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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~テーラやサルサラの物語~
336/1003

~第335夜~「退屈な星のサルサラ(その19)」

 ファッションとパッションの街センシビリティで大成功したサルサラと芸術家のアルマ・フォリア。

 ところが、飽きっぽいサルサラは、そろそろこの街におさらばしたがっている様子。それに対して、アルマ・フォリアの方は創作意欲が湧きまくっていて、まだまだこの街で新作を発表したがっています。


「とにかく、アタシはもう飽きちゃったの!サッサと次の街に行きましょうよ!」

 サルサラの剣幕に、アルマ・フォリアは慌てました。

「ま、まあ…ちょっと落ち着いてくれ!もちろん、君にもメリットはあるんだよ!ホラ、考えてみてごらん。ここで稼いだお金を全部使ってしまえば、君はまた一文無しになってしまうだろう?」

「だったら、またテーラ商団で働きながら気ままな旅を続ければいいわ」

 そこでアルマ・フォリアは妥協案を提示します。

「わかった!じゃあ、こうしないかい?もしキミが今から半年後にもまだこのセンシビリティから出たいと思っていたら、その時また一緒に旅に出ようじゃないか!」

 アルマ・フォリアの提案に、サルサラは少し考えて答えました。

「ウ~ン…半年かぁ。アタシは、今すぐ旅に出たいんだけどな~」

 そこにソルタリオも加勢します。

「僕も、もうちょっとこの街にいた方がいいと思うな。お金なんて、そうそう稼げるものじゃないし。波に乗ってる時にガンガン稼いで、残りの人生はゆったり暮した方がいいと思うよ」

「アンタはお金使うばっかりでしょ!自分で稼がない人は黙ってて!」

「ハ、ハイ…」

 サルサラの勢いに押されて、シュンッ…と縮こまってしまうソルタリオ少年。

「とにかく半年!あと半年だけ我慢してくれ!そうしたら、あとは君の好きにしていいから!」

 頭を下げて頼むアルマ・フォリアを前に、サルサラの方もそれ以上強く出ることができませんでした。


         *


 結局サルサラは、アルマ・フォリアの言う通り、もう半年間このセンシビリティで暮らすことにします。

 ファッション雑誌の写真撮影だとか、テレビCMの出演だとかで多忙な日々を過ごすサルサラ。段々と気が滅入(めい)ってきました。

「ああ~あ、早くこんな生活から抜け出したいわ~」

 忙しい時間の合間を縫って、公園のブランコに揺られながらひとりごとをつぶやくサルサラ。

「そもそも、アタシってなんで家を出てきたんだっけ?」

 キ~コ~キ~コ~と揺れるブランコ。

「あの退屈な星を逃げ出してきたはずじゃなかった?なのに何。この生活だって、結局はカゴの中の鳥じゃないの。そりゃ、あんな星で毎日学校に通ってるよかマシだけど。人に命じられるまま生きてるって意味じゃ、おんなじよ!」


 サルサラはこの街に来て、偶然モデルとしてデビューして大成功して、みんなからチヤホヤされる生活を送っています。もちろん、お金もたくさん入ってきます。それも使い切れないくらい!

 豪華なホテルに泊まり、欲しい物は何でも手に入る。そんなワガママもできるようになりました。

 きっと、それで幸せを感じる人もいるのでしょう。けれども、サルサラは全然幸せじゃありませんでした。


 幸せって何でしょう?

 それは、人によって違うモノ。サルサラにとっての幸せは、自分の意思で人生を決め、自由な時間を生きていくコト。今の生活には、それがありません。ならば、どんなにみんなから褒められ、どんなにお金があろうとも、それは決して幸せなんかじゃないのです。

 サルサラは、センシビリティという街に縛られて暮らしていました。人の目やビジネスや、いろんなモノに縛られて生きていました。そうなると、彼女は死んでしまいたくなるほど心が苦しくなってしまうのです。

「やっぱり、こんなの間違ってる!アタシらしくもない!自由を求めて、あの星を逃げ出してきた日から、アタシはこうやって生きていくって決めたんだ!」


 サルサラは、思い立ったらすぐ行動に移すタイプです。

 急いでホテルに帰ると、すぐにこう宣言しました。

「アルマ・フォリア!ソルタリア!行くわよ!」

 ふたりはとても驚きます。

「行くってどこに?」

「どこでもいいわよ!とにかくこの街を出るの!もうこれ以上1秒だって、ここにはいられない!嫌なら構わない。置いていくだけだから!」

 サルサラがこうと決めたら、もう誰にもくつがえせないコトはふたりともわかっていました。

 そこで、ソルタリオはこう答えます。

「しょうがないな。一番最初に『君を退屈させない!』って約束したし。行こう!この街を出よう!君が退屈しているというならば」

 アルマ・フォリアも渋々(しぶしぶ)賛同します。

「やれやれ。せっかくペースに乗ってきたところだっていうのに。お金や人気はどうにしろ、かなら創作意欲が爆発してたんだけどなぁ…」と、名残(なごり)()しそうにしつつも、旅の準備を始めるのでした。


 こうして、センシビリティの街を飛び出した3人は、再び冒険の旅へと出ます。

 結構な額のお金を稼いだ3人は、今度はテーラ商団に頼らず、風の向くまま気の向くまま、街から街へと移動するのでした。

 さて、この続きは、また明日の夜に語るといたしましょう。

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