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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~テーラやサルサラの物語~
337/1003

~第336夜~「退屈な星のサルサラ(その20)」

 サルサラ、ソルタリオ、アルマ・フォリアの3人は、それまで頼り切りだったテーラ商団から離れ、独自に旅を始めます。

 テーラ商団の巨大トラックはリビングやバスルームなどがついていて、快適に旅をするにはいいのですが、図体(ずうたい)がデカ過ぎて、大都市間しか移動できないという欠点があります。

 それに比べて、バスや電車を使った移動は気軽に小さな町や村を訪れることができます。

 おかげでサルサラたち3人は、これまで以上に刺激的な日々を送ることになりました。


 サルサラは、今まで訪れた街の中で、特に気に入った場所をいくつかピックアップすると、そこを拠点にして生活することに決めました。

 たとえば、センシビリティから南に下ったところにある小さな町のレシーバル。この町は人口も少なく、買い物などは多少不便もありましたが、その代わりにゆったりとした時間を過ごすことができます。

 レシーバルに家を借り荷物を置いて、周辺地域へと旅に出かけました。

 これまで通り3人で行動を共にすることもありましたし、バラバラに暮すこともあります。たとえば、サルサラとソルタリオが旅に出ている間、アルマ・フォリアは自宅で創作に没頭するといった感じで。


 レシーバルの周辺を旅し尽くすと、家ごと引っ越しをして、また周辺地域を探索します。ある時は海の側で、ある時は山岳地帯で、大都市で暮すこともあれば、砂漠での生活を体験したりもします。


 1つの星に飽きると、次の星へ。その星にも飽きると、さらに次の星へと移住し続ける3人。いえ、3人ではありません。移住を繰り返すたびに仲間の数は増え、どんどん大所帯となっていきます。まるで、かつてテーラがそうしていたように…


         *


 10年の時が過ぎました。

 長い旅の果てに、サルサラは疲れ果て、ひとり自分の星へと帰っていきました。

 アルマ・フォリアは数多くの経験を積んだ後、メディア王チャルラタンに協力し、「世界からお金をなくすプロジェクト」のため、実験都市グランエクスベンチャーで専属の芸術家として暮しています。

 そして、ソルタリオはアレからもずっとひとりで旅を続けていました。


 ある時、ソルタリオは、1つの星へとたどり着きます。

 そこは何もない星でした。かつて栄華を極めた城下町にポツンと城がひとつあるばかり。町には誰も住んでおらず、城に居るのは男がたったひとりだけ。随分と年を取った男でした。

 ソルタリオが城の中にある大広間に足を踏み入れると、玉座に老人が座っております。今にも死にかけの老人が。

 ソルタリオは老人に向かって話しかけました。

「あなたが伝説の人物ですか?」

 老人はしばらく黙ったまま、何ごとか考える風をしていましたが、やがてゆっくりと口を開きます。

「来客とは珍しい。伝説?なんの伝説かなぁ?」

「世界と世界をつなぎ合わせたという伝説ですよ。そうして、次から次へと世界間に道を作り、交流をうながした。今の世界の発展があるのも、あなたの功績でしょ?クロガネカズオさん」

「ハテ?そんなコトもあったかなぁ?」

「あったんですよ。あまりにも年を取り過ぎて覚えていらっしゃいませんか?それとも、ただの謙遜ですか?」

「謙遜…どうだろうね?これを謙遜と呼ぶかどうか。かつての私はそれが楽しかった。正しいとも思っていた。だが、今になって思い返してみると、疑問に思える。君はどう考えるね?私がやってきたコトは正しかったのか?それとも、単なるお節介に過ぎなかったのか…」

「“正しい”かどうかはわかりません。あるいは、世界はバラバラであった時代の方が(みな)幸せであったのかも。ただ、“おもしろく”はなったと思いますよ」

「おもしろくはなった…か。確かにな。いい回答だ」

「それに、どうせいつかは()げる発展ならば、スピードは速いほうがいい」

 ソルタリオの言葉に、老人はポツリと答えます。

「だが、早すぎる発展は崩壊も招く…」

「かも知れません。それでも、人類はその崩壊の危機さえも乗り越えるでしょう。僕はそう信じています」

「信じている…か。なるほど。信じるのはよいコトだ。何ごとも信念がなければ達成できぬからな。それが達成してよい夢かどうかは置いておいても…」


 しばらくの間があって、今度は老人の方から先に口を開きました。

「ところで君は、何をしにこの星にやって来たのかね?まさか、私に会いに来ただけとは言うまいな」

「いえ、あなたに会いに来たんです。そして、お話を聞きたかった。それだけです」

「そうか。では、目的は達したわけだな。満足したかい?」

「ええ。まあ…」


 またしばらくの沈黙の時が流れ、再び老人の方から言葉が発せられます。

「私の命はもうすぐ尽きる…」

 ソルタリオは冷静に答えました。

「そのようですね」と。

「このまま()ちて果てるべきかとも思っておった。だが、これも何かの縁だろう。もしも、君に…その意思があるならば。私の(あと)()いでみるかい?」

「継ぐ?どういう意味ですか?」

 ソルタリオは、さっきよりもほんのちょっとだけ感情がこもった声で答えました。


 さて、この続きは、また明日の夜に語るといたしましょう。

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