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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~テーラやサルサラの物語~
325/1003

~第324夜~「退屈な星のサルサラ(その12)」

 アルマ・フォリア老人の解説つきで作品を鑑賞するサルサラとソルタリオ。

 ところが、そこへ別の人物がやって来ます。


 ガチャッ…という音と共に扉を開け部屋に入ってきたのは、髪の毛を天井に向けて逆立(さかだ)て7色に塗り分け派手な服装をした若い男。

「なんだ、ジイさん。また、勝手にこの部屋に入ってたのか」

 ケバケバしい髪型をした男に対し、腰を低くして答える老人。

「あ、すみません。すぐ出て行きますんで…」

「へ?」と、驚くサルサラとソルタリオのふたり。

「どうして謝るんですか?おじいさんが、このお屋敷の主人なんでしょ?」と思わず問いかけるサルサラ。

「は?何言ってんだ?この家の主人は、オレ様!アルマ・フォリアに決まってるだろう!」

「ええ~!?あなたが天才芸術家と呼ばれてるアルマ・フォリアなの!?じゃあ、このおじいさんは一体…?」

「コイツ?コイツはただの使用人だけど」

「ええ~!?」と再度驚くサルサラとソルタリオ。

「なんだよ?文句あるなら聞くぜ?」と、本物のアルマ・フォリア。

「いや、別に文句はないけど…さっきの話は一体なんだったのよ。感動して損しちゃった。ねえ?ソルタリオ」とサルサラ。

「いいえ。むしろ、僕は感謝したいくらいです。おじいさんの芸術センスのおかげで、素晴らしい体験ができましたから」

「そ、そう…」と、サルサラはあきれ返ります。

「じゃ、私は失礼して…」と、使用人のおじいさんは部屋から出て行きました。

「まったく。アイツは、いつもああなんだ。勝手に人の部屋に入って、天才芸術家のふりをする。おかげで、あんたらみたいな客の相手はしてもらえるがな」

 アルマ・フォリアの言葉に深くうなずくサルサラ。

「へ~、そうなんですね」

「ところで、あんたらは何しにこの家にやって来たんだ?」

「あ、それなんですけどね…」と、サルサラとソルタリオは、もう1度最初から説明し直します。


「なるほど。オレ様の芸術に感動して直接会いに来たってわけだな。感心!感心!」

「いえ、感動したっていうか…混乱したというか。けど、さっきのおじいさんの話によれば、それさえも感動の一部らしいですけど」

「だが、オレ様は自分の作品は語らんぞ!自作に解説を入れるなど、三流のやるコトだ!一流は作品で語る!それ以上の言葉はいらん!以上!」

「さっすがは本物!言うことが違うなぁ」と、感心ひとしきりのソルタリオ。


 ところが、そこにさらなる人物がやって来ます。それもひとりではなく大勢!

 ガチャリと扉を開け、ドヤドヤと部屋の中に入ってきたのは、先ほど大音響を効かせたディスコルームのような大広間でおのおの自由に作品制作をしていた若者たち。

 部屋に入るなり、サルサラとソルタリオのふたりを見つけると、「なんだなんだ」「新しいお客さんじゃないか」「どうしたんだ?」と口々に声をかけてきます。

「あ、どうも…」「アルマ・フォリアさんのお弟子さんたちですよね?」と、あいさつするサルサラとソルタリオ。

 すると、意外な答えが返ってきます。

「え?」「何を言ってるんだ?」「僕こそが本物のアルマ・フォリアだよ」「いいや、私が!」「ワシこそ本物!」「我輩が世界で唯一絶対の天才芸術家アルマ・フォリアであ~る」と、口々に語る若者たち。

「ど、ど、ど、どうなってんの!?」

 サルサラとソルタリオは頭が混乱してしまいます。

「アッハッハ!実は、僕ら全員本物!」「アルマ・フォリアというのは、ひとりの人間の名前ではなく、芸術家集団の名称なのだ!」「そして、これこそが作品の1つ!」「この家を訪れた者を驚かせるための仕掛けなんです」「ど~う?驚いた~?」


 サルサラとソルタリオは、開いた口がふさがりません。

 そのままふたりは頭を混乱させたまま、ほうほうの体で屋敷から逃げ出していきました。


         *


「芸術って難しいわね…」

「ほんと。奥が深いよ。深すぎて、僕には理解できそうもない」

 アルマ・フォリアの屋敷からの帰り道、トボトボと歩きながら、語るサルサラとソルタリオ。

 すると、公園で薄汚い身なりをした男が、キ~コ~キ~コ~とブランコをこいでいるのが目に入りました。

 男は、ふたりに向かって低い声で声をかけてきます。

「やあ、アルマ・フォリアの屋敷からの帰りかい?」

 怪しげな男に返事をするかどうか迷うふたり。

「何アレ?」

「浮浪者じゃない?無視して帰りましょうよ」

 けれども、声をかけてきたのに返事をしないのも失礼かと思い、ソルタリオが男の座っているブランコに近づいていきます。

「ええ、そうなんですよ。おかげで大変な目にあっちゃって…」と、先ほどまで体験していたコトを説明するソルタリオ。

「アハハ。それはそれは。けど、随分と楽しんでもらえたみたいで、僕もうれしいよ」

「え?」と、またもや驚くふたり。

「実は、正真正銘(しょうしんしょうめい)僕こそが本物のアルマ・フォリアなんだ」


 さて、今夜もそろそろお時間となったようです。

 それでは、この続きは、また明日の夜に語るといたしましょう。

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