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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~いろいろな小話~
37/1003

~第36夜~「大商人メルキデウスと3人の娘(その2)」

 メルキデウスは、若くして交易の旅へと出ました。

 そこは異世界での出来事ですから、嵐に見舞われたり、様々なモンスターと出会ったりしながら、旅を続けます。

 おかげで命を落としかけたことも、片手の指では足りないほど!代わりに、近場で商売をしていた商人仲間とは比較にならないほど大きな利益を上げることに成功しました。

 また、未開の地で何人もの新しい仲間を見つけ、船に乗せ、自分の国へと連れ帰ります。新しい仲間たちは、メルキデウスの故郷で商売を手伝ってくれ、ますます交易の規模を大きくしていくのでした。


 さて、メルキデウスもいい年になり、妻をめとることにしました。

 この手の物語ではよくあるコトなのですが、冒険先の王国でお姫様を救い、結婚して自分の国へと連れてきました。


 妻は、次々と子供を産みますが、全員女の子でした。それも、3人!

 一番上の娘は「アルザ」と名づけられます。

 次女の名は「バールズ」

 末娘は「スカーラ」


 アルザは成人し、父親と同じく商人をやっていた男と結婚します。そうして、夫婦で父親のメルキデウスの商売を手伝うことになりました。


 次女のバールズは、冒険者であるクロワさんを夫にします。これは、以前お話しした

「異世界の単身赴任生活(第9夜・第10夜の安藤総一郎が異世界で個籍を作る話)」などに登場した男で、結構いい加減な性格でありました。

 女性関係にもふしだらで、結婚してからも浮気を繰り返します。おかげで、バールズとは夫婦ゲンカが絶えません。

 …とはいえ、当時のクロワさんは「ドラゴンキラー」として名を()せ、業界でも、ちっとは名を知られた人物だったのです(もっとも、倒したのはドラゴン族の中でも一番弱いタイプのドラゴンでしたが。それでも、そこそこの実力はあったようです)


 末娘のスカーラは、上の二人の姉の姿を見て育ったので、異世界では結婚せず、地球へと遊びに行きます。

 これも、以前にお話しした「商人の娘(第13夜・第14夜)」に登場しますね。

 スカーラは地球の日本という国でパソコンや経理などを学び、結婚してこちらの世界へと帰ってきます。今は田舎で温泉宿を経営し、家族みんなで幸せに暮らしているということです。


 ある時、メルキデウスが娘のアルザに向かって言いました。

「アルザや、アルザ。ワシのメガネ、どこへやったか知らんかな?」

「もう~、お父さんったら、頭の上にあるでしょう!またなの!」


 メルキデウスが自分の頭の上に手をやると、確かに自分のメガネが耳から頭にかけてかかっています。

「おお!またやってしもうたわ。スマン、スマン。ワシも、もうろくしてしもうたようじゃ」

「お父さんも、もういい年だからねぇ。これが、若い頃、世界を股にかけた大商人のなれの果てだとは…誰も信じてくれないでしょうね」

「いやいや、それは本当じゃよ。なんなら、若い頃の話をしてやろうか?」

 その言葉を聞いて、アルザが瞬時にピシャリと否定します。

「いいえ、もう結構ですッ!子供の頃から何度聞かされてきたと思うの?耳にクラーケンができる程よッ!」

「そうか?それは残念じゃのう。それにしても、地球からやって来たこの『老眼鏡(ろうがんきょう)』という発明、まったくもって便利なものじゃ」

「確かに。他にもいろいろと便利になりましたねぇ。地球への道が開かれて、うちのお店も、ますます繁盛してますから」


 地球との貿易が始まって大きな利益を上げたのは、なにもこちらの世界の住民だけではありません。

 地球の人々にとっても、利はありました。未知の魔法文明が流入してきて、数百年を一気に飛び越えたような大きな進歩を遂げていたのです。まさに「パラダイムシフト」と言えるでしょう。


 そんなある日、メルキデウスのお店に、ひとりの旅人がやって来ます。旅人は、手にした品を見せながら言いました。

「探してもらいたい品があるのだが。もしも、私の望みの商品が見つかった、代わりにこれを差し上げよう」


 店番をしていたメルキデウスの娘アルザが目をやると、旅人が手にしていたのは、古ぼけたカーテン一式でした。

「お客さん、これは?」と、アルザが尋ねると、旅人は答えます。

「これは魔法のカーテンでな。このカーテンを吊り下げた窓から外を眺めると、別の世界の景色が見えるという代物(しろもの)なのだ」

 ここは地球からすると異世界でありましたので、この手の品が結構出回っているのです。


 魔法のカーテンの説明を聞いてから、アルザはもう1度尋ねます。

「はは~、なるほど。で、探してもらいたい品というのは?」

「何かこう…動物を使役(しえき)する系の道具が欲しいのだが。牛とか羊とか、自分の意のままに操るといった」

「ああ~、なるほど。ちょっと父にきいてみましょう」

 そう言って、アルザは店の奥へと引っ込みます。


 しばらくすると、アルザは、父親のメルキデウスを連れて帰ってました。

「昔はよく出回っていたんですけどね。最近はどうでしょう?倉庫を確認してみないとわかりませんが、ちょっと時間がかかるかも知れません。その場合は、お取り寄せというコトになりますが、いかがなさいます?」と、メルキデウスは商人の声になって答えます。普段、もうろくしかけているとは思えないくらいハキハキとした声で。


 おっと。そろそろ夜が明けそうですね。

 それでは、この続きはまた明日の夜に…

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