~第333夜~「退屈な星のサルサラ(その17)」
せっかく生み出した傑作を無料で寄付すると言いしたアルマ・フォリア。
「まったく、相変わらず変なコトを考える人ね…」
サルサラがつぶやくと、みんな一斉にうなずきました。
こうして、少女の石像こと「自由天使の願い」は、多くの人たちに鑑賞してもらうため世界中を駆け巡った末、メディア王チャルラタンの手に渡ります。
やがて「自由天使の願い」は、「お金を必要としない世界」を目指して作られた実験都市グランエクスベンチャーの中心地に飾られるコトになるのでした。
*
次の目的地に向かって走るトラックのリビングの中、サルサラがプリプリしています。
「それにしても、もったいないわね。アンタ、一体、何考えてるのよ?あんな貴重な作品を無料であげちゃって!」
創作に全エネルギーを使い果たしたアルマ・フォリアは、以前のような根暗な人間に戻って言いました。
「別に…僕はもうお金ならば生涯使い切れないほど稼いじゃったからね。残りの人生は好きな時に好きな作品を作って、好きな人にプレゼントして終わるよ…」
「まあ!うらやましいコト!世の中、お金がなくて苦労してる人たちが大勢いるって言うのに」
「お金なんて、たいした価値ありはしないよ。いずれ、この世界から消え失せる時も来るだろうし…」
「そうなればいいけどね。果たして、いつになることやら?」
幼い頃からお金に苦労してきたソルタリオも言います。
「お金のない世界かぁ。そんな世界が来れば、幸せだろうなぁ。なにしろ全く働かなくても生きていけるんだから」
その言葉を聞いて、アルマ・フォリアがボソッとつぶやきます。
「そうなったら、僕は毎日絵を描いて暮らしていこうかな…絵を描いたり、彫刻を彫ったり、建築物のデザインをしたり…」
サルサラがあきれたように返します。
「そんなのアンタの今の生活と全く変わらないじゃないの」
「あっ、そっか」
そうこうしている内に、テーラ商団の巨大トラックの一団は、次の街へと到着します。
*
「ここはファッションとパッションの街、センシビリティさ。見てみな!みんな最高にイカしたセンスの持ち主だろう?」
街の住民の説明を聞きながら、アルマ・フォリアは目を輝かせています。
「へぇ!いろんなお店があるじゃないか!服屋さんとか靴屋さんとかアクセサリーショップとか…ああ~!いいぞ!ここは僕向きの街だ!」
街の通りには様々なファッション店が建ち並び、商品が所せましと並べられ、行きかう人々は奇妙な服装ばかり。
「どうでもいいけど、先に積み下ろしの仕事を終わらせないと…」と、サルサラが言いますが、どうやら耳に入らなかったようで、天才芸術家はダ~ッと駆け出して、街へと消えてしまいました。
「まあ、いいわ。あの人がいても、どうせ役に立たないし。アタシたちもサッサと仕事を終わらせて、街に遊びに行きましょう」
サルサラの言葉に、ソルタリオやテーラ商団のメンバーたちは「賛成~」とうなずきました。
*
さて、先に1人で駆けていってしまったアルマ・フォリアは、通りに並ぶ店のショーウインドウの前で立ち止まり、ガラスの向こう側のマネキンたちが着ている奇抜なデザインの洋服をウットリと見つめていました。
「素晴らしい!まるで洋服の宝石箱だ!」
そして、店の中に入り、店員に「この店で1番安いTシャツを売ってくれ!」と注文しました。
ところが、店員は首を横に振り、こう答えました。
「申し訳ございません。当店ではそのような品物は取り扱っておりません」
「なんだって!?Tシャツを売らないのか?信じられない!」
「当店では、そのようなダサい服…いえ、デザインセンスのない商品は置いておりません。あしからず」
ガックリとうなだれる天才芸術家。
「なんてこった…Tシャツを置いてないだなんて。Tシャツは全てのファッションの基本。最もデザインセンスを問われる衣料品だというのに…」
仕方なくボ~ッと1人で通りを眺めるアルマ・フォリア。目の前を次々と奇抜な格好をした人たちが通り過ぎていきます。
ある人は背中に翼を背負い、またある人は頭に角をつけ。さらにある人は顔にペイントを施し、口には牙まで生やしています。
「なるほど。これが流行の最先端というヤツなのか…」
アルマ・フォリアは感動に打ち震えました。
「よし!決めた!僕も、この街の住民に負けない服を作ってみせるぞ!」
そう宣言して急いできびすを返すと、再びトラックのリビングへと駆け込みます。
「な~に?アンタ?もう帰ってきたの?アタシたちは、これから出かけるところだっていうのに」
驚くサラサラの言葉も耳に入らないようで、アルマ・フォリアはペンとスケッチブックを取り出すと、いきなり頭の中のイメージを紙に叩きつけ始めます。
「キエエエエエエエエエエエエエエエ!」と奇声を発しながら創作活動に没頭する芸術家をよそに、サルサラとソルタリオは街へと遊びに行ってしまいました。
さて、この続きは、また明日の夜に語るといたしましょう。




