~第332夜~「退屈な星のサルサラ(その16)」
移動中の巨大トラックのリビングの中。
「うおおおおおおおおおおお!!すごい!!本当にすごいぞ!!!これだ。僕が目指していたのは、こういう世界なのだ!!」
アルマ・フォリアは、テレビの前で大興奮しています。
「これは、まさに僕の夢そのもの!僕は、こんな世界を実現したくて、今までがんばってきたのだ!ヨッシ!僕はやるぞ!」
創作意欲を駆り立てられた天才芸術家は、瞬時に自分の世界へと没頭しました。
「キッケェエエエエエエエ!!タッタッタッタッタッタ~!!」
とんでもない情熱とスピードで下絵を完成させていくアルマ・フォリア。ちょうどそこへ仕事が終わったサルサラとソルタリオが部屋に入ってきます。
「な、なにごと!?」
驚くサルサラを制するソルタリオ。
「見なかったコトにしましょう…」
そう言って、ふたりはそっと部屋から出て行きました。
1度火のついたアルマ・フォリアは、おたけびを上げながら創作に没頭します。
筆を取り、ノミを振るい、寝食を忘れて目の前の作品へと立ち向かいました。
*
そして、数日後…
「できたぁあああ!!!」
アルマ・フォリアは、渾身の力作を仕上げると、そのままバタンキューとベッドへと倒れ込み、グーグーと眠り続け、14時間以上も起きてきませんでした。
急に静かになったリビングに、様子を見にやって来たサルサラとソルタリオ。そこには一体の石像が残されています。
「大変な騒ぎだったわね…」
あきれるサルサラ。
「一体、何を作ったんだろう?」
興味津々のソルタリオ。
「んもう、しょうがないわねぇ。また、くだらないモノを作ったんじゃないでしょうね?」
そう言いながらも、サルサラは石像の前に立つと、ジックリと眺め始めました。
「アラ?ちょっと変わってるけど、結構いいんじゃないの?これ、女の子よね?」
「僕にもそう見える。けど、この背中から生えてるのって…」
ふたりの前に立っていたのは、少女とおぼしき像。少女は何かを求めて、天に向かって手を伸ばしています。ただし、背中からは羽根だとか腕だとか足だとか、他にも機械のアームやよくわからない物体がいろいろと生えているのでした。
しばらくの間、少女の石像の前に立ちすくみ鑑賞を続けるふたり。
やがて、サルサラの方がポツリともらしました。
「芸術家先生の作る物は理解しがたいわね。だけど、なんだか心に“くる”ものがあるわ。この女の子は何かを求めている。きっと“自由”ね。自由を求めて手を伸ばしてるんだわ」
「僕にもそう思えます。今はまだ手にすることのできない自由という名の希望。はるか高みに向かって、それを求めてあがいてるんですよ」
ソルタリオの言葉を聞いたサルサラは、フッと笑いました。
「そうかもしれないわね。けど、この子は何を考えているのかしら?自由を手に入れたあとのコトなのか。あるいは、心の底では『自由なんて手に入らない』と、あきらめてしまっているのかもしれない。絶望の中でわずかに希望にすがっているだけなのかも…」
すると、グッスリと眠っていたはずのアルマ・フォリアが突然ベッドの上に立ち上がり叫びました。
「芸術は!解放だ!」
それだけ発すると、再びベッドの上に倒れ込み、スースーと眠り始めます。
驚くサルサラとソルタリオ。
「あ~、ビックリした!なんだ寝言か…」
「それにしても“芸術は解放”か。一体、何から解放されるんでしょうね?世間のしがらみか偏見か…」
「あるいは“自分自身から”かもね」
*
やがて、少女の石像を見ようと、トラックのリビングに人が押し寄せてくるようになりました。
テーラ商団で働いているスタッフはもちろんのこと、訪れる先々の街で「我も!我も!」とうねる波のごとく鑑賞者がやって来ます。
「大変なコトになったわね…」
ため息をつくサルサラ。
「ま、いいんじゃないかな。おかげで、しばらく退屈せずに済みそうだし。退屈は嫌いだったろう?サルサラ」
微笑むソルタリオ。
石像は、アルマ・フォリアの作った物の中でも特に出来がよく、その美しさは人々を魅了してやみません。そうして、あちこちの美術館やら大富豪やらが「ぜひとも売ってくれ!」と打診してきました。
けれども、制作者であるアルマ・フォリア首を縦には振りません。
「この作品は誰にも売る気はないよ」と言って、どんなに大金を積まれても決して譲ろうとはしませんでした。
「じゃあ、どうするのよ?このままトラックのリビングに放置しておくつもり?」
サルサラの質問にアルマ・フォリアは自信満々に答えます。
「寄付するのさ」
「キフゥ~!?誰に?美術館?」
「チャルラタンにさ」
「チャルラタン!?メディア王の!?テーラさんの知り合いの!?」
「そうさ!僕は彼の思想に感銘を受けた!彼がいなければ、この作品は誕生しなかった。だから、コイツは彼の物さ!」
それを聞いていた周りの人たちは、あきれて物も言えませんでした。
さて、この続きは、また明日の夜に語るといたしましょう。




