの関係でいてみないか?」

 ウンディーネは、すっかり男にまいってしまっていたので、言葉の通りに従いました。


 しばらくの間、ふたりは気ままな旅暮らしをして過ごします。

 最初に住んでいた森の泉からは随分と遠くまで来てしまいましたが、ウンディーネはちっとも寂しくはありませんでした。だって、「世界で一番愛している人」が側にいてくれるんですもの。


 破滅の時はやって来ます。

 1つ所に住み続けられない性格の男が、1人の女性に執着するはずもありません。やがて、男は旅先で別の美しい女を見つけ、いい仲になってしまいました。


 さて、掟に従ってウンディーネは選択をしなければなりませんでした。

1.愛した男を殺す

2.男の浮気相手である女を殺す

3.ウンディーネ自身がこの世から消える


 このウンディーネは、あまりにも純粋過ぎたため、選択を迷います。自分はこの世界から消えてしまっても構わないけれど、それでは気が収まりません。

 かといって、男や女を殺すだけでは飽き足らないとも思いました。それ程までに深い情念を抱いてしまっていたのです。


 結局、どうしたかって?

 そうですね。ウンディーネは自らの感情をコントロールできなくなり、悩み、迷い、ひたすらに混乱し、近くの海へと身を投げてしまいました。

 それでも、熱き想いはとどまることを知らず、海の水を巻き込んで竜巻と化します。ウンディーネの情念は大嵐を起こし、街は嵐の中へと没し、男も女も住民もみんなみんな巻き込んで、ムチャクチャに破壊され滅んでしまいましたとさ。


         *


「女っていうのは、どうしようもなく感情に振り回されて、時として何もかもを壊してしまいたくなる生き物なのよ」と、シェヘラザードは語った。


「シェヘラザード様にも経験がありますか?」と、僕は尋ねる。


「そうねぇ。そういう気持ちにさせられたコトはあるわね。けど、そういう意味では男だって同じなのかも」


「そうでしょうか?」


「ええ、そうですとも。現に私が愛した王様だって、嫉妬と復讐心に駆られて、自分の妻や大勢の女の人の首をはねてしまいましたからね」


「なるほど。有名なお話ですね。嫉妬というのは怖いもので。自分でわかっていても、どうしても感情を抑えられずガムシャラに行動してしまいがちですから…」


 そう言って、僕は次の物語を語り始めた。


         *


「マジックドラッグ」


 地球では、ここのところ「マジックドラッグ」と呼ばれる精神高揚剤が流行(はや)っています。異世界から流入してきた謎の薬で、成分的には何も問題がないとされています。

 一流の研究者たちがこぞって成分を調べ上げたのですが、人体に害を与える物質は発見されませんでした。


 作家・アーティスト・ミュージシャン・スポーツ選手などを中心に、労働者や学生の間でも使用者があとを絶ちません。中には未成年の常習者までいるくらい。


 「害が全くない」と言いましたが、あくまでそれは「成分的には」というだけのこと。実際には、異常行動を取る者も多かったのです。

 ただし、「因果関係が証明されない」として、現状では法律で取り締まることができず、「できる限り使用をひかえるように」と国の通達があるだけでした。

 それも、国によって対応がわかれており、日本などはかなり厳しく「使用しない方がよい!」と訴えかけていましたが、自由の国アメリカでは、むしろ州単位で自ら推奨するような地域も多かったのです。


 特にマズいのは「中毒性」です。販売会社は「その気になれば、いつでもやめられる」とうたっていましたが、実際には1度手を出すとなかなか抜け出せず、タバコやアルコールよりもはるかに中毒性が高いというウワサになっています。

 ただし、これもウワサの域を出ず、「理論上は中毒性は全くない」とされています。


         *


 ところ変わって異世界のある地域。

 国家公務員の井上虎五郎も、ここのところ、マジックドラッグの件で頭を悩ませていました。

 当初の任務である「異世界復興」も、かなりのスピードで進み、そちらの仕事は一段落したところです。けれども、違法性を証明できないマジックドラッグの地球への輸出を止められないでいたのです。


「まったく。次から次へと、やっかいな問題が立ち上がるものだ。もっとも『退屈しない』という意味では幸せなのかも知れないが…」


「『人を殺すのは貧しさでも不幸でもない。退屈である』という言葉もあるくらいですからね」と、こちらの世界(異世界)で雇ったクロチェリスという名の男が言ってきます。


「なんだそれは?異世界の格言か?」と、虎五郎は尋ねます。


「地球にはありませんか?似たような言葉?」


「さあ?どうだろう?聞いたコトがないな。オレが無学なだけかも知れんが」


「哲学者の言葉ですよ」


「哲学ねぇ。まあ、確かにどこかの哲学者が言いそうなコトではあるが…」


(それよりも、問題はマジックドラッグの方なんだよなぁ。さて、どうしたものか?)と、虎五郎は考えます。


 この続きは、また明日の晩に♪

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