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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~テーラやサルサラの物語~
327/1003

~第326夜~「退屈な星のサルサラ(その14)」

 自分の創作能力に自信を失いかけているアルマ・フォリアに、サルサラは提案します。

「だったら、私たちと一緒に行きましょう!そうすれば、きっといい作品も作れるようになるはずだわ!」と。

 サルサラの提案に驚くアルマ・フォリア。

「旅に出るだって!?君たちと一緒に?」

 すぐにソルタリオも反論します。

「何言ってんだよ、サルサラ。この街からアルマ・フォリアがいなくなったら、どうなると思ってるんだ?困る人たちが大勢いるだろう」

「いや、今や僕の代わりならばいくらでもいる。似たような作品を量産するだけの代わりなら。ならば、それも一興かも。君たちと一緒に旅を…ウン!それも悪くないな!」

「じゃ、決まりね!」

 こうして、ふたりの旅に新しい仲間が加わりました。


         *


 翌日、アルマ・フォリアのアトリエに大勢の弟子たちが集まっています。

「じゃあ、行ってくるよ。今までありがとう」

「師匠、お元気で…」

「さよなら、アルマ・フォリアさん」

 弟子たちや使用人が口々に別れの言葉を伝えると、アルマ・フォリアはニッコリと笑って答えました。

「何を寂しがることがある!これは僕の門出(かどで)なんだ!笑って送り出してくれよ!」

 無理矢理に笑顔を作って見送る弟子たちを背に、天才芸術家はズンズンと歩みを進め去って行きました。


         *


 さて、新しく旅の仲間となったアルマ・フォリアでしたが…

 これが全くの役立たず!(はる)か年下のソルタリオにすら遠く及びません。

 なにしろ、芸術に関するコト以外は何もしてこなかった人間です。料理や洗濯はもちろんのこと、簡単な荷物運びすらまともにできやしない始末。

 せっかく、テーラ商団の人たちが仕事を紹介してくれても、役に立たないどころか迷惑をかけてばかり。

 あげくの果てには、みんなから「もう手伝わなくていいから、黙ってそこに座ってて!」と命じられてしまいました。


「ゴメンよ。僕は、こういうの苦手なんだよ。フツーの人ができるコトは何もできない。その代わり、フツーの人ができないコトができる。そんな風に進化してしまったんだ…」

 アルマ・フォリアの落ち込む姿を見て、サルサラがなぐさめの言葉をかけます。

「仕方ないわよ。人には得手不得手というモノがあるんだから。きっと、その内にアルマ・フォリアさんにもできる仕事が見つかるわ」

「だといいんだけど…」

 その代わり、天才芸術家はとんでもない大金持ちでした。ですから、そもそも無理をして働く必要すらなかったのです。


 巨大倉庫に置いてあるイスにちょこんと座り、働きアリのごとく作業をこなしている商団のメンバーを眺めているアルマ・フォリア。サルサラや年下のソルタリオさえコマネズミのように動き回っているのに、自分だけ何もしていない姿に罪悪感を感じてしまいます。

「せっかくあの街と屋敷を飛び出してきたというのに、これじゃあ、あまり意味がないんじゃないかなぁ~?」

 そうつぶやくアルマ・フォリアにサルサラが一言。

「大丈夫!だ~いじょうぶだから!邪魔しないようにそこに座ってて!出番が来たら声をかけますから。きっと、今に何かいい仕事が見つかりますって!」

 そうは言われたものの、いつまで経ってもいい仕事など見つかりません。ただ、テーラ商団の人々についていき、巨大トラックに乗せられて、ご飯を食べて、リビングでテレビを眺めて、ベッドで眠るだけの日々。

 こんなコトで、新しい芸術作品のアイデアなど湧いてくるはずもありません。


         *


 そんなある日、巨大トラック内にあるリビングでテレビを眺めていたアルマ・フォリア。画面の中に映し出された人物に興味を引かれます。

 それは、例のメディア王チャルラタンでした。


「ミスター・チャルラタン。今回の提案は、またもや世間をさわがせていますね。『世の中からお金をなくす』というのは、あまりにも突拍子(とっぴょうし)もない発言すぎませんか?」

 番組司会者の言葉に冷静に答えるチャルラタン。

「いえ、決してそんなコトはありません。“お金のない社会”というのは、別に僕が言い出した話ではなく、昔からあるアイデアなんです。ただ、これまでは条件が整っていなかっただけで」

「条件?」

「ハイ。世の中からお金をなくすためには、それなりの“文明レベル”が必要なんです」

「文明レベル?…と言いますと?」

「そうですね。たとえば、衣食住の充実。特に食糧は重要です。最低限みんなが満足するだけの食べ物を確保することができなければ」

「食糧というと、たとえば、お米や小麦、肉や魚や野菜ということですよね?」

「その通り。そんなに贅沢じゃなくてもいいんです。最低限栄養が摂取できて、おなかがふくれるようであれば」

「現在は、その条件が整ったと?」

「ハイ。それに加えて、仕事の自動化ですね。コンピューターやAIの発達した現在の文明レベルであれば、人々はそこまであくせく働かずとも済むはず。これが、もっと進んでいけば、人類の労働時間はどんどんゼロに近づいていきます」

 天才芸術家のアルマ・フォリアは、画面に食い入るように集中しています。


 さて、今夜もお時間となったようです。

 この続きは、また明日の晩に語るといたしましょう。

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