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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~テーラやサルサラの物語~
330/1003

~第329夜~「お金のない世界(その2)」

 実験都市グランエクスベンチャーで始められた「世界からお金をなくすプロジェクト」

 最初に行われたのは「配給」でした。


 この街では、誰でも3食キッチリと食べることができますし、もちろん料金も必要ありません。街のあちこちに設置された公共の食堂に行けば、いつでも食事ができるようになっているのです。 

 住民全員に身分証を兼ねたカードが1枚ずつ配られ、このカードを使うことで食事ができるようになっています。お店でピッとカードをかざすだけで、メニューの中から好きな料理を無料で選ぶことができるシステム。いわば、小学校で提供されている給食を大人でも利用できるようにしたようなものです。

 お店の種類も様々で「定食屋」「ハンバーガー屋」「イタリアンレストラン」「カレー屋」「トンカツ屋」「すき焼き屋」「うどん・そば屋」「お寿司屋」などなど。その日の気分でどのお店を選んでも構いません。

 1日に3度まで利用することができ、翌日になるとカウントがリセット。また1日に3度まで使えるという仕組み。1日に2食しか食べなかったからといって、翌日4食利用するといった風に累積はできません。また、直接お店で食べずともテイクアウトして持ち帰ることもできます。


 市民は、無料で家を借りることができますし、電気・水道・通信設備などもお金を払わずに使用可能!

 服や下着に関しても、最低限のレベルで定期的に提供されます。シャンプーやリンス、セッケン、ハミガキ粉など、必要な日用品も配給されるシステム。

 そうなると、無制限に水や電気を使用する者が現れるもの。そこは“教育”で対応しました。

 たとえば、公園に設置してある水道って、誰でも好きに使えるようになっていますよね?けれども、使いたい放題だからといって、ジャ~ジャ~と水を出しっぱなしにする人はいないはず。

 それって、子供の頃からお父さんやお母さんや近所の人に「水をムダ使いしちゃいけません!」って、教えられて育ってきたからでは?

 同じように「いくら無料で提供されるからといって、必要もないのに水や電気を際限なく使うのはやめましょう!」と、この街の入居時に注意されます。

 ほとんどの人たちは、ちゃんとルールを守って生活しています。もし、みんながルールを守らなくなったら、このプロジェクト自体が終わりかねないとわかっているからです。

 もっとも、電気や水道を少々無駄づかいしたくらいでは、全体からするとたいしたダメージにはなりませんけどね。


 仕事は基本的にボランティア。みんなが好きな時に好きなだけ働くというシステム。もちろん、仕事によってはある程度の拘束時間が決まっていますが、それでも無理のないように働けるように配慮されています。

 ただし、仕事時間や量に応じてポイントが付与されます。このポイントでちょっとしたプレゼントがもらえたり、お得なサービスが受けられるようになっています。

 ある意味、これがお金の代わりになっているとも言えます。ただし、ポイントがなくなったからといって、生活が成り立たなくなったり、自殺に追い込まれたりはしません。

 最低限の衣食住は保障され、贅沢がしたい人はだけは余分に働くという仕組み。公共の食堂を利用し、いつも同じ服を着て生活するだけなら、全く働かずに生きていくことも可能です。

 地球の日本という国に「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という憲法の条文がありますが、まさにその言葉を体現したような街になっているわけです。


 病院や消防署の他に警察も存在していますが、犯罪が起る確率は非常に低く、警察官はいつもヒマをしています。

 そもそも生きていくのにお金が要らないので、危険をおかしてまで犯罪に手を染める必要がないのです。

 トラブルが起るとしたら、恋愛など人間関係のもつれくらいのもの。それも、タマ~にしか起りません。


 最初に大きな問題となったのは、外界との貿易でした。

 たとえば、読みたいマンガがあったとして、そのマンガをどうやって手に入れるのか?お金を使わざるを得ませんよね?

 同じようにテレビやパソコンが欲しい人は?物を配送するにもお金がかかります。

 なので、最初から完全に何もかもを無料化できたわけではありません。


 それでも、実験当初は世界中の人たちがこのプロジェクトに興味を持ち、必要なくなった物資を送ってくれていました。

 たとえば、着なくなった衣服、読み終えた本。タンスに本棚。テレビやノートパソコン。ドライヤーにボードゲーム。野球やサッカーやスケートボードの道具などなど。

 市役所の前に巨大なボックスが置いてあって、送られてきた品々はその中に入っています。市民は自由に中古品を持って帰ることができ、家具や遊具を充実させることができるのでした。


 その後、「仕事をすることでもらえるポイント制度」を徐々に拡充していき、段々と交換できる品を増やしていきました。数年も過ぎると、大抵の物はポイントと交換できるようになります。


 さて、この続きは、また明日の夜に語るといたしましょう。

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