~第324夜~「退屈な星のサルサラ(その12)」
アルマ・フォリア老人の解説つきで作品を鑑賞するサルサラとソルタリオ。
ところが、そこへ別の人物がやって来ます。
ガチャッ…という音と共に扉を開け部屋に入ってきたのは、髪の毛を天井に向けて逆立て7色に塗り分け派手な服装をした若い男。
「なんだ、ジイさん。また、勝手にこの部屋に入ってたのか」
ケバケバしい髪型をした男に対し、腰を低くして答える老人。
「あ、すみません。すぐ出て行きますんで…」
「へ?」と、驚くサルサラとソルタリオのふたり。
「どうして謝るんですか?おじいさんが、このお屋敷の主人なんでしょ?」と思わず問いかけるサルサラ。
「は?何言ってんだ?この家の主人は、オレ様!アルマ・フォリアに決まってるだろう!」
「ええ~!?あなたが天才芸術家と呼ばれてるアルマ・フォリアなの!?じゃあ、このおじいさんは一体…?」
「コイツ?コイツはただの使用人だけど」
「ええ~!?」と再度驚くサルサラとソルタリオ。
「なんだよ?文句あるなら聞くぜ?」と、本物のアルマ・フォリア。
「いや、別に文句はないけど…さっきの話は一体なんだったのよ。感動して損しちゃった。ねえ?ソルタリオ」とサルサラ。
「いいえ。むしろ、僕は感謝したいくらいです。おじいさんの芸術センスのおかげで、素晴らしい体験ができましたから」
「そ、そう…」と、サルサラはあきれ返ります。
「じゃ、私は失礼して…」と、使用人のおじいさんは部屋から出て行きました。
「まったく。アイツは、いつもああなんだ。勝手に人の部屋に入って、天才芸術家のふりをする。おかげで、あんたらみたいな客の相手はしてもらえるがな」
アルマ・フォリアの言葉に深くうなずくサルサラ。
「へ~、そうなんですね」
「ところで、あんたらは何しにこの家にやって来たんだ?」
「あ、それなんですけどね…」と、サルサラとソルタリオは、もう1度最初から説明し直します。
「なるほど。オレ様の芸術に感動して直接会いに来たってわけだな。感心!感心!」
「いえ、感動したっていうか…混乱したというか。けど、さっきのおじいさんの話によれば、それさえも感動の一部らしいですけど」
「だが、オレ様は自分の作品は語らんぞ!自作に解説を入れるなど、三流のやるコトだ!一流は作品で語る!それ以上の言葉はいらん!以上!」
「さっすがは本物!言うことが違うなぁ」と、感心ひとしきりのソルタリオ。
ところが、そこにさらなる人物がやって来ます。それもひとりではなく大勢!
ガチャリと扉を開け、ドヤドヤと部屋の中に入ってきたのは、先ほど大音響を効かせたディスコルームのような大広間でおのおの自由に作品制作をしていた若者たち。
部屋に入るなり、サルサラとソルタリオのふたりを見つけると、「なんだなんだ」「新しいお客さんじゃないか」「どうしたんだ?」と口々に声をかけてきます。
「あ、どうも…」「アルマ・フォリアさんのお弟子さんたちですよね?」と、あいさつするサルサラとソルタリオ。
すると、意外な答えが返ってきます。
「え?」「何を言ってるんだ?」「僕こそが本物のアルマ・フォリアだよ」「いいや、私が!」「ワシこそ本物!」「我輩が世界で唯一絶対の天才芸術家アルマ・フォリアであ~る」と、口々に語る若者たち。
「ど、ど、ど、どうなってんの!?」
サルサラとソルタリオは頭が混乱してしまいます。
「アッハッハ!実は、僕ら全員本物!」「アルマ・フォリアというのは、ひとりの人間の名前ではなく、芸術家集団の名称なのだ!」「そして、これこそが作品の1つ!」「この家を訪れた者を驚かせるための仕掛けなんです」「ど~う?驚いた~?」
サルサラとソルタリオは、開いた口がふさがりません。
そのままふたりは頭を混乱させたまま、ほうほうの体で屋敷から逃げ出していきました。
*
「芸術って難しいわね…」
「ほんと。奥が深いよ。深すぎて、僕には理解できそうもない」
アルマ・フォリアの屋敷からの帰り道、トボトボと歩きながら、語るサルサラとソルタリオ。
すると、公園で薄汚い身なりをした男が、キ~コ~キ~コ~とブランコをこいでいるのが目に入りました。
男は、ふたりに向かって低い声で声をかけてきます。
「やあ、アルマ・フォリアの屋敷からの帰りかい?」
怪しげな男に返事をするかどうか迷うふたり。
「何アレ?」
「浮浪者じゃない?無視して帰りましょうよ」
けれども、声をかけてきたのに返事をしないのも失礼かと思い、ソルタリオが男の座っているブランコに近づいていきます。
「ええ、そうなんですよ。おかげで大変な目にあっちゃって…」と、先ほどまで体験していたコトを説明するソルタリオ。
「アハハ。それはそれは。けど、随分と楽しんでもらえたみたいで、僕もうれしいよ」
「え?」と、またもや驚くふたり。
「実は、正真正銘僕こそが本物のアルマ・フォリアなんだ」
さて、今夜もそろそろお時間となったようです。
それでは、この続きは、また明日の夜に語るといたしましょう。




