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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~テーラやサルサラの物語~
326/1003

~第325夜~「退屈な星のサルサラ(その13)」

 天才芸術家アルマ・フォリアの屋敷を訪れた帰り道。サルサラとソルタリオは、公園のブランコに乗っている怪しい人物に声をかけられます。

 なんと!彼こそが本物のアルマ・フォリアだと言うのです。


「ウッソ~!?」とサルサラは驚きます。そうして、ブランコに乗っている人物を上から下までジロジロと観察してみますが、どう考えても“芸術家”という感じはしません。どちらかといえば、街の地下道に寝泊まりしている浮浪者といった風体です。

「本当だとも。もっとも、僕自身は天才芸術家とは思ってないけどね。ただ、モノを作るのが好きなだけな人間。それが結果的に世間に認められてしまったというだけのコトさ」

「じゃあ、あのお屋敷にいた人たちは誰なんですか?」と、ソルタリオが質問します。

「ああ~、アレは僕の弟子たちさ。といっても、別に僕が認めたわけじゃないけどね。勝手にやって来て、勝手に住み着いて、勝手に作品を作ってるだけ」

「なるほど~。それで、あんなにたくさんいたんですね」

 納得するサルサラ。

「それでも、僕と似たようなモノは作れるようになってしまった。そういう意味では、彼らも“本物のアルマ・フォリア”だと言えなくもない。最近発表されている作品は、みんな彼らが作ってるのさ」

「名義だけ貸してる?」と、ソルタリオ。

「ま、そう(とら)えてもらってもいい。一応、名義上は“アルマ・フォリア一派”となってるからね。別にウソをついてるわけじゃない」

「じゃあ、あなたは何をやってるの?」

 サルサラの質問に、アルマ・フォリアはキ~コ~キ~コ~とブランコをこぎながら答えました。

「何をやってるんだろうね?ほんと…何やってんだか」

 しばらくの間、沈黙が流れます。


 それから、再びアルマ・フォリアが口を開きました。

「僕は、新しい作品が作れなくなったんだ。絵画も、オブジェも、建築物も、な~んにも。だって、何を作っても似たり寄ったり。それだったら、今や弟子たちだって似たような物が作れちゃう。僕に存在価値はなくなったんだよ」

「でも、あなたの作品は一世を風靡(ふうび)したんでしょ?」

「かつてはね。けど、そんなのは最初だけ。“受け手”ってのは勝手なモノさ。そして、非常に飽きっぽい。次から次へと斬新な作品を発表し続けないと、すぐに飽きてしまう。そうして、僕の作品は忘れられていく。いずれ誰も僕の名前を知らないようになるだろう」

「そんなコトないわ!だって、街の人だって、あなたの作品を褒めていたもの!」と、サルサラは即座に反論します。

「それだって、有名になったからじゃないのか?1度有名になってしまえば、どんな作品を作るかなんて関係なくなる。名前だけで作品は売れ、褒めてくれる。作品自体を真に認めてくれる人がどれくらい残ってるだろうね?」

「そんな…」

「けど、そんな時間もいずれ終わりが来る。真の意味で斬新な作品が生み出せなくなれば、いずれ人々は気づく時が来る。『ああ。コイツ、枯れちまったな…』って」

「枯れる?」

「中身がなくてスカスカになるって意味さ。ほとんどの作家や芸術家はそうなる。最初は魂や情熱を込めて創作に没頭できてたのに、売れた途端に油断してしまい劣化していく。僕の場合、油断したわけじゃないけどね」

「それでも、新作が生み出せなくなってしまった?」

「そうだね。正確に言えば、新作はいくらでも作れる。ただ、それらはこれまで作ってきたモノの劣化コピーに過ぎない。よくて同等程度。決して、過去を超えることはできやしない。そんなコトしかできない者に意味があると思うかい?」

「それでも…それでも、作品が生み出し続けられる限り芸術家だと言えるんじゃないですか?」と、ソルタリオが熱を込めて言い放ちました。

「どうだろうね?君はどう思う?芸術家や作家の本分(ほんぶん)はなんだと考えるね?」

「ホンブン…ですか?」

「“その者がしなければならない使命”のようなモノかな?」

「そうですね…作品を見てくれる人を驚かせるコトとか?驚かせたり、感動させたり」

「いいとこを突いてるね。それを突き詰めていくとね。もっと極端になっていく」

「極端?」

「そう!“世界の革命”さ!その人の持っている価値観を根底からくつがえし、これまで生きてきた人生そのものを真っ向から否定したくなる。そうして、全く新しい人生を歩みたくなる。そんな風に人の人生を変えるコトこと作家や芸術家に与えられた使命なんだ!」

「それができなくなっちゃった?」と、今度はサルサラの方がたずねます。


 再びしばらくの沈黙が流れます。

 そうして、キ~コ~キ~コ~とブランコをこぎながら、アルマ・フォリアは自分に言い聞かせるようにつぶやきました。

「そうだ。僕は、もうできない。世界に革命を起こすような作品が作れない。少なくとも、今のままの環境では。この生活を続けていては…」

 そこでサルサラは驚くような提案をしました。

「だったら、旅をすればいい。見知らぬ土地を歩き、初めての人に会い、新しい経験をする。そうしたら、あなたの世界は変わるはず。そこから世界を変える作品も生み出せるようになるはず。一緒に行きましょう!アタシたちと一緒に!」


 さて、この続きは、また明日の夜に語るといたしましょう。

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